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グーグル、来歴記録の「C2PA」に参加 透明性担保の動きが加速

C2PAを使った来歴記録の例。誰が提供し、どんなツールが使われたのかが記録されている

画像データなど、デジタルコンテンツの来歴記録技術に関する国際標準化団体である「C2PA」は、2月8日(米国時間)、Googleが同団体のステアリングコミッティ(運営委員会)メンバーになったと発表した。

C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)は2021年に設立された業界団体。デジタルデータに暗号化されたメタデータを付記し、そこに、いつ・どこで・誰がデータを作ったのか、どんなツールで編集したのかなどを記録して「来歴」とする技術を開発している。

別々に技術を検討してきたAdobe・マイクロソフト・Arm・インテル・Truepicなどに加え、BBCなどの報道機関も加わり、オープンスタンダードな技術標準を作る団体として、ここまで進んできた経緯がある。

C2PAは技術の標準化団体であり、似た役割の団体として「CAI(Content Authenticity Initiative=コンテンツ認証イニシアチブ)」や「Project Origin」がある。前者は広くメーカー・メディア・サービス事業者などが加入し、来歴記録技術の利用と導入を促進する団体であり、後者は主に放送を軸としたメディア業での利用促進を行なう団体となっている。

2024年2月現在、C2PAには約100社が参加し、技術仕様の検討を行なっている。国内企業では、2022年3月にソニーがステアリングコミッティーに参加したほか、キヤノンやニコン、NHK放送技術研究所、サイバートラストがメンバーとして参加している。

C2PAのホームページより。2月7日現在、巣テアリングコミッティはアドビ・BBC・インテル・マイクロソフト・インテル・ピュブリシス・ソニー。ここにGoogleが加わる

大統領選を控え、各社がフェイク対策に乗り出す

今後Googleは、C2PAの標準化技術を積極的に同社のサービス内に組み込んでいく。

Googleはすでに、生成AIについてDeepMindの「SynthID」という電子透かし技術を採用しており、YouTubeなどでも改変コンテンツや合成コンテンツを示すラベルなどを導入している。C2PAの来歴技術は、さらにそれらを補完するべく、並列で使われていき、情報の透明性担保を進めていくという。ただし、具体的にどのサービスに組み込むか、スマホでの写真撮影に来歴記録を組み込むかなど、詳細は明らかになっていない。

なお、2024年には、50以上の国々で選挙が予定されている。アメリカ大統領選挙もその1つだが、フェイク画像などの流通は、選挙の行方に大きな影響をもたらす可能性が懸念されている。

先日、OpenAIがC2PAの技術を使い、画像生成AIである「DALL-E3」にAI生成を示すメタデータを付与すると発表した。

また、FacebookやInstagram、Threadsに「AI生成」ラベルが導入されるが、同様の流れと言える。Metaの各種サービスもC2PAを採用している。

マイクロソフトは2023年10月より、DALL-Eによる生成画像にCP2A準拠の情報を記載済みだ。

アドビで来歴認証技術関連のシニアディレクターを務めるアンディ・パーソンズ氏は取材に応え、次のように述べた。

「Googleの参加は非常に重要なことであり、来歴・透明性担保拡大に大きな役割を果たすだろう。OpenAIはC2PAのメンバーにはなっていないが、おそらくはオープンソースの技術を使い、彼らが独自に実装を行なったものと考えられる。これもまた、利用と認知拡大には非常に有用な流れだ」

アドビのアンディ・パーソンズ氏

前述の通り、Googleによって、C2PAの技術が具体的に同社サービスにどう組み込まれるのか、詳細は明らかになっていない。しかし、OpenAIやマイクロソフト、Metaなどの動きも含め、一般化していくことは間違いない。その結果として、「コンテンツが信じられるものかどうか」を判断するものとして、来歴を確認する行為の定着が期待される。