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2026年、日本と世界の宇宙開発はどうなる?

国際宇宙ステーションに滞在中の油井亀美也宇宙飛行士が撮影した日本列島の夜景(クレジット:JAXA/NASA)

宇宙環境情報を提供する非営利団体CelesTrackのまとめによれば、2025年は12月25日までの時点で、307回の衛星打上げ(物体が軌道に到達した打上げ)が世界で実施されました。そのうち190回は米国、86回が中国、15回がロシアです。年末までにまだ打上げは予定されているので、この数字はさらに増える可能性があります。2025年は、2024年のトータル打上げ回数から50回以上増えて、世界では300回を超えることになりました。

米国は2024年の154回から190回へ、中国は65回から86回へそれぞれ増えました。米国の増加はSpaceXの旺盛なスターリンク衛星打上げに支えられていますが、ニュージーランドに射場を持つロケットラボ、ジェフ・ベゾス氏が設立したブルーオリジンなど民間ロケットのミッションも増加。中国は長征シリーズによる政府衛星の打上げに加え、民間ロケットの開発も盛んで、年間100回超えの目標に向かって前進を続けています。

米宇宙軍が運用する軌道上物体監視データベースSpaceTrack.orgによれば、2025年12月25日の時点で、軌道上にある衛星は1万6,888機です。うち、スターリンク衛星は9,349機です。

日本では、種子島宇宙センターから4回の打上げが実施されました。2001年から日本の宇宙開発を支えてきたH-IIAロケットの運用が、温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW(いぶきGW)」を搭載した50号機で無事に終了し、H3ロケットの打上げが運用段階に入ってきています。

H3ロケット5号機で2025年2月2日には、準天頂衛星「みちびき」6号機の打上げに成功。2025年10月26日にはH3ロケット7号機で新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」1号機の打上げに成功と、成功回数を重ねてきました。

8月には、国際宇宙ステーションにそれまで長期滞在していた大西卓哉宇宙飛行士と、新たに到着した油井亀美也宇宙飛行士が交代。日本人宇宙飛行士が「きぼう」実験棟に連続滞在しさまざまな宇宙実験を進めることとなりました。

「きぼう」で記念撮影を行なう大西卓哉宇宙飛行士と油井亀美也両宇宙飛行士(クレジット:JAXA/NASA)

H3ロケットには、1段メインエンジンを2基、固体ロケットブースター(SRB-3)を2本取り付けた「22形態」と、メインエンジン2基、SRB-3を4本取り付けた「24形態」があります。この24形態はH3シリーズの中で最大の打ち上げ能力を持ち、その初のミッションとして日本の衛星としては最大級となるHTV-X1号機の打上げに成功しました。

HTV-X1号機は、国際宇宙ステーション補給機「HTV(こうのとり)」の後継機でISSに宇宙飛行士の生活物資や実験機材を運ぶ能力のほか、ISSから離脱後に宇宙実験施設として衛星技術の実証を行なうことができます。退役まであと5年となったISSの後を見据えた宇宙機のデビューとなりました。

ISSのロボットアームで油井亀美也宇宙飛行士がキャプチャしたHTV-X1号機(クレジット:JAXA/NASA)

ここまで連続成功だったH3ロケットですが、2025年12月22日にはH3ロケット8号機に搭載した準天頂衛星「みちびき」5号機の打上げに失敗。ロケット第2段の2回目の燃焼が正常に終了せず、衛星を軌道投入できなかったというトラブルが発生しました。

みちびき5号機はH3ロケット8号機の2段機体と共に打上げから数時間で地球に再突入したと見られ、衛星を喪失し打上げは失敗という結果となりました。12月25日の時点で、トラブルは2段上部に取り付けられた衛星フェアリングを分離した時点で始まったと推定されています。

衛星フェアリングは、先端が円錐状になった筒のような形状で、火薬を使ってボルトを断ち切り、縦に2つに分かれるように分離していきます。少量の火薬を使用するためにロケット機体に衝撃が加わりますが、この衝撃がH3ロケット5号機までの実績とは大きく異なるものであったことがわかってきました。ですが、このことと2段エンジンで起きた燃料の水素タンク圧力の低下と燃焼の早期終了がどのように繋がっているのかはまだ解明されていません。

搭載衛星の準天頂衛星システムの中で、みちびき5号機はJAXAが開発した高精度測位システム「ASNAV」のハブとなり、軌道上で衛星の位置を正確に測定する役割を持っていました。精密な衛星の位置情報がわかることで、専用の受信機を使用しないスマートフォンやカーナビなどの一般的な機器でも位置情報の精度を向上させ、2030年代には位置情報の誤差を1m以下に小さくすることができます。

