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「住人AI」で社会のデジタルツイン化を加速 デロイト「AI haconiwa」

AI haconiwaの概念図

デロイト トーマツ コンサルティングは、人の個性や深層心理を再現したAIを活用し、企業や自治体がさまざまな施策の効果をシミュレーションできるサービス「AI haconiwa」を発表した。すでにベータ版の提供は開始しており、正式リリースは12月1日を予定している。

AI haconiwaでは、実在の人物にインタビューを行ない、検証テーマに適合する専門家の知見を組み合わせることで、現実の人間に極めて近い性格や価値観、行動特性を持つ「住人AI」を構築する。

住人AI作成の流れ

この住人AIを仮想空間に配置することで、マーケティングや営業施策の効果予測、人事制度に対する反応、自治体政策の実効性検証など、さまざまな領域で現実世界に近い反応をシミュレーションできる。これにより、従来のパネル調査などでは得られない深いインサイトの獲得が可能となるという。

代表的なユースケース
AI haconiwaの強み

同社は、本サービスにより「社会のデジタルツイン」の構築を目指している。将来的には住民AI同士の会話機能や、インタビューAI機能の統合、インタビューから住人AI作成までを自動化するマネジメントAIの実装なども視野に入れている。

サービスの流れ
今後の展望

AI活用の現状と課題 導入・定着のギャップと人材育成の重要性

生成AIの導入率

AI haconiwaの開発背景には、企業における生成AIの導入がPoC(概念実証)の段階で止まりがちで、業務変革や価値創出につながっていないという課題がある。デロイトがプライム上場企業の部長クラス以上を対象に実施した、生成AIに関する意識調査によれば、約96%の企業がすでに生成AIを導入しているものの、「ほとんどの社員が利用している」と答えた企業は2割弱にとどまり、導入と定着の間に大きなギャップがあることが浮き彫りとなった。

生成AIの定着度

また、生成AIの導入目的としては「業務の効率化・自動化」が最も多く挙げられたが、社員のAI活用度が高い企業ほど「事業構造の変革」を重視する傾向が強いことも明らかとなった。これは、生成AIを単なる作業効率化ツールとしてではなく、企業戦略に組み込む動きが広がりつつあることを示している。

一方で、生成AIの本格運用にあたっての障壁も多い。最も大きな課題は「専門人材の不足」であり、あわせてデータ整備やAI基盤、ガバナンス体制などの未整備も大きな制約で、企業全体を巻き込んだ体制構築が求められている。

生成AIの導入目的
生成AIの本格運用に対する課題

生成AIの活用は、人材配置にも影響を及ぼしている。AIによる業務代替が進むことで、業務の偏寄せや玉突き型の人事異動が起き、慣れない業務に対応できずに「不活性化」する人材が生まれ、組織全体のパフォーマンスが低下するリスクが指摘された。

デロイトはAI時代に対応するため、人材のリスキル(再教育)を組織的な能力として整備することが不可欠だと訴える。再教育の内容として、AIに代替されにくいコミュニケーションスキルだけでなく、AIを使いこなすための業務知識や構造的理解といったスキルセットも育成していく必要があると語った。

玉突き型異動に関する留意点
リスキルで育成すべき要素