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話題の「Claude Cowork」で経費精算は可能なのか
2026年2月17日 08:20
みなさん、経費精算は毎月ちゃんとこなせていますか? 筆者は正直に言うと、全くできていません。件数もそれなりに多いので、いちいち領収書を揃えるのに手間がかかりますし、とにかく面倒で、精神的な負担もハンパではありません。
会社勤めの人のなかには、締め切りギリギリになって経理からせっつかれたり、「少額だからまあいいや」と諦めて自腹を切ってしまったり、みたいな人もいるのではないでしょうか。
いくらDXが進んだとしても、経費精算はデジタルとアナログ(紙の領収書など)の作業が混在することもあって、手間を減らすのは難しい業務の1つです。経費精算が楽になればもっと本業に集中できるのになあ……と考える人は少なくないと思います。
そこで活用してみたいのが「Claude Cowork」です。「既存のSaaSが不要になってしまうかも」などと、大いに話題になっていますが、少なくともそのSaaSの利用を補助するのには大いに役立ちます。
今回はClaude Coworkを使って毎月の経費精算作業を省力化するために、実際に筆者が試して有効だった方法をいくつか紹介します。
経費申請に必要な作業を可能な限り細かく書き出そう!
改めて説明すると、Claude CoworkはAnthropicが提供するAIエージェントです。パソコン上での作業をユーザーに代わって実行してくれるもので、「Pro」プラン(月額20ドル)以上で利用できます。当初はMacのデスクトップアプリのみ対応していましたが、2026年2月にはWindowsのデスクトップアプリも対応しました。
本誌では以前、パソコン内にあるファイルの整理、メールの返信し忘れのチェック、プレゼン資料の作成など、いろいろな場面でClaude Coworkが活躍してくれることを紹介しました。会社員の皆さんにとって毎月のルーチンワークとなっている「経費精算」にも、Claude Coworkが助けになる可能性は大いにあります。
といっても、Claude Coworkを経費精算のSaaS代わりにする、というのはまず不可能です。そうではなく、すでに利用している経費精算システムの補助的なツールとして役立ててみよう、というのが今回の主旨になります。
さて、さっそく経費精算にClaude Coworkを使っていきたいと思いますが、いきなりプロンプトに指示を書くというわけにはいかないと思います。みなさんそうだと思いますが、経費を経費として申請するまでにはたくさんの複雑な作業が発生しているはずだからです。
領収書を用意し、それをもとに経費申請のためのシステムに情報入力する、というのがざっくりとした作業内容になるかと思いますが、そこには無数のパターンが存在します。領収書1つとっても、ECサイトでの買い物ならそのECサイトで領収書を発行し、オンラインサービスの利用料ならそのサービスにログインしてダウンロードする必要があります。また、リアルで支払って受け取ったレシートの場合もあります。
システムに情報登録する際には、支払い先、支払い内容、金額に加えて、用途や目的なども適切に入力しなければなりません。最近では適格請求書発行事業者登録番号を確認し、正確に入力するという作業も1つ追加されました。レシートをアップロードしたときにOCR処理で項目を自動入力できる場合もありますが、それでも手作業は必ず発生します。
Claude Coworkに経費精算(の手助け)をしてもらうということは、すなわち、そうした人力で行なってきたさまざまな作業を「Claude Coworkに全部教える」ということに他なりません。AIがユーザーの意図を汲み取って、指示していない内容でも気を利かせて作業してくれる部分もありますが、毎回それを同じように繰り返してくれる保証はなく、反対に余計な作業を増やしたり、ミスにつながったりすることもしばしばです。
ですので、最初に人間がすべきことは、経費を申請するためにいつも行なっている作業をできるだけ細かく書き出すこと。ECサイトのどこから領収書をダウンロードできるのか、ダウンロードやスキャンした領収書のデータはどういう形式のどういうファイル名で保存しているのか、経費精算システムではどんな手順や判断基準で情報入力しているのか、などなど……。
