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日比谷公園前「NTT日比谷タワー」着工 帝国ホテルを含む内幸町再開発
2025年12月8日 19:48
NTT都市開発と東京電力パワーグリッドは、「NTT日比谷タワー」が12月1日に着工したと発表した。日比谷公園に隣接するエリアで進められている帝国ホテル建替を含む「内幸町一丁目街区」再開発の中地区で、地上48階・地下6階、高さ約230m複合施設の建設が、2031年10月末竣工予定で進められる。
内幸町一丁目街区は北・中・南の3地区からなり、NTT日比谷タワーのほか、北地区で帝国ホテル新本館およびノースタワー、南地区でサウスタワーが計画されている。北地区の帝国ホテルは建替期間中も事業規模を最大限確保しながら営業を継続する。サウスタワーは25年4月に着工した。街区全体の完成は2037年度以降。
NTT日比谷タワーは上層階から順に、ホテル、オフィス、産業支援施設、ホール、宴会場、商業施設、アクセスコアで構成される。延床面積は約36万m2で、複合施設としては国内最大級になるという。
地下1階のアクセスコアでは、都営三田線 内幸町駅と地下直結となるほか、日比谷駅、有楽町駅とも地下直結、新橋駅、霞ヶ関駅と地下通路でつながる。
また、日比谷通りを挟んで隣接する日比谷公園と接続する道路上空公園を整備。日比谷公園からNTT日比谷タワーを経て銀座方面へつながる東西軸を新たに創出する。
なお、日比谷公園でも再生整備事業が進められており、2033年完了に向けてエリアごとに段階的に整備を行なう。
IOWNを実装した次世代型複合施設
NTTは、光通信技術を中心にした次世代ネットワークを構築し、コンピューティング全体の性能も光技術で引き上げていく構想「IOWN(アイオン)」を主導している。直近では大阪・関西万博での活用事例があり、NTTグループが夢洲会場の光ファイバーネットワークとして提供した「IOWN APN」装置が、高速大容量、低遅延、低消費電力の通信環境の実現に貢献したという。
NTT日比谷タワーではIOWNの実装によって、多様な用途とパブリックスペースが相互に連携し、新しいビジネス、イノベーション、コミュニケーションなどを生み出しながら未来の価値を発信する、“Evolutionary Platform - 進化し続ける価値創造のプラットフォーム”の実現を目指す。
オフィスでは、IOWNの特徴を活かしたオフィス空間・サービスを提供する計画。IOWNによる空間伝送、NTT版LLM「tsuzumi2」、大規模AI連携技術「AIコンステレーション」などを組み合わせ、オフィスワーカーのパフォーマンスを最大化する環境を整える。将来的には、遠隔地の相手と隣にいるかのようなコミュニケーションを可能とする環境を目指す。
賃貸オフィスのフロアは11~42階、総貸床面積約15万m2、基準階面積約1,600坪(最大7区画に分割可)。日比谷公園や皇居外苑、銀座・汐留方面を一望できる環境も特徴としている。
7~10階の共創・オープンイノベーション拠点となる産業支援施設は、“Evolutionary Platform”の中核として機能する。IOWNなどの最先端技術で、世界中のさまざまな企業や人とイノベーションを生み出す場、新しいビジネスやサービスを実証して社会に発信し続ける場となることを目指す。
9階の文化発信拠点となるホールは、クラシック・ポップスなどのコンサートや、発表会・講演会などに利用できる。席数は約400席。座席からは日比谷公園が一望できることも特徴。同地にあった「NTT日比谷ビル」の泰山タイルを再利用し、この場所の歴史を感じさせるデザインとする。
また、全国各地のアリーナやスタジアムをIOWNでつなぎ、リアルタイムで臨場感のあるスポーツ観戦・ライブビューイングなどのエンターテイメント体験を提供する。
低層部には、屋内外に多様なパブリックスペースを整備。屋内貫通通路である「(仮称)Cross Gate」は、道路上空公園直結の大規模なパサージュ・アトリウム空間(幅18m×長さ70m×高さ14.5m)で、壁面・天井一体型の大型LEDビジョン(約1,700インチ相当)とIOWNにより、新たな空間体験を提供するとしている。
将来的には、NTTのリアルとバーチャルが融合した音響体験を提供する「音響XR技術」など、音や振動など五感を刺激する空間伝送により没入感を生み出す技術を活用し、世界各地の会場と連携した映像ギャラリーやアート展示、体験型のゲームやアトラクションなどの体験を提供する。
南地区と連携して整備する基壇部上広場は、明治時代から続く歴史的な高さ約31m(百尺)に位置し、日比谷公園や皇居外苑を一望できる大規模緑地空間とする。隣接する産業支援施設と連携を図り、最先端の技術やサービスの実験・実装の場としても活用予定。
所在地は東京都千代田区内幸町一丁目1番10他。敷地面積は約2.2ha。
日比谷から世界へ展開する「光の街」powered by IOWN
NTT、NTTアーバンソリューションズ、NTT都市開発は、IOWNが実装され、テクノロジーの進化とともに街も進化し続ける“「光の街」づくり powered by IOWN”に着手。NTT日比谷タワーはこの取り組みの第1弾となる。
NTT 代表取締役社長 社長執行役員 CEO 島田明氏は、日比谷は1961年に当時の日本電信電話公社(現NTT)が本社を構えた縁のある場所であると説明。この地に建設するNTT日比谷タワーに本社を移転することを発表した。
これまで培ってきたNTTグループの技術力とノウハウを結集し、新しい価値の提供に加え、「圧倒的な“超・低消費電力化”」の実現を目指す。
日比谷で提供する価値として、前述の空間・時間を問わないビジネス展開を可能とする新しいビジネスイノベーション、音響XR技術などを活用した新たなライフスタイル・エンターテイメントに加え、超・低消費電力化によるサステナビリティも柱となる。
超・低消費電力化に向けては光電融合デバイスを活用。また、IOWNを基盤としたAIなどの活用による未来予測で建物設備を最適制御し、省エネと快適性を両立する「Just Enough Energy」により運用効率を最大化し、CO2排出量削減を図る。加えて、クリーンエナジーなどの活用により、カーボンニュートラル実現につなげる。
将来的には、光量子コンピュータなどの新たな技術による運用効率化や、水素などの次世代のクリーンエナジーの活用にも取り組む。
“「光の街」づくり powered by IOWN”に向けては、NTT日比谷タワーを実証・実装フィールドとして活用し、得た知見を、周辺エリアや全国・世界各地へ展開する。



































