石野純也のモバイル通信SE
第95回
スマホの進化を牽引する「Galaxy S26」 グーグル連携の"強さ”と“課題”
2026年3月25日 08:20
3月12日に発売された「Galaxy S26」シリーズは、「先回りするAI」を前面に打ち出している。サムスン電子は、24年に「Galaxy S24」に導入する新機能として「Galaxy AI」を発表。以降のフラッグシップモデルでは、どちらかと言えばAIの処理能力を上げることに注力してきた。飛び道具的なハードウェアではなく、AIの“器”としてのスマホとして必要な機能を強化してきたと言えるだろう。
Galaxy S26シリーズの発売に合わせて来日したサムスン電子の崔元俊(チェ・ウォンジュン 社長兼MX事業本部COO)氏は、同モデルを「第3世代のAIフォンで、歴代でもっともパワフル」だと語る。このモデルで目指しているのは、「AIを通じて日常が便利になるだけでなく、誰もがAIの恩恵を受けられること」だという。
“リーチ”“オープンネス”“コンフィデンス”で進化
サムスン電子がパートナーと行なった調査によると、日本では71%のスマホユーザーがAIに実用的な価値があると回答している一方で、97%が十分に活用できていないと感じているという。「期待は高まっているものの、実際に使いやすいと感じる体験になるまでには課題がある」というわけだ。
サムスンは、「このギャップを埋めることを重要視している」という。
グローバルでも、同社は「AIを一部の人の特権ではなく、だれもが毎日使う基本インフラとするため、“リーチ”“オープンネス”“コンフィデンス”という3つの考え方を元に(Galaxy AIを)アップデートしている」という。
1つ目の“リーチ”は、大衆化のこと。Galaxy AIは25年末で4億台の端末に拡大しているというが、「26年はこれを2倍にすることを目標にしている」。
2つ目の“オープンネス”は、他社との協業だ。サムスン電子では、「Galaxy S24のときからグーグルとの関係を強化している」といい、AI関連の機能を強化してきた。かこって検索やGeminiのアプリ連携機能は、そうした成果の1つ。いずれも、サムスンのGalaxy SシリーズとグーグルのPixelシリーズが真っ先に対応したあと、他のメーカーにも開放されている経緯がある。
Galaxy S26シリーズでは、新たに「Now Nudge」と呼ばれる先読み機能に対応。Geminiがバックグラウンドでアプリを自動的に操作する機能も英語と韓国語で利用できるようになった。これらが可能になったのは、「グーグルとOSレベルでAIの要素技術に関する協力を行なった」からだという。
核となるのが、ユーザーの情報を蓄積していく「パーソナルデータエンジン」だ。崔氏は、その役割を次のように語る。
「パーソナライズするには、その人のコンテキスト(文脈や背景)を理解する必要があります。(中略)各アプリに散在し、破片化していたデータをパーソナルデータエンジンというエンジンでつなげて、よりよいコンテキストを作る。それを1つのエンジンとして、OSレイヤーで実現しています」
グーグルが支持するGalaxyの進化
Galaxy S26シリーズでは、グーグルとともに「AI OSの基盤を作ることにフォーカスした」という。「これをスタート地点にして、AI OSの基盤を元に、より多くのアプリやサービスへ拡大していく」計画だ。Now NudgeやGeminiの自動化のような機能は、「プラットフォームの側面でこれからも拡大していく」という。
現在、Geminiのアプリ自動化は英語と韓国語のみの対応だが、「日本の優先度は高いので、目標としては今年中に対応できるようにする」予定だという。
グーグル側も、サムスン電子との協業にプライオリティを置いていることがうかがえる。Galaxy S26シリーズが披露されたイベントに登壇したグーグルのAndroidエコシステム担当プレジデント、サミール・サマット氏は、「サムスンとのパートナーシップにより、私たちはモバイルインテリジェンスの新時代を切り開いていく」と語った。
サマット氏はGeminiの自動化機能を早期プレビュー版と位置づけ、Galaxy S26シリーズから搭載した理由を「(ユーザーの)皆様と開発者コミュニティからフィードバックを得るため」だとしている。サマット氏によると、自動化は次期OS(Android 17)の「驚くべき機能」の1つだという。Galaxy S26シリーズには、それが先行公開された形になる。
エージェントとしてのスマホとそれを支える信頼
グーグルとの連携強化に舵を切ったサムスンだが、これを受け、自社開発のAIであるBixbyも方向を転換した。
Galaxy S26シリーズでのBixbyは、「既存のものから大きく構造を変え、ユーザーが自然に話しても理解できるよう、業界でもっとも競争力のあるLLM(大規模言語モデル)を採用した」。この方針変更によって、BixbyはGalaxyの設定変更などを自然言語で行なうためのAIになった。
スマホやタブレットしか投入されていない日本では恩恵がないが、「モバイルのみならず、テレビや(白物)家電など全体のエコシステムのエージェントとしてのポジション」に位置づけを改めているという。
崔氏が3つ目に挙げた“コンフィデンス”は、こうしたAIを動作させるうえで欠かせない信頼性のこと。プライバシーやセキュリティとも言いかえることができる。例えば、「ユーザーを理解するためのデータと、データに基づいてコンテキストを理解する作業はオンデバイスで行なう」。
AI特化の戦略が当たった結果、Galaxy S26シリーズは「予約期間ですでに前作を超え、Ultraが7割を占めて好調な販売をけん引している」という。韓国では、前モデルを超え、歴代最多の予約台数を記録した格好だ。Galaxy S26シリーズからは、日本も一時販売国(最初に発売される国)になり、4キャリア同時発売を実現するなど、シェア拡大を目指す。
一方で、AIによる体験の強化は他社との差別化をどう図っていくかが課題になりそうだ。実際、かこって検索もGeminiのアプリ連携機能も、GalaxyやPixelに実装されたあと、他メーカーのAndroidスマホにも採用されている。リードタイムがあるぶん有利な反面、すぐにキャッチアップされてしまう側面があるのも事実だ。
プライバシーディスプレイを採用したGalaxy S26 Ultraの販売比率が高いことも、ハードウェアによる差別化の重要性を裏づけていると言えるだろう。










