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高温に注意したい夏のモバイルバッテリー選び 半固体・リン酸鉄・ナトリウムイオンを整理

モバイルバッテリーを選ぶ際、最近の製品では「半固体電池を採用」や「リン酸鉄リチウムイオン電池搭載」など、中身の電池が従来製品と違うことをアピールする製品を見かけることが増えてきました。

背景には、モバイルバッテリーに多く採用されるリチウムイオン電池の発熱・発火事故があります。リチウムイオン電池は小型で大きな電力を蓄えられる便利な電池ですが、強い衝撃や高温、劣化、異常な使い方などが重なると、発熱や発火につながるおそれがあります。

こうしたリスクを受け、航空機での扱いも厳しくなっています。国土交通省は、国際民間航空機関(ICAO)による国際基準の改訂を受け、4月24日からモバイルバッテリーの機内持ち込みルールを変更しました。モバイルバッテリーは従来から預け入れ荷物に入れることはできませんでしたが、新たに機内持ち込みは160Wh以下のものを1人2個までとされ、機内でモバイルバッテリー本体を充電したり、モバイルバッテリーからスマートフォンなどの電子機器を充電したりしないことも求められています。

安全性で注目されるモバイルバッテリーの電池

こうした機内持ち込み制限が厳しくなる前から、メーカー各社は従来のリチウムイオン電池を改良したり、半固体電池やリン酸鉄リチウムイオン電池など、安全性に配慮した電池を採用したりする製品を展開しています。ユーザー側も、容量や出力だけでなく、内蔵する電池の種類や安全性、正しい使い方を理解して選ぶ必要があります。

そこで今回は、モバイルバッテリーに内蔵される電池の種類や特徴、選ぶ際に確認したいポイントを解説します。

小型・高出力で広く使われる「リチウムイオン電池」

モバイルバッテリーだけでなく、スマートフォンやワイヤレスイヤフォンなど、多くの充電式の機器に利用されているのがリチウムイオン電池です。

軽量、小型でありながら大きな電力を蓄えられ、大きな出力も得やすいため、小型の機器に搭載するバッテリーとして使い勝手がいいことがメリットに挙げられます。また、繰り返し充放電しやすいため、スマートフォンのように毎日充電する機器との親和性も高い電池です。

その一方で、強い衝撃が加わったり、高温になる場所に放置されたり、劣化した状態で使い続けたりすると、発熱や発火につながるおそれがあります。

モバイルバッテリー以外も含め多くの電子機器に採用されているリチウムイオン電池

メーカーによっては、従来のリチウムイオン電池に改良を加え、発火事故などのリスクを抑える取り組みを進めているものも出てきています。

直近ではAnkerが発表した「ネオリチウムイオンバッテリー」が該当します。同社は、不純物を抑えたセル素材や高温環境での試験、難燃性素材の採用などによって、安全性を高めると説明しています。

従来方式でも不純物の低減や過酷な試験を実施し、安全性を訴求する製品も出てきています

発火リスクの低減が期待される「半固体電池」

モバイルバッテリーに採用される電池として、最近増えてきているのが「半固体電池」です。従来のリチウムイオン電池では電解質に液体が使われますが、これをゲル状などにした電池を「半固体電池」と呼ぶことがあります。

メーカーによっては「準固体」と表記することもあります。現時点では、モバイルバッテリーの製品表示として「半固体」と「準固体」のどちらかに統一されているわけではなく、メーカーによって表記に差があります。

モバイルバッテリーに採用される半固体電池の多くは、リチウムイオン電池に近い仕組みを持つ電池です。そのため、軽量、小型でありながら大きな電力を蓄え、出力しやすいという特徴を持ち、モバイルバッテリーとしての性能が従来製品と比べて大きく劣るわけではありません。

電池の電解質が液体の場合、強い衝撃などで内部が損傷した際に、電解液の漏れや発熱につながるおそれがあります。半固体電池では、電解質をゲル状などにすることで液漏れリスクを抑えやすいとされています。そのため、発火リスクの低減が期待される電池として注目されています。

ただし、半固体電池であっても航空機への持ち込みや使用には、従来のリチウムイオン電池と同様の制限が適用されます。「半固体電池だから航空機で自由に使える」わけではない点は注意が必要です。

半固体電池を採用することをアピールするパッケージが目立っています
手前は半固体電池を採用したモバイルバッテリー。大きさは従来のリチウムイオン電池採用製品とほぼ変わりません

長寿命で熱安定性が高い「リン酸鉄リチウムイオン電池」

主にポータブル電源で採用が多いのが「リン酸鉄リチウムイオン電池」です。モバイルバッテリーにも最近になって採用製品が登場し、パッケージに同電池を使用していることがアピールされている製品もあります。

