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「木のおもちゃ」再評価 東京おもちゃ美術館と「木育」
2025年7月15日 08:20
昨今、各分野で木が再評価される兆しが強まっています。例えば、2020東京五輪では木をふんだんに使った新国立競技場が建設され、以降も都内各所で木造建築が増えています。
木が注目されているのは建築分野だけではありません。教育分野でも、木のおもちゃを再評価する動きが強まっています。
林野庁や環境省が「木育(もくいく)」を推進し、それに倣って地方自治体もさまざまな施策を打ち出すようになりました。赤ちゃんの頃から木に親しむウッドスタートという事業も全国に広がっています。
木育おもちゃから大人も楽しめる世界のゲームまで幅広く集められている東京おもちゃ美術館は、1984年に東京都中野区で誕生。2008年に新宿区へと移転し、現在は親子連れのみならず老若男女が来館しています。
東京おもちゃ美術館の館長を務める山田心さんに、木のおもちゃの魅力や木育、東京おもちゃ美術館の取り組み、木育やウッドスタートという行政が推進する事業について話を聞きました。
東京大空襲でも残った奇跡的な校舎をミュージアムに
――まず美術館の紹介からお伺いしたいと思います。
山田:東京おもちゃ美術館は公立とか企業が運営するミュージアムではなく、私設のミュージアムです。前々館長である多田信作が1984年に東京都中野区で開館したのがはじまりです。
多田には「人間が初めて触れるアート作品は、おもちゃではないか?」という理念があり、その理念に基づいてミュージアムを立ち上げました。中野で13年ほど活動した後、2008年に新宿区へと移転しました。
同館の建物は、もともと新宿区立四谷第四小学校の校舎でした。同校は少子化の影響で廃校が決定したのですが、歴史ある学校だったので地域住民の方々は廃校になることは仕方がないと受け止めつつも、校舎には思い出があるし、地域のシンボルだから残してほしいと新宿区に保存を要望していたのです。
要望に対して、新宿区は「校舎を残すには維持費がかかるし、残すための理由も必要になる」と回答しました。
この回答に対して地域住民が校舎を残す案として考え出したのが、校舎をコミュニティセンターとして活用することでした。ただ、小学校の校舎は大きく、コミュニティーセンターという用途だけでは使いきれません。そこで、自分たちと一緒に小学校の校舎を残してくれるような活動をする団体を探したのです。
地域住民は、できれば社会的な活動をしているNPOのような団体・組織に共同運営をお願いしたいという希望があったようです。なぜNPOのような団体を希望していたのかといいますと、企業に貸すと中で何をやっているのかが見えにくくなることが心配だったからです。
例えばベンチャー企業に貸すということも考えられますが、企業だと校舎を一般開放することがありません。そのため、地域住民が立ち入れる建物ではなくなってしまいます。
それでは自分たちの愛した校舎を残す意味がありません。残したいのは自分たちの思いが詰まった校舎であり、いつでも気軽に足を運べるような場所なのです。
そのほかにも、子供たちがいなくなった校舎に子供たちの声がまた戻ってきてほしいという願望もありました。おもちゃ美術館は、主に子供たちが集まる施設ですから、その要望に合致しています。
――移転前と移転後で、おもちゃ美術館の活動が変わった点はありますか?
山田:中野区にあった旧おもちゃ美術館はとにかく狭かったので、「おもちゃ美術館を移転させませんか?」というお誘いは当館にとってもありがたい話でした。おもちゃ美術館は、収蔵品が約10万点あります。中野区時代は収蔵しきれない状態になっていました。だから常に広い建物を探していて、いろんな自治体に声をかけていました。
検討を重ねた結果、この校舎が私たちの描く美術館のイメージもマッチしていたんです。校舎は昭和10年に建てられた歴史のある校舎ですが、太平洋戦争の東京大空襲でも爆弾が落とされずにそのまま残りました。そうした奇跡的な校舎ということも含めて、すごくいい建物だなと思い、ミュージアムに相応しい歴史と雰囲気が決め手になって移転しました。
ただ、移転に際して自治体や地域住民から協力金のようなものをいただくとか、移転の費用を補填してもらうという話はありません。費用はすべて自分たちで賄っています。
同館の建物は新宿区が所有しているので家賃が発生します。そのため、その費用も捻出しなければなりません。私たちの美術館は公営ではないので、運営費を税金で賄うことはできません。大企業が資金援助をしているわけでもないので、入館料をはじめ自分たちでちゃんと稼いで運営しています。
現在の場所へ移転して、建物の規模は10倍ぐらいに広がりました。移転によってミュージアムの規模が大きくなったので美術館の活動内容も一気に幅広くなり、それに伴って工作教室や研修などの開催も増えました。
意識しないどころか「木育」という言葉すら知らずに取り組んでいた
――なぜ、前々館長はおもちゃの美術館をやろうと考えたんでしょうか?
