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「Adobe Fresco」は簡単だけどすごい。プロの使いこなしを紹介

アドビ システムズは、Frescoの開発段階から協力しているプロのイラストレーター4名が登壇し、Frescoを実際に使用した作例や、機能について紹介するイベントを10月3日に実施した。

Frescoは、Photoshopのピクセルブラシ、Illustratorのベクターブラシの両方と、AIのAdobe Senseiを用いた水彩、油彩をリアルに表現するライブブラシが特徴のドロー&ペイントアプリ。

イベントでは、Fresco開発担当の岩本崇氏が、Frescoの特徴を説明した後に、9月25日から29日の約5日間に渡り、App StoreのiPad無料アプリで1位になったと発表。

アドビ システムズ Fresco開発担当 岩本崇氏

また、9月24日から10月2日までの間にTwitterでのFrescoに関するツイート数は全世界で66,411ツイート。その内、約半数の30,580ツイートが日本語によるものということで、日本でとても注目されていると述べた。Windows版のリリースに関してはもう少し先になるという。なお、動作保証はSurfaceのみとなる予定。

イベントに登壇したイラストレーターは、田中ラオウさん、よー清水さん、YOUCHANさん、井筒啓之さんの4名。

画家の田中ラオウさんは、アクリル絵の具を使った制作を中心としているという。Frescoを活用し、普段の手描きの描写に近い、動物をモチーフにした作品や、1時間でサクッと描いたという人物モチーフの作品を紹介した。

田中ラオウさん

また、ラグビーに注目していることから、ラグビー選手をモチーフにした絵をタイムラプスで紹介。描かれている2人の選手のうち、右側の選手をメインとするため、左側の選手には、白いブラシをかけて不透明度を下げたレイヤーを重ねることでぼんやりとした印象に見せているという。

加工前
加工後。左の選手にぼかした印象を持たせて、メインとなる右の選手を強調している

お気に入りのブラシはピクセルブラシの特殊効果の項目にある「インクのしみ」で、このブラシを中心に作例の作品を描いたという。

イラストレーターのよー清水さんは、背景やロボットなどの設定画、ゲームやアニメのコンセプトアートなども手がけている。普段はPhotoshopを利用して作品を描いているという。

よー清水さん

Frescoを利用した作例では、アイデア出しの絵やラフ画を紹介。鉛筆ブラシで描いた上から水彩ライブブラシで軽く塗るだけでも、濃淡によって情報量が増え、Photoshopや他のアプリでは出せない雰囲気になり、アイデアが広げやすいとした。

水彩ライブブラシで着色されたアイデア出しの絵
船のデザインラフ。雰囲気の出る着彩でアイデアが広がるという

油彩ライブブラシの筆の跡がつく様子や、混色の具合が気に入っているとして、それらを下地や素材として用い、Photoshopで仕上げた作品なども紹介。

Frescoで1時間、その後Photoshopで1時間の計2時間ほどで完成させたという

Frescoのピクセルブラシ内にある「Jクリエイター」には、よー清水さんが以前担当したイラストの指南書の付録として提供したブラシをFresco用に調整したものが搭載されている。開発当初から要求している「指先ツール」の実装されていないことが不満点としたが、全体的にシンプルでわかりやすい機能がそろっているため、初めてデジタルで絵を描いてみようと思っている人に使ってほしいと述べた。

イラストレーターのYOUCHANさんは、本の表紙などのデザインも手掛けている。ペンネームの読み方は「ユーチャン」。過去にはINTERNET Watchの「YOUCHANのGIF Animation Gallery from 編集後記」などでも活動していた。

YOUCHANさん

今回紹介した作例は、本の表紙として描いてるものとして縦位置のイラストを複数紹介。Illustratorで作成した表紙のレイアウトをFrescoに取り込み、不透明度を下げて表示して、バランスを考えながらイラストの部分を描写しているという。

鉛筆ブラシで下書き、ペンブラシで線画を描写したあとは、パーツごとに自由選択ツールを使って選択し、ピクセルブラシのJクリエイター内の「アクリル」や「アクション線 散布」を用いて描写しているという。不透明度を調整して描写すると和紙のようなテイストになるアクション線 散布がお気に入りとした。

本、雑誌の表紙イラスト。画像左の絵がアクション線 散布で和紙っぽい効果をかけたもの

普段はIllustratorやPhotoshopのほか、ペインターやProcreateなども活用しているという。複数のアプリをまたいで行なっていた作業の中には、Frescoだけで完結できるものもあり、今後も制作に利用していくという。

井筒啓之さんは、ガッシュ絵の具を使った写実的な描写を特徴としたイラストレーター。今回は、「ガチガチのアナログで絵の具を使ってきた人間がFrescoを使ったらどうなるか」と考えて作例を描写したという。

井筒啓之さん

鉛筆ブラシ1本で描いたデッサン風のイラストや、鉛筆ブラシの描写をベースに、肌の部分だけ薄いグレーをバケツツールで使用したという女性のイラストを紹介。「画面も、手も汚れなくて、普通の鉛筆を使うよりも楽」とした。薄いグレーをかけた方のイラストの髪の毛の描写には消しゴムツールも活用。鉛筆ではできない表現としている。

鉛筆ブラシのみで描かれたデッサン風のイラスト
鉛筆ブラシをメインに、肌の部分にバケツツールで薄いグレーを配置。画像右の赤丸部分は実際の鉛筆では難しい表現

普段の絵の具を使った描写に近づけたカラーの作品も紹介。以前の自身の作品を見ながら、Frescoで1から描いたものと、データ化してあるものを下地として取り込み、手を加えたものの2点を紹介。「絵皿洗わなくて済む点が大きなメリット」と述べた。

どちらも絵の具で描かれた作品をFresco上で再現したもの

「実は普段から絵の具で描写した後にPhotoshopで仕上げをしている」として、人物のレイヤーの上に背景色のレイヤーを乗算で重ね、さらにその上に複製した人物のレイヤーを重ねて不透明度を下げると、メインとなる人物の絵が背景色に馴染むなど、レイヤーを活用した技法も紹介した。