小寺信良のくらしDX
第42回
夏冬の断熱に窓の二重化 その絶大な効果を「LIXIL」で体験した
2026年7月31日 08:20
寒々とした6月を過ぎると、今年もまた夏が本気を出してきた。7月23日には気温が40度を超えた地点が7地点となり、1日に観測した酷暑日地点数が今年最多を記録したそうである。
こんな時には家の中で涼しく過ごすに限るが、そうなるとエアコンの電気代が気になってくる。この暑さではいくら温度を下げても効かない、というお宅もあるのではないだろうか。
実際、夏と冬で一番電気を消費しているのがエアコンだ。実に全電気代の3割以上がエアコンで消費されている。電気料金の高騰も先が見通せない中、節電の第一歩はエアコンの効率化から始めるべきだ。
これに大きな効果があるのが、窓の断熱である。壁や床、天井などはすでにある程度断熱されてはいるが、もっとも無防備なのが、開口部である窓やドアである。夏場の外から室内に入り込む熱の実に73%が、こうした開口部を経由している。また冬場の室内から外に逃げる熱の58%が、開口部から失われているという。
そんなわけで今、開口部のうちで大きな面積を占める窓のリフォームが熱い注目を集めている。そんな状況を、住宅用建材大手LIXILの「LIXILショールーム東京」にお邪魔して取材させていただいた。
窓の断熱リフォームとは
窓の断熱で効果が高いのが、窓自体をリフォームすることである。窓の断熱リフォームには、電気代削減、快適性、防音性、防犯性の4つが向上するというメリットがある。
リフォームする方法は、大きく分けて2つある。一つは今ある窓はそのまま活かして、その内側にもう一つ枠を取り付け、2枚目の窓を付ける「内窓リフォーム」。もう一つは、既存の枠の上から新しい窓枠を取り付け、断熱性の高いペアガラス窓に取り替える「取替窓リフォーム」だ。
これらは見た目の良さや開閉頻度、施工条件などによって、工務店と相談しながらどちらかを選択するのが一般的だという。
窓を断熱リフォームすることで、電気代は実際にどれぐらい下がるのか。LIXILの試算によれば、内窓で年間22,550円、取替窓で年間20,890円の削減効果があるという。
また戸建て18窓のうち9窓に内窓を付けると、年間約2万円の電気代差が出るという試算もある。窓は20年程度使うため、長期的な削減効果が大きい。
問題は、窓のリフォームにはいくらかかるのかということである。これは工務店側で工事費なども含めて価格が設定されるため、LIXILとしては一概には言えないとしながらも、目安としては、ベランダへ抜ける引き違い窓(幅1・65m、高さ1・8m)の内窓で税込みで15万円(工事費、運賃除く)弱だという。
これを電気代の削減だけで元を取ろうとするとだいぶかかるが、実は窓リフォームは、「先進的窓リノベ2026事業」として、国から補助金が出る。
今年は1,125億円が補正予算にて計上されている。国の補助金は2023年にスタートしたが、補助金がなかった前年と比較して、2023年には窓リフォームの売り上げが3倍に伸びたという。みんな補助金を利用しているわけだ。
補助金は都道府県といった自治体からも出ており、これらは国の補助金と併用できる。現在もっとも手厚いのは東京都で、都から最大200万円、国から最大100万円の、合計300万円が補助される。戸建ての場合は90%、集合住宅の場合は93%が補助金から還元されるシミュレーションもあるようだ。
都道府県に限らず、市町村レベルでも助成しているケースがあるので、そちらも確認してみるといいだろう。
また夏の暑さ対策としては、断熱もさることながら、遮熱も効果が高い。特に西側の窓に対しては、時間に応じて外にシェードなどを展開することで、より効果が高まる。内側のカーテンで遮熱しようとしても、結局は室内に熱は入ってきているので、窓の外で遮熱することに意義がある。
断熱窓は冬にも効果あり
ここまでは、夏の話だが、今度は冬の話である。
冬で気をつけたいのが、温度差によるヒートショックである。脱衣所が極端に寒いと、暖まろうとして熱めのお湯に浸かろうとするわけだが、これに関連した死亡事故が多発している。
ヒートショックに限らないが、厚生労働省の調査によれば、浴室内での死亡事故は、今や交通事故の2倍ぐらいあるので、シャレにならない。特に高齢者や血圧の高い人にはリスクが高い。
地域別に見ると、高齢者の入浴中突然死の割合が最も高いのは香川県で、以下3位まで近畿地方が占める。東京都も4位に入っているので油断ならない。一方北海道が46位と沖縄に続いて少ないのは、元々寒冷地のために住宅の作りが最初から断熱仕様になっているためと考えられる。
「LIXILショールーム東京」では、冬の住まいを想定した断熱効果が体験できる施設がある。「昔の家」、「今の家」、「これからの家」の3タイプを体験させていただいた。限られたところしか撮影できないので、写真は少なめだがご容赦願いたい。
新築戸建ての基準として、「断熱等級」というのが設定されている。「昔の家」は昭和55年基準相当の等級2、「今の家」は平成28年省エネ基準相当の等級4、そして「これからの家」は今後の標準となる等級6の3室を順に体験した。外気温は0度、室内は20度設定のエアコンが稼働という条件は同じである。
これらは新築の想定なので、床や壁の断熱の仕様も違うが、等級6の最大のポイントは、断熱窓であるという点だ。
「昔の家」では、エアコンの吹き出し口のあたりは暖かいが、床はヒエヒエだ。暖気は天井に集まっている。
室内の温度ムラも大きいが、一番差が大きいのは、部屋の外にある廊下の突き当たりにあるトイレである。室内の暖気は当然届かず、外の冷気がそのまま伝わってくる。昔の実家はこうだったよなと思い出させるような寒さだ。トイレの足元温度は約8度しかなく、室内との温度差は約12度もある。昔はトイレの中に電気ストーブなどを置いていたものである。
等級4の「今の家」は、2025年以降に新築を建てる際の最低基準になるが、部屋内の温度ムラはかなり改善されている。ただ部屋の外のトイレの足元温度は約11度で、それほど改善されていない。
一方等級6の「これからの家」では、トイレの足元温度は約18度となっている。冬場の18度以上の環境はWHOでも推奨されており、室内温度差を小さくすることもヒートショック予防に重要である。
最後に外側に回って、それぞれのガラス窓に触れてみた。等級2の家のガラス窓は暖かくなっており、それだけ室内の熱が外に逃げていることがわかる。一方ペアガラスになっている等級6の家のガラスは、外気温に合わせてかなり冷たくなっている。熱が外に逃げていないということである。
今回は実際の窓も多数拝見したが、今の窓リフォームは大工さんが入って全部とっぱずしての大工事ではなく、かなりキット化されていて、導入しやすくなっている。また東京都民は9割程度、一般的には4割程度は補助金でカバーできるため、工事費用もかなり抑えられることがわかった。
電気代との相殺で元が取れるかという点では、補助金がどれぐらい出るかにもよるが、だいたい10年から20年住み続けるのであれば、補助金が盛んになっている今、リフォームしたほうがいいだろう。単にコストの問題だけでなく、防音性能も上がるので、周りがうるさいという家にはメリットがある。
これからも夏には酷暑が続くのか、それともいつかなくなるときが来るのかは、誰にもわからない。少なくとも人類にはコントロールできないので、まだ当分はこの状態が続くのだろう。あと10年20年を見越して、今のうちに窓リフォームしておくのは悪くない選択である。特に東京都にお住まいのかたは国内でもかなり恵まれている環境にあるので、ぜひ検討してみてほしい。