山田:おもちゃ美術館の理念は美術教育からスタートしています。前々館長は子供たちに絵を教えていたのですが、幼稚園の先生や図工の先生たちと一緒に子供たちにどうやって絵を教えるかという研究会のような活動もしていました。
そのため、当初は芸術教育研究所という名称で活動をしていました。だんだん活動の輪が広がっていくなかで、幼稚園や保育士向けの研修会もするようになりました。そして先進事例を学びにヨーロッパへ研修に出かけます。
ヨーロッパ視察で気づいたことは、子供たちが美しいおもちゃで遊んでいたことでした。一方、当時の日本ではプラスチック製やソフトビニール製のおもちゃが全盛です。おもちゃで幼児教育をするという概念は、ほぼ皆無です。当然、おもちゃは教育という観点で制作されていません。
ヨーロッパで、子供が初めて触れるアート作品はおもちゃなのだから美しいおもちゃを与えなければならないことに気づき、芸術教育研究所の付属施設としておもちゃ美術館を開館させたのです。
――最近は、子供の教育にも繋がるということで、知育玩具が認知されるようになっています。
山田:おもちゃ美術館が移転してきた当初、まだおもちゃを使った教育という考え方は社会全体に広がっていません。なにより、木のおもちゃは種類も今ほど多くありませんでした。
当然ながら木育という言葉もありません。そうした環境下において、私たちがこだわったのはコミュニケーションミュージアムという点です。
おもちゃ美術館には木のおもちゃがたくさんありますが、意識的に木のおもちゃを取り揃えているわけではありません。アナログなおもちゃを大事にする方針があり、そうした方針を貫いていると自然に木のおもちゃが多くなるんです。
なぜアナログなおもちゃを大事にしているかといえば、人と人とが交流する、話をすることを重要視しているからです。そのためにはどんなおもちゃが必要になるだろうかと考えました。
そこで出た答えが、アナログなおもちゃでした。アナログのおもちゃは、手を動かさなければ遊べません。コンピューター相手ではないので、必ず人と人とのコミュニケーションが生まれます。そういう意識でおもちゃを取り揃えていったわけですが、それでも木育をしているという意識はありませんでした。
移転2年目ぐらいに林野庁職員が一般来館者として立ち寄ったのです。その時に「あなたたちが取り組んでいることは木育なんです」と言われました。最初は「木育ってなんですか?」と思っていました。
改めて考えてみると、おもちゃで遊ぶことは木に触れることでもあり、その木のおもちゃで遊んでいるうちに木と接して育つことになると理解するようになりました。
私たちも木という素材が子供たちの五感に響くことは十分に熟知していたので、木育がうちの取り組みと親和性があることを理解して、それから林野庁と一緒に木育を推進するようになりました。そこから15年ぐらいが経過しています。
――木育が広がることと同時進行で、おもちゃ美術館が全国各地で開館しています。
山田:東京おもちゃ美術館は、これまでにも企業の営業所が設けるキッズコーナーなどの監修をしています。例えば無印良品やアウディなどの店舗には、おもちゃ美術館が監修した木のおもちゃのプレイコーナーがあったりするんです。ただ、それは本当に小さなプレイコーナーで、もうちょっと大きな規模だと移動型おもちゃ美術館という活動もしています。
移動型おもちゃ美術館は小学校の体育館や公民館にプレイコーナーを設置して、子供たちに木のおもちゃを体験してもらうという試みです。
最近は木育キャラバンと称して各地を巡回することも多いんですが、そのような活動を全国各地で20年にわたって続けてきました。そうした活動を継続していると、「週末だけといった期間限定ではなくて、常設のミュージアムでできませんか?」というお問い合わせをいただくことも増えてきました。
そうした思いを抱く人たちから「うちの街にも、おもちゃ美術館をつくりたい」という話が届き、移動型おもちゃ美術館の活動から派生する形で全国におもちゃ美術館が開館していくことになりました。
