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EU、フェイク拡散でX(Twitter)を調査 新法DSA違反疑い

欧州委員会は、X(旧Twitter)がデジタルサービス法(DSA:Digital Services Act)に違反している可能性があるとして、正式な調査を開始した。

Xからの報告書を分析するなどの予備調査はすでに行なわれており、これを踏まえた上で、欧州委員会はDSAに基づき正式な調査・訴訟手続を開始した。ハマスによるイスラエルへのテロ攻撃について違法コンテンツや偽情報がXで流布されたことが特に問題視されている。

調査では、違法コンテンツの拡散にフォーカスを当てる方針。DSAが義務付けている、EUにおける違法コンテンツ・フェイクコンテンツの拡散を防止する対策が有効に機能しているかどうかをはじめ、X上での情報操作に対抗する「コミュニティノート」の有効性、選挙関連対策の有効性、透明性を高める措置についての不備の疑い、商品の販売に関連したブルーのチェックマークの“欺瞞的なデザイン”などが焦点になる。

これらの疑いが立証されると、複数のDSA違反、つまり違法なサービス運営という形になる。調査期間の期限は設けられておらず、その内容の複雑さが影響しており、Xがどの程度協力するかによっても変わるとしている。

今回のような大規模なプラットフォームに対する訴訟手続きは、DSAがまとめられて以降では初の事例。DSAが正式に可決されその内容が明らかになった後や、予備調査を経ても、Xの対応は不十分だったと判断されたとみられる。

Xは、「DSA法の遵守に努め、規制プロセスに協力する。表現の自由を保護しながら、プラットフォーム上のすべてのユーザーにとって安全で包括的な環境を構築することに重点を置いており、この目標に向けて努力する」との声明を発表している。

デジタルサービス法、DSAとは

DSAは、オンラインにおける安全性を向上させ、大規模プラットフォーマーの責任を明確にする法令をまとめたもの。いわゆるGAFAMなど“ゲートキーパー”と呼ぶ事業者を対象にしたデジタル市場法(DMA:Digital Market Act)とセットで提案され成立した法となる。

欧州議会はDSAを2022年11月に正式に可決し、大規模事業者など一部には適用を開始している。全面施行は2024年2月。検討中はロシアによるウクライナ侵攻が開始された時期とも重なっていたことから、プラットフォーム上のコンテンツが操作されるリスクや、フェイクコンテンツが拡散するリスクについて、厳しい規制を盛り込んだことも特徴になっている。

DSA違反が決定すると、VLOP(Very Large Online Platform)など超大規模プラットフォームの場合、前会計年度で全世界売上高の最大6%という巨額の制裁金が課される可能性がある。

Xは欧州でのユーザー数を約1億2,000万人と報告、DSAにおいてVLOPに指定されており、最も厳しい規制の対象になっている。