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AIブラウザの本命登場 OpenAI「ChatGPT Atlas」を使う
2025年10月30日 08:20
ChatGPTを開発・提供するOpenAIは、10月21日にWebブラウザーソフト「ChatGPT Atlas」を発表しました。
Google ChromeやAppleのSafariなど、多くのブラウザーが成熟し、そして便利に利用でき、市場シェアも握っている現在、新たに登場したAtlasはどのようなブラウザーなのでしょうか。
現在、AtlasはmacOS版のみとなっています。今回は、筆者の手元のMac miniにAtlasをインストールし、どのようなWebブラウザーとして利用できるのか、また既存のWebブラウザーと何が違うのかを試しました。
Web検索が「対話型」標準のAtlas
「ChatGPT Atlas」はその名の通り、ChatGPTを内蔵する点が今までのWebブラウザーとの大きな違いです。既存のWebブラウザーと同様に、検索欄に調べたいワードを入力することで結果を表示してくれることは同じですが、この検索結果がChatGPTとの対話画面になることが大きな違いです。もちろん従来型の検索結果を表示することも可能ですが、ChatGPTとの対話を通じて調べたいことを深掘りしていく使い方こそが、Atlasの既存ブラウザーにはない強みと言えます。
検索結果がChatGPTとの対話画面になるため、検索語句自体もキーワードではなく「自然な言葉」で入力できます。
筆者は来年、秋田県の男鹿水族館GAOに遊びに行こうと計画している最中なので、この検索をAtlasで行ないながら、既存のWebブラウザーとの違いや便利そうな機能をチェックしていきます。
一般的な検索では、これまで、「男鹿水族館 アクセス」や「男鹿 ホテル」といったキーワードを組み合わせ検索を行なう必要がありますが、Atlasであれば「男鹿水族館へ公共交通機関で向かう方法と、近くのホテルを調べて」のような、自然な言葉で調べられます。
検索結果にはChatGPTが参考にしたWebサイトへのリンクも含まれるため、そこから施設やスポット、旅行検索サイトのホテル紹介ページに飛ぶこともできます。
また旅行であれば観光スポットやホテル以外に、名物料理などを楽しめるレストランがないか、どんなお土産があるかなども事前に知っておきたい情報です。
そこで男鹿や秋田の名物・お土産について、別のタブ・新しいチャットでAtlasに調べてもらいました。
こうした旅行に関わる情報をいくつか検索したうえで「じゃあ、今調べた結果から、旅行の詳細を決めていこう」となるわけですが、これもAtlasでは「AI任せ」にできるのが、今までのブラウザーとの違う点です。
新たなタブを開いて「これまでに調べた結果から、男鹿水族館GAOに行く旅行の旅程を二泊三日で考えて」と質問すると、移動手段や移動時間、スポットの距離や人気などをもとに旅程を出してくれます。
Atlasではこれまでに調べた内容、閲覧履歴、複数のタブといった情報を網羅的に扱うことができます。
従来であれば、それぞれの結果から気に入ったものをピックアップし、別のメモ帳などにまとめていく作業が必要でしたが、Atlasであればそうした作業をAIにお任せしてしまえるのは「インターネットで検索する」体験を大きく変えてくれると感じる部分です。
AtlasはChatGPTが一体となっていることで、Webページの閲覧中にもChatGPTの便利な機能を利用できます。
例えば何か商品について調べているとき、スペック表など仕様を見ていてもお目当ての情報が見つけづらいようなこともありますが、そんなときはChatGPTを呼び出すことで、お目当ての情報がそのページにあるか、さらに自分が求めている要件を満たしているものがあるかを代わりに調べてもらうことができます。
一例として、同一シリーズ内に複数の型番と仕様が存在するノートPCのスペックのページを開いた状態で、ChatGPTに「重量900g以下の型番はどのモデルか」を尋ねたところ、この条件を満たす型番を抽出、まとめてくれました。
