石野純也のモバイル通信SE

第104回

ahamo 40GB増量の謎 密かに開幕したサブブランド戦争

ドコモは、ahamoやドコモminiなどのデータ容量をキャンペーンで増量している。ahamoは3割増し超の40GBに

ドコモは、8月1日にahamoやドコモminiなど、一部料金プランのデータ容量を増量した。ahamoは10GB、ドコモminiは10GB、4GBともに2GBを追加している。

適用後は、ahamoが40GB、ドコモminiが12GBと6GBになる。今回のデータ増量はキャンペーンという位置づけで、ユーザーにアンケートを取る予定になっているが、終了期間は未定。「データ増量おためしキャンペーン」と銘打っているが、終了時には正式な容量になる可能性もある。

ahamoは1GBを550円、ドコモminiは1,100円で追加できるため、毎月、容量が不足して追加のチャージをしていた人にとっては、事実上の値下げになる。また、このキャンペーンを目当てに、ドコモMAX(8,448円/月)だった人がahamo(2,970円/月)にしたり、ドコモminiで選択する容量を10GBから6GBに変えたりした場合、実際に毎月の支払額も下がる。

金額自体は変わっていないが、人によっては値下げになることもあると言えそうだ。

密かに開戦した「サブブランド」獲得競争

ドコモは、大手3キャリアの中で、唯一料金値上げに踏み切れていない。ドコモの前田義晃社長は、5月に開催された決算説明会で「全体としてどのように価格設定をしていくかは考えていかなければならないが、否定はできない状態だと思っている」と述べており、今後の可能性に含みを持たせていた。

一方で、「他社のサブブランドともまだまだ獲得をしあっているので、他社の出方を皆がどのぐらいの条件で戦うかは考えたい」としていた。

ドコモの前田社長。決算説明会では、値上げに含みを持たせていた

KDDIやソフトバンクはいち早く値上げに踏み切り、新規獲得よりもどちらかと言えば満足度を高めながら流出抑止を図っていく方針を示していた。また、各社ともサブブランドも値上げしている。だが、実際には、前田氏が言うように中容量から低容量のサブブランドでは、料金×データ容量の競争が止まっていない。特に、サブブランドは新規獲得を担う側面があるからだ。

その先陣を切ったのは、KDDIのUQ mobileだ。同社は、“ahamo対抗”として誕生した経緯のあるUQ mobileの「コミコミプランバリュー」に、「UQコミコミおトク割」を新設した。コミコミプランバリューは、ahamoと同様、割引などがなく、提示された金額だけで使えるシンプルさを売りにしていた。

データ容量はahamoより5GB多い35GB。料金は3,828円。ahamoより高いが、ahamoよりデータ容量が5GB多いという位置づけだった。ただ、コミコミプランバリューは、25年の「Pontaパス」がセットになったことで金額が上がってしまった側面もある。これによって、価格競争力が下がっていた。UQコミコミおトク割は、1年間限定ながら、660円割引をつけ、料金を3,168円にすることでその割高感を緩和している。

KDDIは、6月25日にUQ mobileのコミコミプランバリューを割り引くUQコミコミおトク割を開始した

これだけだと、1年限定のキャンペーンに近いが、UQコミコミおトク割は、au PAYゴールドカードを持つことで、2年目以降もこの割引が継続する。これによって、ahamoに近い金額でahamoより容量が多い料金プランになった。ドコモのデータ容量増量キャンペーンは、こうした動きに追随した可能性が高い。

UQ mobileだけでなく、ソフトバンクのワイモバイルも同様のキャンペーン的な性質を持つ割引を導入している。ワイモバイルは、7月17日に「シンプル3 M/L」が毎月1,000円割引になる「超! おトク割」を導入した。こちらは、加入から1年間1,100円の割引が受けられるというもの。光回線とのセット割である「おうち割 光セット(A)」とは同時適用できない。

ソフトバンクも、シンプル3のMプラン、Lプランを1年間1,100円割り引く、超!おトク割を導入し、こうした動きに対応している

ターゲットは、一人暮らしの若者など、固定回線を自宅にひかないユーザー層だろう。ドコモのahamoやUQ mobileのコミコミプランバリューは、割引なしの料金設計になっていたのに対し、ワイモバイルは伝統的なキャリアの料金体系に近く、光回線のセット割や家族割引、クレジットカード割引を組み合わせて低料金を実現している。こうした料金体系は、解約率が低くなり、家族で契約すると満足度も高い一方で、一人暮らしのユーザーなどを獲得しづらくなる。

その意味で、超!お得割は、光回線のセット割に変えて導入するもので、ahamoやコミコミプランバリューに対抗するための措置と言えるだろう。これを適用し、PayPayカードゴールドで料金を支払うと、12カ月間限定ながら、30GBの「シンプル3 M」が2,508円まで下がる。35GBで1回10分の音声通話定額がつく「シンプル3 L」は3,608円になるため、必ずしもUQ mobileには対抗し切れてないが、割引前提を崩してきたインパクトは大きい。

ワイモバイルはPayPayカードゴールドの割引を適用した場合の1年間の料金、UQ mobileはau PAYゴールドカードで永続する条件はあるが、それらを加味してもahamoが安くて容量が多い

「様子見」の40GBキャンペーンはドコモの「次」の布石?

1年間限定やキャンペーンという形だが、料金値上げ後も、サブブランドを中心とした新規獲得競争は依然として続いていることが分かる。料金を上げないドコモに対し、KDDIやソフトバンクが期間限定という形で仕掛け、それにドコモがデータ容量で応じたことがその証拠と言えるだろう。

とは言え、いずれも正式な料金プランではなく、どこかおっかなびっくり相手の出方を伺っているようにも見える。最近では、サブブランドからメインブランドに乗り換える人も徐々に増えており、キャリアの収益を底上げしている。キャリアとしては、こうした流れに水を差し、ユーザーが逆行してしまうのを懸念しているはずだ。

一方で、特にコストパフォーマンス重視のサブブランドを使うユーザーには不満を持たれるおそれもある。その相反するニーズにこたえようとすると、キャンペーンや1年限定という形に落ち着くのかもしれない。もっとも、UQ mobile、ワイモバイルと続き、ahamoが容量を上げたことで、さらに競争力がついた。先行して動いた2社が、ここにどう対抗するのかも注目しておきたい。

石野 純也

慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行なう。 ケータイ業界が主な取材テーマ。 Twitter:@june_ya