おそらく、網羅しようとすると想像以上に長大な指示書になるのではないかと思います。入社したばかりの新人教育とほとんど同じ。あるいは退職するときの引き継ぎ資料にも近いかもしれません。AIは人間と同じように考え、動きます。そして、あなたがいつもやっていることは把握していません。であれば、何も知らない人に教えるように丁寧に説明することが重要です。
指示は細かければ細かいほど良いでしょう。経費精算システムで、画面のどこにある何というボタンをクリックし、どの表示か出たら次は何をすればいいのかなど、1から100まで詳細に記述してください。あなたが普段していることをそのまま文字化するのにはかなりの労力がかかりますが、一度作っておけば後で楽になります。
いかがでしょうか。書けましたか? では、それをプロンプトとして貼り付けてClaude Coworkに作業を開始してもらってください。ほら、あっという間に……全然できないことが分かると思います。圧倒的に、全くもって精算してくれませんね。
たしかに、作業自体は少しずつ進めてくれますし、指示内容を細かくすることで狙い通りに動いてくれるところもありますが、Webブラウザー上のボタンを1つクリックするのに数十秒かかったり、ユーザーに確認をたびたび求めたりと、はっきり言って非効率です。脇から観察しているとイライラしてきます。これなら自分で作業した方が何倍も早く終わるぞ、と思って横入りしたくなるでしょう。
というわけで、ここからは筆者がそれでも試行錯誤して、なんとかある程度の省力化にこぎつけたときの方法や考え方をいくつか紹介したいと思います。利用しているシステムなどの前提が異なると方法や考え方も変わってきますし、もっと効率良く進められる手法もあるかもしれませんが、一部でも参考になれば幸いです。
経費精算を楽にするために、考えるべき2つのポイント
筆者は普段から経費精算ツールにマネーフォワードの「クラウド経費」を利用しています。そこに会社の1従業員としてログインし、「サービス連携」でクレジットカードや電子マネーなどの利用履歴を取得して経費登録したり、(スキャンした)紙の領収書から経費登録したりしています。
「クラウド経費」側で半自動化できている部分もありますが、件数が多く複雑な作業が発生するので、1カ月分の処理に半日はつぶれます。本業とは関係のないこの作業を少しでも省力化して、時間を作りたいところです。
先ほど作成した指示書では、Claude Coworkは思ったように動いてくれませんでした。しかし、指示書が完全に無駄になったわけではありません。指示書を元にClaude Coworkに一度(あるいは何度か)作業してもらうことで、どこがボトルネックになっているかが分かり、対策を考えることができます。
そのなかから見つけたスムーズな処理や省力化に有効と思えるポイントを挙げるとすると、1つは「作業を分解し、可能なものはツール化する」こと、もう1つは「スキルやプラグインなどの機能を活用する」こと、でしょうか。順番に解説していきましょう。
作業を分解し、可能なものはツール化する
筆者の場合、指示書はかなり長くなりましたが、作業内容としてはいくつかのまとまりで分けることができます。たとえば下記のような感じです。
1. デジタルの領収書の入手
2. 紙の領収書のスキャン
3. 領収書データの整理
4. 経費精算システムでの処理
4-1. 連携サービスからの支払履歴取得
4-2. 取得した支払項目の取捨選択(業務に関連しない項目の削除など)
4-3. 支払項目への追加情報入力
4-4. 入力内容チェックと最終的な申請操作
これらを、人の手で作業しなければならない(すべき)ものと、Claude Coworkに肩代わりしてもらえそうなものに分ける、というのが基本的な考え方になります。それともう1つ、Claude Coworkではなく別のツールで解決した方が効率的なもの、というのもあります。分類してみましょう。
【人の手で作業すべきもの】
2. 紙の領収書のスキャン
4-1. 連携サービスからの支払履歴取得
4-4. 入力内容チェックと最終的な申請操作
【Claude Coworkに任せるもの】
1. デジタルの領収書の入手(一部手動操作必要)
3. 領収書データの整理
4-2. 取得した支払項目の取捨選択
4-3. 支払項目への追加情報入力
【ツールに頼るもの】
3. 領収書データの整理
4-3. 支払項目への追加情報入力
「2. 紙の領収書のスキャン」は物理的な作業なので必ず人間が手を動かします。「1. デジタルの領収書の入手」は、多数のWebサイトにログインする必要があり、認証の方法もさまざまですから、セキュリティ面を考慮して「ログイン操作」はユーザー自身の手で行なうべきでしょう。その後は、時間はかかるもののClaude Coworkに任せて大丈夫です。待ち時間のストレスをどう少なくするかは後ほど紹介します。