また、見ているWebページ内に存在するものから「似たもの」や「合うもの」についてChatGPTに聞くこともできます。
今回は、筆者が買おうと考えている靴に合うボトムスは、どんなものがあるかを尋ねてみました。
具体的な色やスタイルはもちろんのこと、予算を付け加えたことでおすすめのメーカーやブランドも候補として回答してくれました。
エージェントモードでさまざまな操作を自動化する
ChatGPTの有料プラン「Plus/Pro/Business」に加入している場合、Atlasでは「エージェントモード」が利用できます。
エージェントモードはプレビュー版として実装されている機能なので、今後仕様が変わる可能性はありますが、Atlasにもっとも未来を感じる機能です。
エージェントモードではさまざまなWebページの操作をAtlasに任せることができます。例えば「週末のBBQに必要な食材を検索」し、そこでChatGPTに提案されたレシピから実際に採用したレシピに必要な食材を、Atlasに注文を任せてしまうような使い方ができる、とアピールしています。
実際に「Amazonで炭酸水を注文しておいて」とエージェントモードで指示を出してみたところ、商品名が「強炭酸水」と書かれているものは購入対象から外れたりと、私が希望する動きとは異なる動作をしてしまいます。最終的には炭酸水を購入できましたが、指示には工夫が必要でした。具体的には「注文履歴から直近で購入した商品名を一言一句漏れずに入れる」「容量、価格、本数などをきっちりと指定する」さらに配送先と支払い方法の選択肢が出てこないように「ワンクリック注文」で指定するなどユーザーが操作するほうが早いのではと思うような挙動でした。
これらはプレビュー版ということもありますが、現状は使う人のプロンプトに対する理解度や習熟度がかなり考慮されると思います。今後のAIの改善や使う人の習熟にあわせて、使い勝手や体験が変わっていく部分でしょう。
他にも「メールの返信」や「SNSへの投稿」も試してみましたが、筆者がそれぞれのサービスにログインした状態で指示をしなければ返信や投稿をエージェントに代行してもらうことができません。エージェントはいわばRPAツールと似ていますが、RPAの場合はPC操作を記録して自動化するのに対して、エージェントはマルチモーダルにAIが指示をしてやっと理解するため、アプローチがそもそも異なります。IDやパスワードを必要とするログインや配送先の選択といった、“ユーザーに操作を求められる”場面がエージェントはまだ苦手な部分と感じました。
ただし、エージェントモードではこれらの現状の弱点を除けば、通常のChatGPTではできない操作の一部を“代行”させることが可能となるため、使い方次第では通常のChatGPT以上に、操作の簡略化を目指せると思います。
ChatGPT AtlasはAIでWebブラウジングを変えていく
ここまで紹介したAtlasですが、実際に使うと「既存のどのWebブラウザーとも違う」と感じます。
自然な言葉で検索し、AIがまとめた情報で表示されるだけであればすでにGoogle 検索のAIモードなども存在しますが、さらに複数の検索、閲覧履歴を横断して、より精度の高い回答を提示してくれるのは、Atlasならではの体験です。
さらに、Web検索の末にたどり着いたページで、ほしい情報を抽出して、まとめてもらえることでタイムパフォーマンスも高めることができたり、検索結果から次に知りたいことについても、専門性の高い用語を知らなくてもChatGPTを介して得たりできるのも、Atlasならではの体験でしょう。
エージェントモードを上手に活用すれば「検索だけして、ChatGPTの回答に納得したら、後のことも任せてしまえる」のも、使い方次第ではかなり便利そうです。
総じて従来のWebブラウザーは「ほしい情報のために検索する」「検索結果から、ほしい情報を自分でまとめ利用する」でしたが、Atlasは「Webの膨大な知識から、ほしい回答を得て、次にやりたいこともAIに任せてしまう」と、Web検索やWebページの使い方が全く異なる、AI時代のWebブラウザーです。