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日本に広がる「クレカでタッチ乗車」 鍵は“柔軟な割引”

三井住友カードは、交通事業者に向けた決済事業「stera transit」(ステラトランジット)に関する戦略説明会を開催し、関係各社も登壇してそれぞれが今後の展望を語った。

stera transitは、Visaのタッチ決済など、国際カードブランドのタッチ決済を交通機関で利用できるようにする決済プラットフォーム。国内では高速バスを中心に鉄道やフェリーなど20都府県で30のプロジェクトに採用されている。

左からQUADRAC 代表取締役社長の高田昌幸氏、三井住友カード 代表取締役社長兼最高執行役員の大西幸彦氏、ビザ・ワールドワイド・ジャパン Vice President and Global Head of Urban Mobilityのニック・マッキー氏

Visa以外も'23年3月までにタッチ対応 。運賃上限も

現在は3つの開発計画が進められており、ひとつめは、2023年3月までに、Visaだけでなくさまざまな国際ブランドのタッチ決済に対応する予定となっている。

2つめは新機能の開発。後払いの特徴を活かすと、確定した過去・直近の運賃をカードの請求前に割引することが可能。たくさん利用すると一定額以上は請求しない「運賃上限モデル」の導入を進める。

また、クラウドを活用し運賃の状態などをリアルタイムにサービスに反映できるため、交通機関を利用した後に地域で買い物や観光をすると、交通機関とあわせて割引や特典が受けられるなどの「買物・観光との連携」も開発される。これにより、交通機関以外の利用も含めて地域での観光に特典を付与するといったことが可能になる。

3つめは乗降データの分析で、ユーザー属性や乗降データ、地域ので買い物や観光といった購買データを分析し、地域の観光戦略に役立てられるようにする。

日本にも「カードと言えばタッチ決済」の時代

三井住友カード 代表取締役社長兼最高執行役員の大西幸彦氏は、海外でやりとりされるVisaカードの決済の7割はタッチ決済で、日本でもカードの更新などでタッチ決済対応カードに置き換えが進み、2024年にはほぼすべてのVisaカードにタッチ決済が搭載される見込であることなどを紹介。日本でも早晩、「カード決済といえばタッチ決済という時代がくる」と予言した。

またstera transitは、ユーザーが持つさまざまなブランドのカードが利用できることから、基本的にオープンな仕組みであるとし、ユーザーがいちからICカードやアプリを導入、チャージしてもらうといった“開拓”をする必要がなく、これは導入する交通事業者にとっても大きな強みになるとした。

一方、すでに日本では普及している交通系ICカードとは「共存できる」とも指摘。マイクロモビリティなど交通系ICカードがカバーできていない領域での活用や、地域での購買との連携といった、柔軟性に優れ、MaaS全体で決済インフラとして強みを発揮するのがクレジットカードのタッチ決済であるとした。

ビザ・ワールドワイド・ジャパン Vice President and Global Head of Urban Mobilityのニック・マッキー氏は、交通機関にタッチ決済を導入している都市は世界で580に上るとし、その大半は過去3年以内に開始されるなど、まさに今、勢いのあるトレンドであると紹介する。

きっかけになったのはロンドン五輪に合わせて、2012年にロンドンのバスに導入されたこと。クレジットカードのタッチ決済を導入することで、事業者は現金収受やチケット管理コストが下がり、周辺の店の売上が伸びるといったハロー効果もみられたという。こうしたことから、交通機関のタッチ決済はコスト削減や地元の活性化にもつながるとしている。

マッキー氏はまた、大西氏同様にSuicaに対抗するといった構図ではないと指摘し、「消費者に選択肢を与えるもの。最も良いと思うものを使って移動してくれれば」と語っていた。

決済システムを開発するQUADRACは元Felicaの開発者が集まって設立されたベンチャー
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