石野純也のモバイル通信SE

第38回

auマネ活プラン、“複雑”でも好調の理由 金融強化する通信各社の現在

9月に導入したauマネ活プランが好調だというKDDI。データ容量無制限のプランに加入するユーザーの3人に1人が、同プランを選択するという

KDDIの新料金プランとしてスタートした「auマネ活プラン」が、順調にユーザー数を増やしている。同社によると、データ容量無制限の料金プランを契約するユーザーの3人に1人がこのプランを選択するという状況だ。11月2日に開催されたKDDIの決算説明会では、代表取締役社長の高橋誠氏も、「好調な滑り出し」と自信をのぞかせた。

auマネ活プラン、“複雑”の懸念を吹き飛ばす金融効果

auマネ活プランは、通信サービスと金融サービスを掛け合わせた料金プラン。通信側は、データ容量無制限の「使い放題MAX」とほぼ同じ内容だが、「家族割プラス」の割引がない点は差分になる。代わりに、au PAY残高に対して、毎月800円相当の還元を受けられる。条件はau PAYカードの契約とauじぶん銀行の口座保有。au PAYカードで300円、auじぶん銀行へのau ID登録で300円、通信料金をそのどちらかで支払うと200円相当の還元になる。

ここまでは料金プランに内包される還元だが、プラスαとしての金融特典も多数用意されている。

特に大きいのが、au PAYゴールドカードでの還元で、料金支払いに利用すると、1年間、20%のPontaポイントを受け取れる。ほかにも、au PAYの決済で還元に0.5%の上乗せがあったり、au PAYゴールドカードの決済に0.5%の上乗せがあったり、auじぶん銀行の金利が0.05~0.1%優遇されたりと、特典は多い。

豊富な金融特典が用意されているのが、auマネ活プランの特徴だ

そのぶん、複雑になってしまうことは懸念材料だったが、契約時の店頭説明でユーザーにメリットを訴求しているという。結果として、auマネ活プランと連動する形で、KDDI傘下の金融サービスの申し込みが拡大している。

例えば、au PAYカードの店頭加入率は約1.2倍、au PAYゴールドカードに至っては約1.5倍に増加。さらに、auじぶん銀行の口座加入は約4.8倍に増えたという。auショップ、au Styleなどでの獲得が進んだという点で、KDDI傘下の金融各社から見たときのメリットは大きい。

金融サービス側のメリットが大きく、au PAYカードやauじぶん銀行は軒並み、新規獲得数が増加している

高橋氏も、「金融に対する影響は非常に大きい」と認める。これに対し、通信側は「使い放題MAXの比率が上がり、解約率が下がるのはいい傾向」(同)だという。現状では、使い放題MAXと金融サービスをバンドルした料金プラン一択のため、auマネ活プランを契約する人は比較的ARPU(1ユーザーあたりからの平均収入)が高い。また、金融サービスで恩恵を受けられれば、解約の抑止にもつながる。金融、通信の両サービスにメリットがあるというわけだ。

金融サービスとの好循環が生まれてきているというKDDIの高橋社長
通信料収入の拡大と解約率の抑止が、au側のメリットになる

KDDIは、マネ活プランをau以外のブランドに展開することも示唆しており、今後、UQ mobileやpovo2.0といった低価格帯のブランドでもサービスが開始される可能性がある。KDDIは上期でマルチブランド通信APRUが反転したものの、大幅に伸ばしていくのは難しい。こうした中、各社とも収益源として非通信領域との連携を強化している。auマネ活プランは、その先鞭をつけた格好だ。

「ペイトク」で追走のソフトバンク “逆方向”連携の楽天

一方で、他社もauマネ活プランに追随する動きを見せている。

ソフトバンクが10月にスタートした「ペイトク」は、その1つと見ていいだろう。ペイトクは、「ペイトク無制限」「ペイトク50」「ペイトク30」の3プランからなる料金プランで、契約に応じてPayPayの還元率が向上する。ペイトク無制限の場合、月4,000円まで、5%の還元を受けられる。現在はキャンペーン中で、上限そのままで還元率が3倍に上がっている。

ソフトバンクは10月に、PayPay連携が魅力のペイトクを開始した

ペイトクの場合、連動しているのはPayPayのみ。同社もKDDIと同様、傘下にPayPay銀行やPayPay証券といった金融会社を抱えているが、auマネ活プランのような連携は図っていない。そのぶん、料金プランの中身はシンプルで、ユーザーがいくら還元を受けられるのかも分かりやすい。

ソフトバンクとPayPayはクーポンやPayPayカードで連携したが、「取り組んでいる内容がうまく伝わっていない」(専務執行役員 寺尾洋幸氏)という課題があった。ペイトクには、これを解消する狙いがある。

料金プランは3つで、データ容量とPayPay還元率が連動する。PayPayとの連携だけなので、比較的仕組みはシンプルだ

金融連携を強めるKDDIやソフトバンクだが、ドコモはこの分野に踏み込みきれていない。dカード、dカードゴールドの契約者数が多いのはドコモの強みになっている一方で、銀行や証券といったサービスが手薄だ。ドコモは、10月4日にマネックス証券との資本業務提携を発表し、傘下に収めるものの、通信料金にサービスを組み込んだ深い連携ができるかは未知数だ。

逆に、楽天グループには楽天銀行、楽天証券、楽天カード、楽天ペイメントなど、各種金融サービスがそろっている一方で、モバイル事業の楽天モバイルが、サービスを開始してまだ間もない。モバイルサービスの規模感を生かし、金融サービスの普及を図るようなフェーズではない。

ユーザー数で言えば、楽天銀行や楽天カードの方が多く、むしろそこからモバイルへの誘導を図っている段階だ。楽天銀行、楽天証券、楽天生命保険から本人確認不要で楽天モバイルを申し込める仕組みは、その一環と言える。

また、楽天ポイントを軸に、楽天市場との連携も強化している。12月1日にはSPU(スーパーポイントアッププログラム)を改定。上限額は大幅に減らしたものの、楽天モバイル契約者の還元率をプラス4倍に増やし、楽天市場の利用者取り込みを狙う。

4社4様の金融連携だが、経済圏全体での競争がさらに活発になりつつあることは事実だ。その中で、通信料と金融サービスの連携は、1つのトレンドになりつつあると言えるだろう。

楽天グループは、12月1日から楽天市場で実施しているSPUの特典を変更。楽天モバイル優遇色を強める
石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya