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iPodと私。こんな風に使っていました

「iPod touch」が、在庫がなくなり次第販売終了となり、iPodが約20年の歴史に幕を閉じます。iPod touch以外のモデルも含め、かつてiPodは多くの人に愛用された音楽プレーヤーであり、それはImpress Watchのスタッフも例外ではありません。そこで、各スタッフがどのモデルを、どのように使っていたかを振り返ってみたいと思います。

Impress Watch編集部内でiPodの利用経験がある人は5人中5人。母数は少ないとはいえ、世代や性別を超えて利用経験者率100%というところに、iPodのすごさを感じざるを得ません。読者の皆さんもiPodをまだ手元に残している方は、引っ張り出して触ってみると、いろいろ思い出がよみがえってくるかもしれません。

容量だけで選んだ「iPod classic」(編集部:加藤)

私が使っていたのは「iPod classic(120GB)」です。発売日を調べてみると2008年9月とのことなので、購入したのは30代前半の頃ですね。この頃には「iPod nano」など小型モデルもありましたが、「容量がでかいことはいいことだ」という単純な理由で選んだ記憶があります。

また私は、電車での移動で音楽を聴くことがほとんどなく、常に持ち歩くわけではないので、サイズは特に気にしていませんでした。ではどんなシーンで使うのかというと、クルマ用です。FMトランスミッターを介して、車内で音楽を再生していました。

iPod導入前は、CDを20枚ほど入るケースに入れて、車内ではCDを取っ替え引っ替えしながら再生していました。オートチェンジャー搭載のカーオーディオを導入したこともあります。

iPod導入後には、クルマの音楽環境が大きく変わりましたね。iPodに、容量を気にすることなくたくさんの音源を詰め込んでおけば、「そういえば懐かしのあれ聴きたいな」となってもすぐに再生できます。持ち出すCDケースのCDを入れ替えるという作業ももちろん必要ありません。

iPhone導入後はお役御免となりましたが、久々に触ってみると、クリックホイールの「カチカチ」音が懐かしいです。

海外オタ活の強い味方だった「iPod touch」(編集部:西村)

大学入学の記念にバイト代で買った「iPod touch」が、唯一使ったことのあるiPodです。2010年のことなのでおそらく第3世代ですかね。

学生時代の筆者は3カ月に1回の頻度で韓国に行くK-POPオタクだったのですが、空港でポケットWi-Fiをレンタルし、iPod touchをWi-Fi接続してスマホのように使っていました。

2010年だと大学生でiPhoneを持っている人はほぼいなく、筆者も使っていたのはドコモのガラケー。海外でガラケーを使用すると通信料が膨大になると聞いていたので、ポケットWi-FiとiPod touchを通信手段にしていました。

通信手段がなければ、ないなりの海外旅行の楽しみ方というものがあると思いますが、筆者が韓国に行っていたのは推しが出演する音楽番組の観覧やサイン会、コンサートに参加するため。

特に音楽番組やサイン会は現地での情報収集が必須なので、インターネット接続ができるiPod touchがとても役に立ちました。オタク友達は住んでいるところがバラバラだったので、基本は現地集合。当時はまだLINEがなかったので、「カカオトーク」をインストールして連絡を取っていたと記憶しています。

日本でも自宅Wi-Fiと接続してスマホのように使い、ガラケーからスマホに機種変するのはまだちょっと怖い……と思っていた時期に、貴重な役割を果たしてくれた存在です。肝心の実機は、数回の引っ越しで行方がわからなくなってしまいました。

音楽生活が一新した「初代iPod」(編集部:清宮)

購入当時の第2世代iPod(左)と初代(2002年撮影)

一番思い出が強かったのはやはり初代iPodです。当時、いろいろなシリコンオーディオ機器が出ていましたが、いずれも記憶容量32MBや64MBと少なく、音楽ライブラリがMP3で10GBを超えていた筆者の音楽ライブラリはまったく収まりませんでした。その頃は基本的にCDを購入したらMDに書込んでMDプレーヤーを持ち歩き、通勤時に音楽を聴いていました。職場や自宅などPCがある環境ではCDをMP3にリッピングして聞く、という感じです。

しかしMDを毎日10枚程度持ち歩いているとさすがに面倒で、他の曲を聴きたいと思ったときにMDを入れ替えるのも手間です。HDDを搭載したデジタルオーディオプレーヤーがあればいいのに、などと思っていたところに韓国HanGo ElectronicsのポータブルMP3プレーヤー「Personal JukeBox」なるものが登場し、飛びつきました。

念願のHDD搭載で、初期の容量は4.86GB。HDD交換が可能でしたので12GBのHDDに交換して使用していました。手持ちのライブラリはほぼ丸ごと(全部は無理でした)記録でき、もうMDを何枚も持ち歩かなくてもよいという夢のような環境でしたが、いかんせん、本体が大きいというデメリットもありました。また、価格が税別79,800円ととても高価で、あまり売れず、知名度も低いままでした。

Personal JukeBoxと第2世代iPodの比較(2002年撮影)

そんな中、2001年10月、唐突にアップルから発表されたのが、初代「iPod」でした。迷わず購入しましたが、当時としては衝撃的なサイズで持ち運びにも苦にならず、なによりかっこいい。物理的なダイヤルをクルクル回して操作するのも、大量のライブラリを閲覧するにとても理にかなっていたインターフェイスだと思いました。クルクル回してカチッと選ぶインターフェイスは今でも忘れません。

第2世代iPod(左)と初代(2002年撮影)

ただ、初代iPodは容量が5GBと、シリコンオーディオプレーヤーよりは多いものの、筆者的には物足りないものでした。また、Windowsにも対応しておらず、Windowsで利用するにはサードパーティ製のソフトウェアが必要でした。

しかし、2003年には正式にWindowsに対応した「iPod for Windows」として第2世代iPodが発売。容量も最大20GBになり、初めてHDD交換などをしなくても筆者のライブラリが全て収まる環境を手に入れました。これで聞きたいときにどんな曲でも聴けます。

その後、2005年に発売された第5世代iPodを購入。すでに容量は60GBで筆者のライブラリは余裕で収まる容量になりました。2007年には容量120GBの「iPod Classic」を購入。120GBのHDDモデルを選んだ理由は、その頃手持ちのCDはすべて「Apple Lossless」でデータ化していて、それをそのままiPodで聞きたかったからです。ロスレスでの容量は100GBと少し、というところでしたので全ライブラリが収まりました。

最後に購入したiPod Classic。106GB使用となっています。現在のライブラリは140GB近いのでもう入りません
さすがに裏側は傷だらけです

しかし、その後はiPodを買うことはありませんでした。容量がひとまず十分で、買い換える必要がなかったのと、恐らく多くの人と同じだと思うのですが、全てがiPhoneに統合されていったからです。

“ポタアン”と共に時代を駆け抜けた(編集部:太田)

最初に入手したのは初代のスクロールホイールのモデルで、FireWire接続でした。誰かから譲ってもらった気がしますがすでに覚えていません。当時はMacユーザーだったこと、ウォークマンは幼少期からカセットテープ、MD、CDと使っていたので、ポータブルなオーディオとして自然な流れでiPodを使っていた気がします。WAVファイルはストレージに対して大きく、でもMP3は音質が……と悩ましかったですね。FLACが再生できなかったことは後の時代もずっと不満でした。あとこの初代モデルは前面がわりと角張っており、ジーンズのフロントポケットに入れて使っていたらiPodのシルエットに沿って色落ちしてしまい「ダセぇ!」と思ったのを覚えています。後継モデルはほかにも買った気がしますが、覚えているのはクリックホイールのiPod miniと、最後はペラッとした形状のiPod nano(第3世代)だったと思います。iPod nanoは最終的に、車で使いたいという家族にあげたと思います。

2004年~2005年頃でしょうか、iPod mini以降は、オーディオ的に言うなら「トランスポーター」として使っていました。当時は異端で奇異な目で見られていた、ヘッドホン・イヤホン用に専用のポータブルなアンプを用意するというものです。「iPodからラインアウトを出してポータブルアンプで聞く」という“ポータブルオーディオ”の黎明期で、このスタイルはAndroidウォークマンとの組み合わせを経て、Chordの「mojo」+「poly」に移行するまで続けていました。ただ、なにがなんでもいい音を! というギラギラしたものはシーンの発展に反比例して薄まっていき、「老兵は去るのみ」とばかりに最近HibyのR6を中古で買って単騎スタイルに戻りました。

2000年代初頭は個人輸入でALOのラインアウトDockケーブルやRSAのポータブルアンプ「SR-71」を入手して、ケーブルもいろいろ交換してあれやこれやと楽しんでいました。最終的には、須山歯研さんで耳穴の型を取り(当時は裏メニューだった気がする)、自分でアメリカに型を発送、UEのカスタムイヤホンを個人輸入で発注するとかして、行くところまで行ってしまった感がありました。多分2010年頃だったと思います。当時は国内から買えなかったので、そうするしか方法がなかったのですが。カスタムイヤホンはその後も2017年にJH AudioのLolaを買いましたが、時代は変わり、国内から注文できました。

初開催のヘッドホン祭やポタ研にも行きましたし、ヘッドホンやポータブル環境におけるバランス接続が注目され始めたのもこの時期でした。とにかく熱量と模索の時代で、楽しかったですね。今はもうMacユーザーではなくなりiPodも手元には残っていませんが、iPod+ポータブルアンプで駆け抜けたシーンの熱気だけは、昨日のことのように覚えています。

2011年頃の様子。iPod nano、ALOのラインアウトDockケーブル、RSAのSR-71B、4ピンバランス接続ケーブル、UE 18 Pro。アンプへの入力はアンバランスですが、当時バランス出力ができるポータブルな装置はかなり限られていました。アンプからの出力はすでにバランス接続です。これでも多少のバランス接続の効果はあり、定位が良く、ピンポン玉がパチンコ玉になったかのような点音源になったのが印象的でした

革命的だった初代iPod nano。予想された終了(編集部:臼田)

初代iPod nano

AV Watchの担当として、ほぼすべてのiPodを使い、レビュー記事も書いてきて、個人的な思い出だけでなく、iPodは「ほぼ職業人生そのもの」みたいなところもあります。ただ、「iPod終息で寂しいか?」と問われると「そうでもない」というのが正直なところ。新製品も少なくなっていましたし、以下の記事は7年以上前のものですが、その時でもすでにアップルからも“手仕舞い感“が出ており、「そろそろ終わりかな?」とiPod誕生からの経緯をまとめたと記憶しています。

AV WatchのiPod記事

製品として一番インパクトがあったのは、初代「iPod nano」(2005年)でしょうか。フラッシュメモリベースになり、その軽さと小ささ、それ故の使いやすさで、価格も当時としては市場破壊的に安かったですね(2GBで21,800円)。

隙がない音楽プレーヤーとしてiPodの地位を決定づけた製品だったと思います。ほぼ同日に発表したソニー「ウォークマンA」がソフトウェアの面で大きな失敗となったこととあわせて、「音楽ならiPod」という印象を強く植え付けた製品だと思います。

個人的にも第5世代まではiPod nanoシリーズを使い続けて、「小さくて軽い」「ただしディスプレイで選曲もできる」といったプレーヤーの使いやすさが気に入っていました。iPod touchが出てからはtouchに移行し、第1世代は音質がイマイチだったのですが、第2世代以降は音質も満足いくものになり、愛用していました。また、ボロボロになったiPod touchのシリコンケースを使っていて、その触感をいまもよく憶えています。

その後、他社のプレーヤーを使っていたこともありますが、ストリーミングの時代になってからはiPhoneに集約しました。同様に多くの人の音楽プレーヤーが、専用機のiPodからスマートフォンになったのだろうと思います。そういう意味で、iPod終了は全く意外ではありませんでした。

せっかくなので「いつか来る終了」の日に備えて貯めていた、iPodコレクションを披露しておきたいと思います。ありがとうございました。