最初の姉妹館は、2013年11月に誕生した沖縄県の「やんばる森のおもちゃ美術館」(沖縄県国頭村字辺土名 1094-1)です。やんばるの森おもちゃ美術館は、今から12年前に村役場の人からおもちゃ美術館をつくりたいという話をもらいまして、その人は森林を所管する部署の職員だったんです。
国頭村(くにがみそん)は沖縄県で唯一の森林だけを専門的に担当する部署がありまして、首里城に使われた木材は国頭村で伐り出されたものなんです。そうした背景があるので、国頭村は林業に誇りを持っていますし、村民も森林や木に親しみを持っています。
沖縄というと綺麗な海をイメージする人が多いと思いますが、国頭村は豊かな森林を保有し、木材関連の産業に従事する人も多く、木を大事に扱っています。それを観光客にも伝えたいし、地域で暮らす人にも受け継いでもらいたいと考えているのです。そのためにも未来を担う子供たちに木のよさを伝え、誇りを持ってもらいたいと考えているようです。
観光客はアクティビティで森林に入り、森林浴を体験します。また、シーカヤックでマングローブを見ることもあるでしょう。ただ、楽しんで帰ることも木を知る上で大事なことですが、林業の重要性や理解を深めることにはつながりません。
おもちゃ美術館では、実際におもちゃを手に持って遊びますし、そもそも建物の床や柱も木を使っています。
国頭村で生まれ育った子供たちは普段から祖父母や両親など林業を間近で見る機会が多く木のよさを知っていますが、ミュージアムができたことで林業や木工業、なにより家業に誇りを持つことができます。また、観光客は林業を間近で見る機会は少ないのですが、ミュージアムがあることで木のよさを体系的に伝えることができます。
国頭村が端緒となり、その後も全国各地でおもちゃ美術館が開館していきました。現在は東京おもちゃ美術館を含めて全国に12館あります。
東京おもちゃ美術館は年間で約13万人の来館者がいます。東京おもちゃ美術館のある四谷は少子化の影響で小学校が廃校になっていますから、近隣に子供は少なく、来館者の多くは遠方から来ます。
全国に姉妹美術館が開館することによって、おもちゃ美術館で子供を遊ばせたいけど、東京まで行けないという人たちにニーズに応えられるようになりますし、東京おもちゃ美術館の活動がクローズアップされる機会も増えました。なによりも、私たちが長年にわたって取り組んできた木育の普及にもつながっています。
赤ちゃんの頃から木に親しむ「ウッドスタート」
――最近は子育て支援のキーワードにウッドスタートという言葉が出てきました。まだ出始めたばかりの言葉なので耳にしたことがある人は少ないと思いますが、それでも自治体がウッドスタートを呼びかけるようにもなっています。
山田:ウッドスタートを最初に始めたのは、東京おもちゃ美術館が所在している東京都新宿区です。子供たちが早期から木に親しめる環境にしたいと思い、それには木のおもちゃをプレゼントすることだと考えたのです。2013年頃に新宿区長と話す機会がありましたので、そこでウッドスタートを提案しました。
ウッドスタートという言葉は、広く知れわたった言葉にはなっていません。そのため、どんなことをするのかが伝わっていません。
少し話はそれますが、多くの自治体はブックスタートに取り組んでいます。ブックスタートとは、赤ちゃんに絵本を贈り、早期から本に親しんでもらうという事業です。小さい頃から本に接していると、本を読む習慣がつくという考え方に基づいています。
ウッドスタートは、ブックスタートの木バージョンと説明しています。つまり、ウッドスタートとは赤ちゃんの頃から木のおもちゃで遊び、木のある環境を整えることで木に親しむという取り組みです。
今、日本の木工業者は後継者不足に悩まされています。その根本は木に関連する仕事が少なくなっているからです。最近は家具を購入する人も減っていますし、家具職人も減っています。住宅も鉄やコンクリートといった建材を使うようになっています。
林業や木材関連産業が衰退すると、林業や木材加工の経験・技術が継承されなくなります。その結果、国内の木は伐採されなくなり、山林は放置されて荒廃が一気に進みます。
ウッドスタートで子供たちに木のおもちゃをプレゼントすることは、子育て支援になるのと同時に国内の林業・木材加工業の活性化にもつながるのです。そうしたwin-winの関係を築けるので、自治体がどんどん取り入れるべきだと考えています。
