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表面筋のわずかな動作「筋電入力」でメタバースやゲームを操作 NTT

NTTは、四肢など肢体が不自由な重度身体障がい者の、残存しているわずかな筋の動作をメタバースへの操作命令につなげる入力インタフェースを開発した。「筋電入力」としてアバターやゲームの操作が可能になり、NTTのイベントでも展示する。

重度身体障がい者のメタバースへの身体拡張に向けて、身体動作と関係の深い筋電センサー(sEMG)に着目。わずかな筋の動作をメタバースへの操作命令につなげる、sEMGを活用した入力インターフェースが開発された。

これにより、重度身体障がい者は従来の脳信号入力や視線入力に加えて、表面筋電信号入力を自分の意思を伝えるための身体拡張技術として利用できるようになる。

筋がわずかでも動けばsEMGセンサーで計測が可能で、あるALS共生者の例では、数mmの身体部位の動きに対してsEMGセンサーで動きを観測できたという。一方、個人差があるため、利用できる身体部位は身体状況に応じて設定する形になる。

ある部位を意図して動かそうとすると、別の部位の筋も反応している場合があるため、意図した部分を抽出する技術として、脱力状態を基準値にするキャリブレーションや、しきい値設定を身体部位ごとに設定することがポイントとしている。

このほか、筋疲労も考慮すべきポイントとする。これは、重度身体障がい者は、筋力および筋持久力が衰えるため、身体部位の動作を節約しながら、メタバースへの意図した操作命令を実現することが必要になるというもの。筋の長時間の収縮や強弱での操作命令を避ける設定にし、同じ操作を繰り返すと、アバターの動作に一定時間反映する設定にしたところ、体験したあるALS共生者は、自分自身の身体動作でアバターを動作できていると実感したという。こうした動作を節約する考え方は、新たな設計思想になりうるとしている。

すでに実装事例もあり、視線入力とアバター表現システムを組み合わせ、東京から遠隔でオーストリアのイベントに参加しDJパフォーマンスが披露されている。またアバターの代わりにゲーム向けの操作命令に変換、ゲーム内のキャラクターの操作も実現している。わずかな動きでゲームを操作できる表面筋電センサーは、今後さまざまな分野で活用が期待できるとし、eSportsを通じた操作性の向上や人とのつながりは、将来の社会参画にもつながる重要な要素になるとしている。

今回の技術による筋電入力シーンの一例