トピック

写真愛好家から10代のアプリへ インスタ15周年の変遷と現在地

Metaの写真共有アプリ「Instagram」は2025年10月6日、15周年を迎えました。10月7日に開催されたメディア向けラウンドテーブルに登壇した、Meta日本法人・Facebook Japan代表取締役の味澤将宏氏は、Instagramの月間アクティブアカウント数が世界で30億に達していると話しました。

日本の利用者数については2019年に公表した3,300万から右肩上がりで増加していますが、実際の数字は非公表。味澤氏によると、「(掲示した)グラフのスケールは合っている」とのことなので、現在は2.5倍近くの月間アクティブアカウント数に達していることが推測できます。

日本のInstagram利用者数は順調に増加

主要SNSとして盤石な地位を築いたInstagramですが、その歴史を振り返りつつ、Instagramが立っている現在地について考察してみたいと思います。

Instagramはカメラアプリとして誕生

Instagramは2010年10月6日、米国在住のケビン・シストロム氏とマイク・クリーガー氏によってiOSアプリとしてローンチされました。App Storeに登場した日に1位を獲得し、約1年で1,000万人ものユーザーを獲得しました。

当時は、ポラロイド風のアプリアイコンからもイメージできるように、カメラアプリとして認識されていました。iPhoneに搭載されているカメラの性能やネットワークの遅さによって高精度な写真が撮影できなかった時代に、Instagramはセンスの良いフィルターを用意し、手軽に写真を加工して共有できる機能を提供して人気を博しました。

ポラロイド風のアプリアイコン

ユーザーには写真愛好家やアーティストが多く、iPhoneのカメラを使用して撮影することや、正方形のフォーマットでいかに表現するかといった挑戦が楽しまれていました。

筆者の2013年のiPhone画面。写真アプリとして分類していました

他のアプリへの共有機能もあったため、iPhoneで撮影、Instagramのエフェクトで加工、FacebookやTwitterに投稿するというツールとして利用されていました。Instagramにも「いいね」やコメントがありましたが、アプリ内での交流はあまり盛んではありませんでした。

2012年になると、Facebookは約10億ドルでInstagramを買収します。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が社員わずか13人のスタートアップ企業の買収を発表すると、周囲からは称賛と同時に疑問の声も挙がりました。FacebookはInstagramが直前に公開したAndroidアプリの好調なスタートもあり、今後の成長に期待していち早く買収に踏み切ったと見られています。

買収時のFacebookは人気絶頂でした。2010年9月にはFacebook創設への経緯を描いた映画「ソーシャル・ネットワーク」が公開され、2012年には月間アクティブユーザー数が世界で10億を突破しました。

ちょうどFacebookがPCからスマホへシフトしていた時期でもあり、この買収はFacebookがスマホネイティブのInstagramに注目したという見方もできます。

インスタ映えに10代女子が夢中

スマホやネットワークの進化により、Instagramはよりリッチなコンテンツを共有するプラットフォームへと変化していきます。

動画に対応した2013年頃から、海外セレブがこぞってInstagramを利用し、セレーナ・ゴメスやジャスティン・ビーバー、キム・カーダシアンなどがセルフィー(自撮り)を投稿し始めました。

写真家が愛好する加工アプリだったInstagramですが、有名人が豪華な日常を披露するSNSへと変貌したのです。日本でも、ローラさんや渡辺直美さんなどのタレントやファッション系のモデルなどが発信を開始し、ファンとの交流などを行なうようになりました。