ただ、ウッドスタートを開始するにあたり、問題がありました。それが新宿区に森林がないことです。そこで新宿区とカーボンオフセットで提携している長野県伊那市の森林で木を伐採・加工して、おもちゃを制作しました。
新宿区と伊那市が連携することで、伊那市の林業が産業として守られ、林業・木材加工の技術も継承されていきます。また、新宿区で生まれ育った子供たちも木に親しむことができますし、伊那市に親近感を持てます。
これまでウッドスタートのような事業を始めたいと潜在的に思っていた自治体は多いようですが、そういった自治体の多くは東京・大阪の都市圏にあります。そのため、森林がなくウッドスタートを始められなかったのです。
しかし、どこの自治体でも姉妹都市といったような交流のある都市を持っています。自治体間で連携することによって、都市部の自治体でもウッドスタートのような事業を始められるんです。新宿区から始まったウッドスタートは、全国で63の自治体が取り組む事業にまで広がりを見せています。
――最近は学校でもプログラミングを習う時代になっています。幼少期に木のおもちゃのようなアナログなもので遊ぶより、早くからパソコンで遊んで操作に慣れる方がいいという意見もあるかと思います。
山田:木のおもちゃで遊ぶことは、ITやAIといった最新技術を否定しているわけではありません。そもそも木のおもちゃと対立するような関係ではないと思っています。
木のおもちゃが必要なのは、ハイハイしかできない赤ちゃんや言葉をうまく話せない幼児、まだ手指をうまく使えない段階の子供たちです。そういう月齢の子供たちは、ただ単におもちゃを押して動かすだけとか、投げる・触るだけの遊びを楽しんでいます。
そういう五感、特に視覚・聴覚・嗅覚・触覚などをフルに使って遊ぶことは発達にとても重要です。そうした遊びのステップを踏んでいくことで、その次にあるプログラミングへと進んでいけるのです。
東京おもちゃ美術館は、木のおもちゃを取り揃えていますが、別に木のおもちゃだけを推奨している団体ではありません。その子にとって必要なおもちゃを提供することが役割です。その子が求めているおもちゃが、もしかしたら積み木ではなくて、ブロック的なものかもしれません。おもちゃではなく楽器かもしれません。砂場遊びやボール遊びかもしれません。
身近で始めるウッドスタートで親も学ぶ
――自治体からはウッドスタートに取り組みたいけれど、何をしたらいいのかわからないという意見も出そうです。ウッドスタートを始めるには、どうしたらいいのでしょうか?
山田:東京おもちゃ美術館は、おもちゃのミュージアムなのでどうしてもおもちゃが中心になります。しかし、ウッドスタートという取り組みで考えるなら、特におもちゃにこだわらなくてもいいと思います。
木の球でもいいですし、いわゆる素材遊びとして木の枝でもいいと思います。それこそ木じゃなくて、草や葉でも構いません。親子で森に出かけるとか、近所に森がなくても公園の花壇や植栽といった身近なところからウッドスタートを始めてもいいでしょう。自治体がウッドスタートに取り組むにあたり、最初から大掛かりなことを考えずに身近なところから始めてみるだけでも十分に意味があります。
木のおもちゃは高価な物が多いので、木のおもちゃを贈ることをウッドスタートにしてしまうと、始めるハードルは高くなってしまいます。ただ、木のおもちゃは高価ですが、簡単に壊れません。50年以上前におじいちゃん・おばあちゃんが遊んでいたおもちゃを孫が使うことはヨーロッパでは珍しくないんです。プラスチック製のおもちゃやテレビゲームはとても50年は持ちません。そう考えると、木のおもちゃはコスパがいいんです。
とはいえ、木のおもちゃで遊んでいたおじいちゃん・おばあちゃんが周りにいないこともあります。そういう時には、まずはおもちゃという形ではなく、山や川に行って木や木の枝、石を拾って持って帰ってくるだけでもいいでしょう。
持って帰ってきた木や石でも十分におもちゃとして遊べます。もし一手間を加えられる余裕があるならヤスリをかけてあげたり、マジックで色を塗ったりする。そうした加工でも立派なおもちゃになります。