「3. 領収書データの整理」は、主にファイルのリネームです。PDFファイルの領収書の中身を確認し、一定の命名規則でリネームします。さらに、1つの案件で複数のPDFファイルに分かれてしまっている場合はマージする、といった処理も行ないます。このあたりの処理はClaude Coworkの得意とするところです。
「4. 経費精算システムでの処理」は段階に応じてさらに4つほどに分解されますが、筆者が利用している「クラウド経費」においては、「連携サービス」でクレジットカードなどの支払履歴を取得する操作がClaude Coworkだと失敗しやすく、手作業にした方が良いと判断しました。数回マウスクリックするだけなので、ここはそれほど手間ではありません。最後の「4-4. 入力内容チェックと最終的な申請操作」も、当然ながら人の目と手で行なうべきです。
それ以外のほとんどはClaude Coworkが(時間はかかるけれど)こなしてくれます。ただし、なかにはClaude Coworkが普通に処理してくれるものの、おそらく内部的にはプログラムを作成したうえで実現しているだろうと思われる作業もあります。たとえば複数PDFファイルのマージがそれです。
中身を読み取って判断する、といったAI的な処理が不要なこうした単純処理は、最初から別ツール(プログラム)として用意しておいて、それをClaude Coworkに必要に応じて使ってもらう形にした方が効率的です。別ツールにしておけば他の用途に流用しやすいメリットもあります。Claude Codeにお願いしてサクッと作ってもらいましょう。
また、「4-3. 支払項目への追加情報入力」においては、Claude Coworkの仕様上、制約があって実行できない部分があります。Webブラウザーから領収書ファイルのアップロードができない(Claude CoworkにUI上でファイル選択する権限がない)のが1つ。それと、制約とは少し違いますが、人間が使うことを前提とした複雑なUI上では、やはり効率的な情報入力ができない、というのも課題です。
そこも何らかのツールを組み合わせることを考えた方が良さそう、ということで、目を付けたのが「クラウド経費」の公式APIです。APIを利用することで直接画面を操作しなくても、登録している支払項目のリストを取得したり、各支払項目のデータを更新したり、領収書ファイルをアップロードしたりできます。
認証処理に用いるAPIキーの取得など最初だけ少しの手間はかかりますが、必要な情報をまとめたうえでこれもClaude Codeにお願いすれば、API連携でデータ更新や領収書アップロードを可能にするプログラムを作成してくれます。このようにして作成したツール類とClaude Coworkを組み合わせることで、より効率的な作業が可能になるはずです。
「スキル」や「プラグイン」などの機能を活用する
ところで、先ほど作成したツールをClaude Coworkに利用してもらうにはどうすればいいでしょうか。指示書(プロンプト)に直接「これを使って」みたいに書くのもアリですが、それよりも便利な方法がClaudeには用意されています。「スキル」と「プラグイン」です。
スキルは、Claude(Cowork)が作業をするときに、必要に応じて読み込んで実行する専門的な指示書のようなものです。簡単に仕組みを説明すると、「SKILL.md」というファイル内で「description: 」に続けてスキルを使いたい場面を記述しておくことで、Claudeが自ら判断してそのスキルを使用するようになっています。
画像作成に最適化したスキル、特殊な文書のレビューに特化したスキルなどがあり、誰でも利用できる公式・非公式のスキルはすでに膨大な数に上っています。そのなかから自分の用途に合ったものを探して使うのもいいですし、自分で作成してもかまいません。ちなみにClaude Codeにスキルの作成を依頼するときは「skill-creator」という公式のスキルが使われるようにもなっています。
一方のプラグインは、今説明したスキルに加えて、ショートカットコマンド(スラッシュコマンド)やフック(特定のタイミングをトリガーに何らかの処理をできるようにするもの)などClaudeが備えるいくつかの機能を1つにまとめたパッケージのようなものです。プラグインを導入すれば、Claudeの各種設定や振る舞いを一括変更できる、と考えておけばいいでしょう。
