文具知新

芯がむき出し?! でも乾かないゼブラのマーカーペンが画期的

今回ご紹介するのは、ゼブラのノック式水性カラーペン「クリッカート」(132円)。いわゆるマーカーペンやサインペンとも呼ばれるアレです。なんと、アレがノック式になっているんです。それって、めちゃめちゃすごくないですか?

と言っても、文具にそれほど興味のない方からすると「何がすごいの? ボールペンなんてむしろノック式の方が多いよね?」と思われるかもしれませんので、少し説明させてください。

ノック式のペンは芯先が常に外気にさらされている

実はノック式のペンって、基本的に芯がむき出しなんですね。試しにちょっと手元にあるボールペンを手に取って、ペン先側からのぞいてみてください。芯が収納状態の時でも、ペン先の穴は開いたまま。つまり、筆記に使う芯の先端が常に外気にさらされている状態であることがお分かりいただけるかと思います。

ノック式のペン、実は芯がむき出し状態

そもそもが乾きにくい油性インクや、固体の状態で芯に充填されているゲルインクならばそのことは問題になりません。でも、水性インクの場合は話が別です。蒸発によってインクの水分が失われれば、すぐに書けなくなってしまいます。なので、水性ペンはほとんどが気密性の高いキャップ式なのですが……マーカーペンのフタを閉め忘れて、あるいは閉め方が甘くて、カッスカスになってしまった! という失敗、誰しも一度はあるはずです。

インクが空気中の水分を吸収して乾燥を防ぐ

乾燥に弱いはずの水性マーカーなのに、クリッカートはキャップがなく、ノック式の油性ボールペンやゲルインクボールペンと同じ構造です。ペン先が収納状態であっても常に空気に触れている状態、むき出しです。それなのに、まったく乾くことがなく、いつでもスラスラと書けるんです。初めて手にした時には、本当に度肝をぬかれました。

ゼブラによると、その秘密は独自開発の「モイストキープインク」にあるとのこと。なんでも空気中の水分を吸収する、吸湿性のある成分を多く配合しているんだとか。

インクが空気中の水分を吸収し乾燥を防ぐ

空気中の水分を吸収するって、除湿剤みたいなこと? と思ったら、温度の変化によって吸収だけではなく蒸発もして適度な状態を保つんだそう。たしかにシャバシャバになり過ぎても困りますもんねって、なんだそれ、すごすぎる……! まるでインクに知性でも宿っているかのような有能ぶりです。

同社の試験では、気温20℃、湿度60%の条件で、なんと約1年(ペン先収納状態で52週)後でもかすれなく書くことができたんだとか。「私はヘビーユーザーじゃないから引き出しにしまっている時間の方が長いかも」という方にとっても安心ですね。

キャップがないって便利だな~!

そして実際に使ってみると、改めてキャップがないノック式の筆記具の良さをしみじみと感じます。まず、思い立ったら片手ですぐに使い始められる点。そして、外したキャップを紛失する心配がない点です。

片手でサッと書き出すことができて便利!

カラーペンは複数色を同時に使い分ける機会も多いですから、キャップが混ざってどれがどれだか、となることもありますよね。キャップがなければそうしたイライラも防げますし、もちろん閉め忘れる心配もありません(ペン先を収納状態に戻す必要はありますが)。小さいお子さんだとキャップを開け閉めする際に手やキャップを汚してしまうことがありますが、ノック式であればキレイに使うことができます。

シンプルな構造だから気軽に何本も持てる カラバリは48色

ちなみに、ノック式のカラーマーカーや蛍光ペン自体はクリッカートが初めてというわけではありません。違いはフタの有無。従来のノック式カラーペンは一見するとフタがないように見えますが、実はなんらかの方法で内蔵しているのです。ペン先が収納された状態ではフタがペンの先端の穴をふさいでいて、ノックでペン先がせり出すのと連動してシャッターのようにフタが開く、といった仕掛けになっています。

この方法でもノック式の利便性は味わえますが、機構が複雑になるぶん、ペン全体が長くなったり太くなったりしがちです。また、価格もちょっとお高めになります。

内部にフタを設けると構造が複雑になりがち

クリッカートが画期的だったのは、構造ではなくインクによって乾き問題を解決した点です。これによってペンの作りがシンプルになり、複数本をまとめて持ち運んでも気にならないほど軽く、また価格も132円とリーズナブルに抑えられているのです。

スリムで軽量、リーズナブルだから気軽に何本も持てる!

カラーバリエーションも豊富で、48色から好きな色を選べます。また、濃い色の上から薄い色を塗ってもにじまないインクなので、通常の筆記だけではなくイラスト制作や手帳デコにもおすすめです。

ビジネスシーンで「あえて」サインペンを使うという選択

クリッカートのモイストキープインクを採用したペンは、他にもあります。特にビジネスパーソンにおすすめしたいのは繰り出し式の高級サインペン「フィラーレ ディレクション」(2,750円)です。

フィラーレ ディレクション(2,750円)

このペンは、ゼブラの開発部門に配属された若手社員が、上司が目の前で手書きしてくれた指示が分かりやすかったことがきっかけで開発されたのだそう。たしかに、人に何かを伝える時、言葉だけで伝えるよりも絵や図があると分かりやすいのは間違いありません。でも、パソコンなどでしっかりした資料を作るのは時間も手間もかかって大変です。文字でも図でもササッと描ける「手書き指示」は、忙しい管理職にも、指示を受ける側にもメリットがある方法です。

言葉だけでなく図やイラストでも伝えられる手書き指示

ボールペンよりも太くハッキリした線を引けるサインペンは、まさにそんなシーンにうってつけ。オンライン会議で書いたものをカメラに向かって見せてもいいですし、資料の添削や校正にも使えます。

「思い返してみれば、最近はそういう時しか手書きってしないな」という管理職の方も多いのではないでしょうか。そう考えると、ペンを1本だけ持つならボールペンじゃなくてサインペン、という選択も大いにアリではないかと思えます。

フィラーレ ディレクションは高級感のある金属軸なので、スーツ姿のビジネスパーソンが胸ポケットから出しても違和感がありません。クリッカートとは異なり繰り出し式ですが、キャップがない便利さは同じです。

資料チェックやリスキリングには「クリックブライト」

文字を書くよりも、資料の読み込みやリスキリングのための勉強で線を引く機会の方が多い人向けには、同じくモイストキープインクを搭載した「クリックブライト」(132円)というアイテムもあります。

クリックブライト(132円)

こちらはいわゆる蛍光ペンで、インク色もしっかり目立つ蛍光カラーがそろいます。特徴的なのはペン先の線幅が従来の約半分、2mmという細さの「ハーフラインチップ」であること。線を引いた場所をしっかりと目立たせつつ、下の文字も読みやすいバランスが絶妙です。

「クリッカート」にしろ「フィラーレ ディレクション」にしろ「クリックブライト」にしろ、使うたびにキャップがなくても乾かないというのは、こんなに便利なんだなと思います。本当に、モイストキープインクはすごい! 皆様もご自身の利用シーンにあわせて、ぜひ取り入れてみてください。

ヨシムラマリ

ライター/イラストレーター。神奈川県横浜市出身。文房具マニア。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。元大手文具メーカー社員。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。