この機能はまだ実用化前の実証段階にあり、現在軌道上のみちびきシリーズが米GPSと協調して提供している基本的な測位機能は支障なく利用することができます。とはいえ、5号機の再製造をするとしても相当の期間が必要になります。準天頂衛星の7機体制の整備と高精度化には遅れが生じる可能性が高くなっています。

現在日本の基幹ロケットで運用中なのはH3ロケットのみです。固体ロケットのイプシロンは民間化に向けた「イプシロンS」の1号機を前に開発が難航しています。JAXAと文部科学省は直ちにH3ロケット8号機の打上げ失敗の原因究明をはじめ、山川宏JAXA理事長をトップとする対策委員会の元で対策、速やかなRTFが望まれますが、原因究明と対策は2026年の大きな課題として持ち越されることになります。

2025年に世界の宇宙開発で起こったこと

国際的にも2025年は変化の年となりました。米国では、1月のドナルド・トランプ大統領の就任に伴い、NASA組織の急激な変化が起きています。それがNASAの長官人事でした。前政権下で任命されたビル・ネルソン氏はNASA長官から退き、新たなNASA長官として実業家で民間宇宙飛行士でもあるジャレッド・アイザックマン氏が大統領から指名されました。

アイザックマン氏はイーロン・マスクCEOと親しい間柄ですが、マスク氏がDOGEを退くのと相前後して、議会で指名手続きの終了間近だったアイザックマン氏の指名が突然取り消されたのです。政権交代でNASA長官がなかなか決まらず空白期間が生じたことはこれまでにもありましたが、指名が突然取り消され、しかも11月には再指名されて12月についに就任と、異例づくしの人事となりました。

この間、トランプ政権下ではNASAの24%もの大幅予算削減、特に科学予算を削減する案が出され、NASAの競争力を削ぐのではないかと大変な懸念を巻き起こしました。日本に影響する、月探査拠点のGatewayや、火星からのサンプルリターンを目指すMSR、日米共同計画PMMの打上げ(米国側担当)など、相当な計画が名指しで中止とされました。

この巨大な変化に、議会が抵抗。中国との競争を念頭にMSR復活を打ち出すなどかなりの予算を元に戻す方向で予算の審議を行なっています。しかし10月には民主共和両党の不一致から予算案が通らず、政府機関閉鎖の事態となります。

予算が執行できない間、NASAを含む政府機関は閉鎖され、さまざまなプログラムが実質的に止まっています。職員も大幅に削減されていることから、NASAの実行力がどのような状態にあるのかまだ見通せない状況です。議会はつなぎ予算の実行できるようになりましたが、これは1月末までの期限付きなので今後もNASAの変化はどうなるのかまだわかりません。

宇宙開発の世界で確実にNASAを追い上げている中国は、2025年にこれまでの記録を更新する打上げを実施しました。民間ロケットの再使用実験に成功、また独自の宇宙ステーション「天宮」の運用を着実に実行しています。

その宇宙ステーションへ宇宙飛行士を送る神舟21号は、9月にスペースデブリの衝突と見られる事態で機体が損傷し、3人の宇宙飛行士は地球帰還のスケジュールを変更して、新たに無人で打上げられた神舟22号に搭乗することになりました。有人宇宙プログラムの難しさを実感させられたわけですが、同時に中国が不測の事態に迅速にバックアッププログラムを用意できる、宇宙開発の体力をしっかり持っていることも明らかになりました。

11月には、ロシアの有人宇宙船ソユーズ打上げの要であるカザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地で発射台が損傷する事故が発生。当面、有人宇宙船の打上げは難しく、発射台修復には4カ月程度の時間がかかると見られています。来春までの間、ISSの運用は米国のクルードラゴン宇宙船と、カーゴドラゴンやシグナスなどの補給機で支えられることになります。

2026年の宇宙開発:日本

2026年、日本国内での最初の衛星打上げは2月4日に予定されているH3ロケット9号機 準天頂衛星「みちびき」7号機の予定でした。みちびき7号機は、みちびきだけで日本の周辺で位置情報を取得できるようになる7機体制を完成させる機体です。現在、次のH3打上げは不透明です。何らかの点検、不具合の修正を経なくてはならない可能性もあります。残念ですが7機体制の完成はもうしばらく後になりそうです。

準天頂衛星みちびき7号機(撮影:秋山文野)

1月から3月にかけて、ニュージーランドに射場を持つロケット・ラボのエレクトロンにより、JAXAの革新的衛星技術実証プログラムの超小型衛星(キューブサット)が打上げられる予定です。