今回の経費精算のケースで言えば、領収書ファイルの整理(リネームやマージ)に関わる部分や、API連携に関わる部分をスキル、もしくはプラグインとして追加することが考えられます。
それともう1つ。「1. デジタルの領収書の入手」の部分でも工夫の余地があります。ここでは「ユーザーがWebサイトにログイン操作→チャットで準備OKなどと伝える→Claude Coworkにダウンロード作業をしてもらう→終わったら次のWebサイトへ……」といったように、Claude Coworkとユーザーの操作が何度も交互に繰り返されることになります。
このようなケースでいちいち文字入力するのは面倒なので、マウスクリックで「準備OK」と伝えられれば楽かもしれません。そんなときは、「CLAUDE.md」というファイルを作成し、この中にルールとして「ユーザーへの確認にはAskUserQuestionツールを使うこと」などと記述しておきます。こうすると複数の選択肢が提示され、マウスクリックだけで返答できるようになります。
CLAUDE.mdの例
# プロジェクトルール
■ユーザーへの確認にはAskUserQuestionツールを使うこと
ユーザーに確認や承認を求めるとき、テキストで「続けてよいですか?」と聞く代わりに、**必ずAskUserQuestionツールを使って選択肢を提示すること**。
■# 基本パターン
作業の続行確認が必要なときは、以下の選択肢を提示する:
- **OK(続行)**: そのまま作業を続ける
- **スキップ**: 現在のステップを飛ばして次に進む
- **中止**: 作業を止めて次の指示を待つ
■# 使い分け
| 場面 | やること |
|------|---------|
| 計画の承認を求めるとき | AskUserQuestionで「OK / 修正したい / 中止」を提示 |
| 次のステップに進んでよいか確認するとき | AskUserQuestionで「OK / スキップ / 中止」を提示 |
| 複数の選択肢から選んでもらうとき | AskUserQuestionで具体的な選択肢を提示 |
| 単純な情報の質問(ファイル名など) | AskUserQuestionのoptionsで候補を提示するか、テキストで質問してよい |
■# 禁止事項
- 「続けてよいですか?」「よろしいですか?」とテキストだけで聞いて、ユーザーにテキスト入力を強いることは避ける
- ユーザーが「OK」「はい」「続けて」とわざわざ打たなくて済むようにする
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また、ユーザーが他の作業をしていると、Claude Coworkが作業を終えた(ユーザーにログイン操作や作業判断を求めている)ことに気付けないこともよくあります。なので、すぐに作業の続きを指示できるように、あらかじめClaudeのデスクトップアプリの設定で「通知」機能をオンにしておくのもおすすめです。
AIが時間をかけて作業している間は「他のことができる」
Claude Coworkで経費精算の手間を削減したいなら、まずは指示書となるプロンプトをしっかり作り込み、そこから作業を分解してAIと人間の役割を切り分け、必要ならツールを作成し、スキルやプラグインも活用して効率化や最適化を図っていくことが大切です。
一発で経費精算を終わらせられるような魔法は、今のところ存在しません。ですが、工夫次第で確実に省力化にはつなげられます。
AIによるUI操作は、おそらくユーザーよりもずっと時間がかかります。しかし、ある程度プロンプトやツールなどが固まってくれば、ユーザーがAIの作業をじっと監視している必要はありません。その間は「他のことができる」と考えて、たとえば人間しかできない紙の領収書のスキャンをしたり、同じ作業を(競合しないように)分担して早く終わらせたりするのもいいでしょう。もしくは全く別の仕事をしていてもかまいません。
経費精算に限らず、日常業務で負担に感じているルーチンワークがあるのなら、Claude Coworkの力を借りて省力化できるところがないか探してみてはいかがでしょうか。そういったクセをつけることで、わずかずつでも負担を減らすことができ、余裕をもって仕事に臨めるはず。そして、Claude Coworkの使いこなしレベルも徐々にアップさせられるように思います。