<svg width="50px" height="50px" viewBox="0 0 60 60" version="1.1" xmlns="https://www.w3.org/2000/svg" xmlns:xlink="https://www.w3.org/1999/xlink"><g stroke="none" stroke-width="1" fill="none" fill-rule="evenodd"><g transform="translate(-511.000000, -20.000000)" fill="#000000"><g><path d="M556.869,30.41 C554.814,30.41 553.148,32.076 553.148,34.131 C553.148,36.186 554.814,37.852 556.869,37.852 C558.924,37.852 560.59,36.186 560.59,34.131 C560.59,32.076 558.924,30.41 556.869,30.41 M541,60.657 C535.114,60.657 530.342,55.887 530.342,50 C530.342,44.114 535.114,39.342 541,39.342 C546.887,39.342 551.658,44.114 551.658,50 C551.658,55.887 546.887,60.657 541,60.657 M541,33.886 C532.1,33.886 524.886,41.1 524.886,50 C524.886,58.899 532.1,66.113 541,66.113 C549.9,66.113 557.115,58.899 557.115,50 C557.115,41.1 549.9,33.886 541,33.886 M565.378,62.101 C565.244,65.022 564.756,66.606 564.346,67.663 C563.803,69.06 563.154,70.057 562.106,71.106 C561.058,72.155 560.06,72.803 558.662,73.347 C557.607,73.757 556.021,74.244 553.102,74.378 C549.944,74.521 548.997,74.552 541,74.552 C533.003,74.552 532.056,74.521 528.898,74.378 C525.979,74.244 524.393,73.757 523.338,73.347 C521.94,72.803 520.942,72.155 519.894,71.106 C518.846,70.057 518.197,69.06 517.654,67.663 C517.244,66.606 516.755,65.022 516.623,62.101 C516.479,58.943 516.448,57.996 516.448,50 C516.448,42.003 516.479,41.056 516.623,37.899 C516.755,34.978 517.244,33.391 517.654,32.338 C518.197,30.938 518.846,29.942 519.894,28.894 C520.942,27.846 521.94,27.196 523.338,26.654 C524.393,26.244 525.979,25.756 528.898,25.623 C532.057,25.479 533.004,25.448 541,25.448 C548.997,25.448 549.943,25.479 553.102,25.623 C556.021,25.756 557.607,26.244 558.662,26.654 C560.06,27.196 561.058,27.846 562.106,28.894 C563.154,29.942 563.803,30.938 564.346,32.338 C564.756,33.391 565.244,34.978 565.378,37.899 C565.522,41.056 565.552,42.003 565.552,50 C565.552,57.996 565.522,58.943 565.378,62.101 M570.82,37.631 C570.674,34.438 570.167,32.258 569.425,30.349 C568.659,28.377 567.633,26.702 565.965,25.035 C564.297,23.368 562.623,22.342 560.652,21.575 C558.743,20.834 556.562,20.326 553.369,20.18 C550.169,20.033 549.148,20 541,20 C532.853,20 531.831,20.033 528.631,20.18 C525.438,20.326 523.257,20.834 521.349,21.575 C519.376,22.342 517.703,23.368 516.035,25.035 C514.368,26.702 513.342,28.377 512.574,30.349 C511.834,32.258 511.326,34.438 511.181,37.631 C511.035,40.831 511,41.851 511,50 C511,58.147 511.035,59.17 511.181,62.369 C511.326,65.562 511.834,67.743 512.574,69.651 C513.342,71.625 514.368,73.296 516.035,74.965 C517.703,76.634 519.376,77.658 521.349,78.425 C523.257,79.167 525.438,79.673 528.631,79.82 C531.831,79.965 532.853,80.001 541,80.001 C549.148,80.001 550.169,79.965 553.369,79.82 C556.562,79.673 558.743,79.167 560.652,78.425 C562.623,77.658 564.297,76.634 565.965,74.965 C567.633,73.296 568.659,71.625 569.425,69.651 C570.167,67.743 570.674,65.562 570.82,62.369 C570.966,59.17 571,58.147 571,50 C571,41.851 570.966,40.831 570.82,37.631"></path></g></g></g></svg>
この投稿をInstagramで見る

Kim Kardashian(@kimkardashian)がシェアした投稿

キム・カーダシアンの最初のInstagram投稿

そして、2016年には24時間で消える「ストーリーズ」が発表されました。

投稿された写真や動画が24時間で消えるストーリーズのリリースは周囲を驚かせました。すでにSnapchatが同様の機能である「My Story」をリリースしていたものの、「消えてしまう投稿に何の意味がある」と考える人が多かったのです。

しかし、ストーリーズの導入により10代がInstagramにどっと流入し始めます。それまでは完璧な投稿をしなければならなかったInstagramに、普段の日常を投稿できるようになったからです。

ストーリーズには豊富なカメラエフェクトもあり、目を過剰に大きくしたり、肌にキラキラを付けたりもできる点も投稿のハードルを下げました。ハレの日を投稿したいときはフィード、ごく普通の日常を投稿したいときはストーリーズ、個人的な連絡はDMという使い分けができる万能なSNSとして人気が上昇します。

そして2017年、「インスタ映え」が「2017ユーキャン新語・流行語大賞」を受賞します。これをきっかけに、流行に敏感な若者や芸能人以外にもInstagramが認知されていきます。10代女性を対象とした「2017年ティーンが選ぶトレンドランキング」でも、「Instagramのストーリーズ」や「インスタ映え」がランクイン。「ナイトプール」もランクインしていますが、インスタ映えのためにナイトプールで撮影することが流行った証ですね。

「2017年ティーンが選ぶトレンドランキング」のコトバ編で1位に(出典:マイナビティーンズラボ)
2019年にはストーリーズに「令和」スタンプが日本限定で登場(出典:Meta)

Instagramの勢いが加速するなか、ショート動画共有アプリ「TikTok」がリリースされます。2017年に日本でサービスを開始したTikTokは、女子高生を中心に急速に人気となり、「#だれでもダンス」や「#全力○○」などのダンスを真似て投稿する「ミーム」が誕生します。アプリを開くと自動再生され、フォローしたアカウントではなく「おすすめ」を視聴するスタイルも、当時としては画期的でした。