8機の衛星は12月14日に同じエレクトロンで打上げられた革新的衛星技術実証4号機(RAISE-4)と元々は相乗りでイプシロンSロケットに搭載される予定でした。イプシロンSの開発が難航しているため、衛星技術を早期に実証するために海外のロケットを利用することになったものです。詳細な打上げ日時は今後発表される予定です。

2月25日には、民間固体ロケット開発企業のスペースワンが和歌山県の紀伊スペースポートからカイロス3号機を打上げる予定です。カイロスは2024年から超小型衛星を搭載して打上げを続けてきていますが、これまで2回は飛行中断によって衛星の軌道投入に失敗しています。3度目で衛星を所定の軌道に投入するというロケットの役割を果たすことができるのか注目されます。

このカイロスを含め、北海道大樹町のインターステラテクノロジズ、東京の将来宇宙輸送システムの3社は、文部科学省が進める民間ロケット開発資金「SBIR フェーズ3」資金事業に採択されています。

SBIR事業にはステージゲートと呼ばれる中間審査があり、当初採択された4社は、最初の審査を経て3社となっています。2回目のステージゲート審査は令和7年度第4四半期に予定され、さらに2社に絞り込まれる予定です。第2回ステージゲート審査の要件は「基本設計が完了していること」ですから、機体の運用段階に入っているカイロスはこの要件をクリアしているといえます。3号機が軌道投入に成功すれば、はずみがつくといえそうです。

2026年度に入ると、H3ロケット6号機(30形態)の打上げが控えています。30形態はSRB-3なし、エンジン3基のH3ロケットで最もシンプルな形態。政府衛星向けのコストを抑えた機体ですが、初打上げ前に2025年夏に実施された地上試験で不具合が見つかり、所定の燃料の圧力を満たすための再試験を予定しています。これをクリアすれば新たな機体のデビューとなるでしょう。

1号機に続いて、2026年にも新型宇宙ステーション補給機HTV-X2号機の打上げが予定されています。ソユーズ発射台の損傷によってISSの運用計画も調整を必要とし、物資補給の予定が重要になるでしょう。HTV-Xの役割が問われます。また、1号機の軌道上実証は2026年に実施されることになります。

宇宙科学の注目ミッション

2026年度で注目ミッションに火星衛星探査計画「MMX」の打上げでしょう。日本では2回目となる火星圏を目指す大型探査機で、火星の衛星フォボスから表面の物質を採取して持ち帰る計画です。探査機を3段構成にして順次切り離し、軽量化して2030年に帰還するというこれまでに例のないミッション。打上げは種子島宇宙センターからH3ロケット24形態で実施されます。

2026年11月、JAXAと欧州宇宙機関(ESA)が協力して進める国際水星探査計画「ベピ・コロンボ」がいよいよ水星に到着します。ベピ・コロンボはJAXAが開発した水星磁気圏探査機(MMO:みお)、とESAの水星表面探査機(MPO)が一体となって航行していて、打上げはなんと2018年10月。実に8年もの年月をかけて水星までの旅を続けてきました。

水星は太陽系で最も太陽に近い内側の惑星で、太陽の巨大な重力と熱の影響のため接近が非常に難しく、これまで水星探査を実現したのは米国の2回だけです。世界で3番目の水星探査となるベピ・コロンボのうち、日本のMMOは、水星と地球の意外な共通点である磁気圏を観測する探査機。地球のような惑星ができた仕組みの解明にもつながる、こちらも注目のミッションです。

「水星磁気圏探査機(MMO:Mercury Magnetospheric Orbiter)みお」の水星探査のイメージと打上げ前のみお(クレジット:JAXA)

2026年中には、日本とESAが参加するNASAの大型計画「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(WFIRST)」の打上げが計画されています。赤外線で宇宙を観測し、ハッブル宇宙望遠鏡の200倍の視野を持つローマン望遠鏡は、NASAの初代主任天文学者で「ハッブル宇宙望遠鏡の母」とも呼ばれるナンシー・グレース・ローマン博士にちなんで名付けられました。

ダークエネルギーや「冷たい系外惑星」と呼ばれる、表面温度が低くこれまでの手法では発見が難しかった太陽系外惑星などの観測を行なう予定です。宇宙科学の発展を強力にドライブするローマン望遠鏡ですが、トランプ政権下の宇宙科学予算削減案で計画がゆらいだこともあり、NASAのWebサイトでは「2027年5月までに打上げ」とややぼかした表現になっています。国際的なプログラムをしっかり実現するためにも見守りたいミッションです。