そうやって木で遊んでいるうちに、少しずつ大人側も学んでいきます。例えば、もっと枝を拾ってきて接着剤でくっつけてみようとか加工のアイデアが出て、親子で一緒にDIYのような流れでおもちゃを製作する。それだけでも子供にとって楽しい遊びです。
そうした加工時に、親が「この木とこの木は色が違うね。なんでだろうね?」「この葉っぱは、どこから落ちてきたのかな?」といった具合に声をかけられるかがポイントになってきます。親の声がけによって、子供が木や葉に興味を広げられるからです。
木育は木のおもちゃを買う・与えるという意味ではハードですが、子供たちが興味を持つような声がけをするという面ではソフトです。そのソフト面が重要になるのです。木育というと子供の教育とイメージするかもしれませんが、実のところ親の力が試される、つまり親が学ぶ場でもあります。
ただ、これは木育に限った話ではありません。食育なども一緒です。大人が食材や食事のことをわかっていないと子供に教えられません。ブックスタートだって、大人が本を読んでいなければ子供に読み聞かせることはできませんし、子供が積極的に本を読む習慣は身につきません。
――遊びと聞くと子供のイメージが強いのですが、大人も一緒に遊び、そこから学んでいくということですね。
山田:東京おもちゃ美術館は美術教育が源流なので、保育士や幼稚園の先生向けの研修を夏にたくさん開講しています。年間3,000人ぐらい来るような講座もありますが、その中で今すごく多いのが都会型の木育をやりたいというリクエストです。
保育園・幼稚園でも木育を取り入れる動きが活発化しているようですが、近くに森がないのでどうしたらいいか? という悩みが多いんです。森がなくてもお散歩コースの中にある公園や草むらのような、子供たちが木に興味を持ってもらえるポイントを見つけることはできるはずです。
その公園にどういう木がありますか、どういう葉っぱがありますかとか、どういう虫がいますかとかいうのを先生が調べて、子供たちに話をする。そうすると、この花があるからこの虫が来る、この虫が来るから今度は動物が来るといったように話が広がっていきます。これまで何となく通り過ぎていた公園が、実は木育の場だということが再発見できるんです。
――今後、東京おもちゃ美術館をこんなミュージアムにしたいといった考えがあったら、教えてください。
山田:おもちゃ美術館はうちの看板事業ですが、休館日の中で難病児の子供たちを招待する日を年に1~2回設けています。私が館長に就任してから日は浅いのですが、ゆくゆくはそういった分野の事業を広げていきたいと考えています。もしかしたら難病児だけじゃなくて、高齢者にも広げていくかもしれません。
なぜなら、私は日本を遊びの国にしたいという思いがあるからです。その象徴をおもちゃ美術館にしたいのです。遊びというのは、もちろんおもちゃも含まれますが、それ以外にも絵を描くとか音楽を演奏するとか、子供だけではなく大人も好きな遊びがあります。
今、東京おもちゃ美術館でも工作に力を入れていますし、音楽系のイベントも開催しています。この遊びの幅をどんどん広げていって、自分の人生に潤いをもたらしてくれるようなミュージアムにしたいのです。
それは来館して利用者として楽しむこともできますが、うちの美術館はおもちゃ学芸員というボランティア制度があります。今、登録者は400人ほどですが、毎日20人ぐらいの学芸員が自分の好きな遊びを来館者に伝えています。自分が教えた遊びを子供たちが楽しんでくれたらおもちゃ学芸員にとってこのうえない喜びになります。
こうした遊ぶ人と遊びを教える人が、遊びを通じてお互いが楽しくなる。そんな循環や環境が生まれる美術館を目指しています。
東京おもちゃ美術館 概要
開館時間:10時~16時(15時30分最終入館)
休館日:毎週木曜日(木曜日が祝日の場合は開館。翌日振替休館あり)、年末年始、メンテナンス休館
料金(オンラインチケット/窓口料金):おとな1,100円/1,300円、子供800円/1,000円、6カ月未満無料
再入館:平日可・土日祝日不可