ヒットした機能は、他のプラットフォームにも模倣されるもの。2020年にInstagramにもショート動画「リール」が登場します。ちなみに、「YouTubeショート」は2021年に国内で開始しています。

リールの登場により、Instagramはフォロワー以外にリーチできるようになり、クリエイターやビジネスアカウントによる活用も増加します。すでにリリースされていたショッピング機能やレストラン予約機能も活性化しており、情報収集のために利用されるようになりました。

Instagramの利用時間のうちリールが占める割合は50%を超えており、動画視聴時間は前年比20%増とのこと。「リールで見たカフェに行きたい」といった消費行動も増えてきています。

  • 2010年10月:カメラアプリとしてiOSアプリを公開
  • 2011年:ユーザー数1,000万人達成
  • 2012年;Androidアプリ公開・Facebook社による買収(約10億ドル)
  • 2013年:動画対応開始・海外セレブが利用開始し、セルフィー(自撮り)投稿が増加
  • 2016年:ストーリーズ開始
  • 2017年:「インスタ映え」が流行語大賞受賞・10代への普及が加速
  • 2019年:ストーリーズに「令和」スタンプ登場(日本限定)
  • 2020年:リール機能登場・ショート動画機能・情報収集ツールとしての利用増加
  • 2024年:Threads開始
  • 2025年10月:15周年・月間アクティブユーザー30億・利用時間のうちリールが50%超

ユーザー数拡大につれ暗雲も立ち込める

ユーザー数が拡大し、10代の利用が増えるにつれ、若者のInstagram利用が問題視されるようになります。

2021年秋にはInstagramを運営するFacebookが、若者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼしているとされ、マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者は米国の公聴会に召喚されました。特に10代の若い女性が摂食障害や抑うつ状態に陥っているとの告発によるものでした。国内でも、出会いや自撮り(裸の写真を送るように強要する)に関する被害や闇バイトの勧誘など、DMが悪用されるケースが起きるようになりました。

Instagramは2018年頃からコメントのフィルタリングに取り組み、2021年からは10代のアカウントを守るための機能を拡充しています。2022年にはペアレンタルコントロールツールを開始、2025年1月にはティーンアカウントを開始しました。

ペアレンタルコントロールはユーザーが任意で設定するものですが、ティーンアカウントは13歳から18歳未満のアカウントに強制的に適用されます。現在、日本の該当ユーザーはすべてティーンアカウントに設定されているそうです。ティーンアカウントでは、暴力的なコンテンツや不健全なコンテンツが制限され、見知らぬ人からの接触を制限するための機能や利用時間の管理機能が適用されます。

ティーンアカウントはヌードが含まれているDMにぼかしがかかります(出所:メタ)

10代ユーザーだけではなく、大人にも問題が起きています。2023年頃からSNSを介した「SNS型投資詐欺」や「ロマンス詐欺」が社会問題として注目されるようになりました。警察庁によると、2024年1月~11月に起きたSNS型投資・ロマンス詐欺の被害額は約1,141億円にも上ります。

SNS型投資詐欺は男性がFacebook、女性はInstagramで最初に接触されることが最も多く、ロマンス詐欺はマッチングアプリに次いでFacebookとInstagramが使われています。

特にSNS型投資詐欺では、有名人になりすました詐欺広告が入り口となることもあり、Metaは偽広告の被害者達やなりすまされた著名人により訴訟を起こされています。

Instagramの機能を活用して安全な利用を

Metaは現在AI領域に力を入れており、Instagramに関してはレコメンドの精度を向上させることに成功しているとのこと。今後も、レコメンドのアルゴリズムをユーザーが管理できる機能、広告効果の改善、およびクリエイティブ制作にAIを活用していくそうです。

Instagramアカウントを利用するテキストSNS「Threads」も好調で、2024年12月には月間アクティブユーザー数が3億人、日間アクティブユーザー数は1億人を超えています。今後Threadsが単独アプリとなり、テキストSNSの首位の座を奪うことも予想できます。

こうして振り返ると、Instagramはカメラアプリから年代を超えた大規模なSNSへと進化したことを改めて感じます。自慢したい出来事はフィード、日常はストーリーズ、情報収集はリールなど、皆さんも自然に使い分けつつInstagramに滞在しているのではないでしょうか。

2025年はオーストラリアで16才未満SNS禁止法が施行されることが決定するなど、SNSには一気に逆風が吹く年となりました。しかし、たわいない日常を共有して笑い合ったり、グルメやファッション情報を得たりとSNSにはたくさんの魅力があります。Instagramの安全な利用法を探りつつ、今後を見守っていきたいと思います。

鈴木 朋子

ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー 身近なITサービスやスマホの使い方に関連する記事を多く手がける。SNSを中心に、10代が生み出すデジタルカルチャーに詳しい。子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」としても活動中。著作は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)など多数。