開発中のナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡。Credit: NASA/ Sydney Rohde

日本の宇宙政策

人工衛星を打ち上げ運用する際には、「宇宙活動法」という法律の下で許認可が行なわれています。国際的な宇宙のルールである宇宙条約などを踏まえた宇宙活動法は2018年から施行され、一定の期間後に見直しをすることとなっていました。

この宇宙活動法の改正の議論が現在行なわれています。最初に法律ができた段階では、実験的な衛星を搭載しないロケットや有人、再利用ロケット、軌道投入しないサブオービタル飛行、気球から発射するロックーン方式など多用な方式についてはうまく手当てできていませんでした。より包括的で宇宙ビジネスを後押しする新たな宇宙活動法案を国会に提出する準備が進められています。

2026年の宇宙開発:世界

世界でも注目の打上げを控えています。1月には、インド有人宇宙船実証機Gaganyaan-1(ガガニャーン1号)が打上げられる予定です。インドは世界で4番目の有人宇宙船技術獲得に向けて開発を続けています。ガガニャーン1号は最初の無人での宇宙船試験飛行で、クルーモジュール・サービスモジュールから構成される機体を高度約400kmまで打上げ、地球に帰還させる計画です。

2月には米国が有人月探査「アルテミス2」を打ち上げる予定です。アイザックマンNASA長官にとっては初の大型ミッションを率いる機会であり、米国にとっては1972年のアポロ17号以来、54年ぶりの有人月探査ミッションとなります。

SLS(Space Launch System)ロケットとオライオン宇宙船の組み合わせは打上げの規模でも最大級。米国から3名、カナダから1名の宇宙飛行士が搭乗し、月を周回して着陸はせずに地球に帰還するおよそ10日間ミッションとなります。米中が月探査を巡って競争が激しくなる中で、月への帰還を米国が先んじて実現できるのかを占うミッションとなります。

「アルテミス2」に搭乗するNASAのリード・ワイズマン、ビクター・グローバー、クリスティーナ・コック宇宙飛行士と、カナダ宇宙庁のジェレミー・ハンセン宇宙飛行士(Image Credit: Josh Valcarcel – NASA JSC)

5月、6月には、米国の民間宇宙開発企業Vastによる民間宇宙ステーション「Haven-1」の打上げと、Haven-1への初民間有人ミッション「Vast-1」の打上げが続けて計画されています。

2030年の国際宇宙ステーション退役を前に、米国は「CLD」と呼ばれる民間宇宙ステーションの実現を推進していて、Haven-1は世界初の人工重力機能を持つ独立した商用宇宙ステーションとなることを目標としてます。Vastは2025年末に日本法人Vast Japanの設立を発表し、ゼネラルマネージャーには元JAXA宇宙飛行士の山崎直子氏が就任する予定です。

商業宇宙ステーションHaven-1の構想図(Image Credit: Vast)

8月には、月探査の分野で米国と競争を繰り広げる中国が新たな月探査機「嫦娥7号」を打上げる予定です。これまで、月の裏側を含む月面着陸とローバーによる移動探査、サンプル採取と帰還を進めてきた中国ですが、今度は「月の水」発見が大きな目標となっています。

嫦娥7号には新たな移動方式のホッピング探査機を加え、月の南極で車輪式ローバーが到達できない場所の水資源を探査する計画です。水氷(みずごおり)と呼ばれるまとまった量の水を発見することができれば世界初となるだけでなく、将来の月面長期滞在で必要とされる資源を入手する手段ともなります。

一方で米国は2026年中ごろから後半にかけて、民間無人月面探査「CLPS」計画の着陸機「Blue Ghost M2」(ファイアフライ・エアロスペース)と「Griffin-II」(アストロボティック)の打上げを進める計画です。月の裏側への着陸を試みるなど民間による多用な無人探査技術の向上を進めます。

2026年には、ボーイングが開発中の有人宇宙船「Starliner」の打上げが行なわれる可能性があります。2024年に有人飛行試験で機体の不具合が発生し、宇宙飛行士が搭乗しての帰還を取りやめてから開発計画が不透明になっています。

2025年中の再度の飛行試験の見込みはありませんが、ソユーズ発射台の損傷のように、ISSを支える有人宇宙船の運用計画は不測の事態で揺らぐ可能性があります。SpaceXのクルードラゴンが安定して運用を続けているとはいえ、代替手段の模索を止めるリスクも考えなければならないといえそうです。

秋山文野

サイエンスライター/翻訳者。1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。X(@ayano_kova)