リン酸鉄リチウムイオン電池は、リチウムイオン電池の一種です。「LFP電池」と呼ばれることもあります。リチウムイオン電池の中でも熱安定性が高く、熱暴走に至りにくい傾向があることや、長寿命であることがメリットとして挙げられます。

特に寿命は、一般的なモバイルバッテリーが500回程度の充放電をうたう製品が多いのに対し、リン酸鉄リチウムイオン電池では1,000回以上の充放電をうたう製品もあります。

その反面、低温下では性能が低下しやすかったり、通常のリチウムイオン電池と比べるとバッテリーが大型化しやすかったりするデメリットもあります。

大型のポータブル電源での採用例の多い電池です
モバイルバッテリーでも採用製品が最近になって増えてきました

次世代電池として注目の「ナトリウムイオン電池」

リチウムイオン電池に代わる次世代電池として注目されているのがナトリウムイオン電池です。すでに一部メーカーから、モバイルバッテリーやポータブル電源への採用製品が登場しています。ただし、モバイルバッテリーとしてはまだ製品数が少なく、現時点では選択肢が限られます。

採用例としては、エレコムがナトリウムイオン電池を搭載したモバイルバッテリーを展開しています。同製品は、容量9,000mAh、USB Type-C出力最大45W、くり返し使用回数約5,000回、放電時の使用温度範囲-35℃~50℃をうたっています。

一方で、リチウムイオン電池と比べると同じ容量でも本体が大きく、重くなりやすい傾向があります。モバイルバッテリーでは、容量によっては持ち運びに適さないサイズになることもあります。

また、航空機での扱いにも注意が必要です。国土交通省は、ナトリウムイオン電池について、旅客の手荷物として機内持ち込み・預け入れともにできないものと説明しています。旅行や出張で航空機を利用する場合は、購入前に電池の種類と航空会社の案内を確認しておきましょう。

電池の種類だけで選ばない。購入時に確認したいポイント

ここまでに書いたように、主要なモバイルバッテリーに採用される電池は、多くがリチウムイオン電池の派生にあたり、全く発熱や発火のリスクがなくなっているわけではありません。それでも、従来のリチウムイオン電池に比べれば、液漏れや熱暴走のリスクを抑えやすい構造を採用したり、熱安定性や長寿命を重視したりするなど、トラブルを防ぐための工夫をこらした電池が増えています。

そのため、新しいモバイルバッテリーを購入する際は、特に入手性の高い「半固体電池」「準固体電池」と書かれた製品が有力な候補になります。価格や仕様、外観の好みが合えばリン酸鉄リチウムイオン電池の製品も選択肢になります。

一方で、ナトリウムイオン電池の製品は、航空機での移動が多い人には現時点では扱いにくい選択肢です。持ち運びのしやすさや航空機利用を重視する場合は、購入前に電池の種類と航空機での扱いを確認しておきたいところです。

購入時にまず確認したいのはPSEマークです。リチウムイオン蓄電池を内蔵する一定条件のモバイルバッテリーは電気用品安全法の対象であり、日本国内で販売される製品にはPSEマークの表示が求められています。PSEマークが確認できないリチウムイオン系モバイルバッテリーや、販売元が分かりにくい製品は避けた方がよいでしょう。

PSEマーク

一方で、ナトリウムイオン電池搭載製品などは、現時点ではPSEの対象外として扱われる場合があります。PSEマークの有無だけで全ての電池方式を一律に判断するのではなく、電池の種類、メーカーの説明、保証やサポート体制、航空機での扱いもあわせて確認する必要があります。

不要になったモバイルバッテリーの処分方法も確認しておきたいポイントです。可燃ごみや不燃ごみに混ぜて出すと、ごみ収集車や処理施設で発火するおそれがあります。自治体の案内に従うほか、メーカー、家電量販店、JBRCの協力店・協力自治体などの回収窓口を確認しましょう。

メーカーによっては、使用済みモバイルバッテリーの回収サービスを用意している場合もあります。たとえばAnkerは、自社製のモバイルバッテリーやポータブル電源を対象に回収サービスを案内しており、故障・破損品や保証期間を過ぎた製品も対象としています。

エレコムは、自治体やJBRC協力店での回収に加え、自社製モバイルバッテリーの回収方法を案内しています。

CIOは、会員向けに自社製および他社製モバイルバッテリーの回収サービスを実施しています。回収対象や送料負担、膨張・破損品の扱いはメーカーや店舗によって異なるため、処分前に各社の案内を確認しましょう。

いずれにしても、どの電池を選んでも「強い衝撃を与えない」「高温になる場所に放置しない」「膨張、異臭、異常な発熱がある製品は使わない」といった基本的な使い方は変わりません。電池の種類だけで安全性を判断せず、PSE表示、メーカーの信頼性、保護機能、保証、航空機での扱いまで含めて確認することが大切です。

迎 悟