ニュース
KDDI子会社が巨額の架空取引 330億円が闇に消える
2026年2月6日 21:03
KDDIは、子会社による広告代理事業で架空取引が複数年に渡って行なわれていたことを明らかにした。推定で最大330億円が手数料として外部に流出、回収見込みが薄いため損失計上される見通しになっている。
特別調査委員会が設置され事案を調査中であること、売上の取り消しなど財務諸表への影響が未確定であることから、2月6日に予定されていた第3四半期決算短信の開示時期は3月末に延期された。6日開催の説明会では、この事案の説明と、事案の影響を考慮した第3四半期決算の内容が参考値として公表された。
KDDI本体は架空取引に関わっていないとするほか、KDDI・ビッグローブの通信サービスへの影響もないとしている。
なお、第3四半期決算(参考値)は、子会社の架空取引に関する売上・利益の修正(取り消し)を反映しても増収増益となる。
2名が架空取引に関与、外部の広告代理店も加担か
特別調査委員会による調査は進行中で、詳細は3月末に明らかにされる。事案の金額は最大で見積もられており、調査結果により変更される可能性がある。
問題の事件は、KDDIの連結子会社であるビッグローブと、ビッグローブの子会社であるジー・プランの2社における、広告代理事業に絡むもの。外部の広告代理店と関係しながら、広告主や広告の掲載媒体が存在しない架空取引が複数年にわたって繰り返され、架空の売上や利益を計上。広告料は、起点となる広告代理店に戻る“還流”スキームで、会計上の取扱高が雪だるま式に膨らんでいたほか、取引の過程で発生する手数料が、これら外部の広告代理店に支払われていた。
ジー・プランは2017年度から、ビッグローブは2022年度からそれぞれ広告代理事業を開始。KDDIは架空取引の割合を現時点で確定できていないため、数値が増大した近年は大部分を架空取引と想定し影響を算定している。過年度に計上したものも含め、売上高の取り消しは、合計で最大約2,460億円(うち26年3月期Q3で約680億円)、営業利益の取り消しは合計で最大約500億円(26年3月Q3は約250億円)に及ぶ。
架空取引の過程で手数料として外部に支払われた金額は、回収に努めるとするものの、「外部流出額引当」として合計で最大約330億円の損失計上を見込む。この内訳は、2024年3月期以前の合計が約50億円、2025年3月期が約110億円、2026年3月期の第3四半期までが約170億円と推定しており、期中である2026年3月期の決算では第3四半期に約170億円が損失計上されることになる。
現時点では、ジー・プランの社員2名が、ジー・プランでの業務と兼務する形でビッグローブに出向し、両社で架空取引に関わった疑いが明らかになっている。(KDDIグループでは)この2名だけが架空取引に関与しているという。2名は現時点でジー・プランを解雇されておらず、連絡を取り合っている状況にあるとのこと。2名の経歴、架空取引の動機などについては、プライバシー保護や調査への影響からコメントは控えられている。
なお動機については、KDDIグループとしてこれら2社の広告代理事業は「中期経営目標の達成を牽引するものではなかった」(KDDI松田社長)とし、売上拡大への過度な重圧はなかったはず、という認識を示している。
架空取引に関わった外部の広告代理店については、大手ではなく、複数社が関係しているという。これらの広告代理店について、意図せず巻き込まれた形ではなく「一定の連携があった」(KDDI松田社長)という見方。反社会的勢力とのつながりも聞かれたが「調査中」と回答するにとどまっている。
調査経緯
KDDIは2025年10月の時点で、規模が大きくなっていた2社の広告代理事業の管理強化を目的として内部調査を実施していた。この時点で会計監査人から「取引の妥当性」を疑問視する指摘があったものの、客観的な証拠は得られなかったという。ビッグローブを含め、(架空)取引の帳票はすべて揃っており、帳簿上は正当性があったという。
しかし25年12月中旬になって、これら子会社社員の証言などから、売上の過大計上の可能性を具体的に認識し、追加調査を行なった。
2026年1月14日、調査チームが具体的な証言や客観的証拠を得て、架空取引の疑いが高まったことから、特別調査委員会が設置された。
330億円が闇に
KDDIの松田社長は、説明会の冒頭に陳謝。グループ全体の信頼性を揺るがす事態とし、「再発防止とガバナンス強化に努め、強固な経営基盤にすることで責任を果たしていく」と決意を述べている。
子会社の広告代理事業において、外部の広告代理店までチェックする体制がなかったことで「兆候を見逃した」とし、こうした兆候を踏まえた検知プロセスを構築することが今後改善すべきポイントとした。
またビッグローブは、通信事業などに絡み、KDDIがグループ企業に資金を貸し付けるグループファイナンスを利用しており(2025年度で579億円)、こうした資金が架空取引においてグループ内を移動する資金の原資に回され、巨額化の一因になった可能性も指摘している。
なお、ビッグローブの2025年度の売上高は約2,300億円。このうち広告代理事業は1/3弱にあたる約820億円と計上されており、今回の事案ではそのほとんどが架空取引として想定されている形となる。
巨額で事件性が疑われ、架空取引の過程で文書偽造など犯罪行為の可能性も指摘される。松田社長は、現時点で警察に届けていないものの、「その可能性は認識しており、調査の進捗に応じて速やかに対応していく」としている。








