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川重の乗れる多脚ロボット「コルレオ」 開発は仮想空間とフィジカルAI活用
2026年7月29日 08:00
川崎重工は7月28日、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)で公開した、四脚歩行型のオフロード・パーソナルモビリティのコンセプトモデル「CORLEO(コルレオ)」のロードマップを紹介した。
「CORLEO」はロボティクス技術とモーターサイクル技術を融合し、「乗るロボット」という新しいモビリティの可能性を提示したコンセプト。2030年リヤド万博にてプロトタイプの動態デモを行ない、2035年に「CORLEO X」のローンチと乗車体験ができるライディングパーク実現を目指す。
多脚ロボット型ビークル「CORLEO」
タイヤではなく4本の脚で移動するため、岩場や森林、急斜面、段差、河原など、従来の二輪車や四輪車では走行が難しい地形でも移動できるようになることを目指している。また、川崎重工が長年培ったバイク技術を応用。スイングアーム機構を用いている。
後脚が前脚とは独立して上下することで、衝撃吸収や車体姿勢の安定、前方視界を確保する。ライダーはハンドルを大きく切るのではなく、乗馬のように体重移動で進行方向を指示し、機体側がライダーの意図を検出し、ロボットが姿勢や歩行を補助するため、難しい地形でも比較的容易に走行できるという構想だ。
動力源としては水素エンジンを発電機として利用する「シリーズハイブリッド方式」を想定。水素から発電し、その電力で各脚のアクチュエータを駆動する。発電用に特化したエンジンだという。
万博ではモックアップとCGしか提示されなかったが、2025年12月に開催された「2025国際ロボット展」では社長直轄の「SAFE ADVENTURE」事業として本格的な開発を開始し、2030年リヤド万博での現地モビリティとしての活用、2035年頃の実用化を目標とするという計画が発表された。その後、2026年4月1日付で実際に専任開発組織が新設され、推進されている。
人が自在に操り、跳んで走れる多脚の乗り物
説明会ではまず、川崎重工業 社長直轄プロジェクト本部 SAFE ADVENTURE事業総括部 総括部長の天辰祐介氏が「CORLEO」にまたがった姿を披露し、コンセプトを紹介した。「CORLEO」は広告を打たなかったが発表後、SNSで12億リーチを稼ぐなど大きな話題となった。もともとは万博の2年前に始まった取り組み。
人が乗る乗り物であることから機能美を求めるためにモーターサイクル同様のデザインスケッチ、クレイモック作りから行なった。テストライドは神戸大学馬術部の方々に協力を依頼。乗り物としてのまたがった瞬間のフィーリングを作り込んでいった。
いっぽう、すでに人が乗り込める多脚ロボットはある。それに対する答えは「川崎はこれにブレーキやステアリングをつけるつもりはない」と述べた。ただ単に歩くロボットではなく、人が自在に操れる、跳んで走れる乗り物を目指している。いまはライディングシミュレーターの開発を行なっている段階だ。
このシミュレーターにはライダーの動きをキャプチャーするために、フォースセンサーやLiDAR、カメラなど様々なセンサー類を搭載。フォースセンサーを搭載した鎧(あぶみ)の部分は伸縮する。「CORLEO」は主にこの鐙で操作されるもので、どの程度のスペックを発揮できるかは、乗り込むライダー次第のような乗り物とする予定だと語った。
いっぽう脚部分についてはバーチャルで作り込んでいく。NVIDIAのフィジカルAI開発プラットフォーム「Cosmos」や物理エンジン「Newton」を使って「バーチャルオフロードコース」を計算機内に作り、物理演算を行なって、現実同様に足場の岩などがグラグラする。それをすべてシミュレーションして、踏破できるように学習させていく。主な開発は、川崎重工が5月に開設したフィジカルAIセンター(Kawasaki Physical AI Center in San Jose)で行なっている。
「乗り物としてのロボット」の開発アーキテクチャー
川崎重工業 社長直轄プロジェクト本部 SAFE ADVENTURE事業総括部 特別主席 技術開発マネージャーの上野高廣氏は、「CORLEO」の開発は従来のロボットやビークル開発の延長線ではない、という話から始めた。安全・安心、そして「Fun to RIde」を実現するためには、従来のロボットやビークル開発でやっていなかったことを結合することでしかできないと感じていると述べた。
どういう意味かというと、従来のバイクは乗り手の動きを見ていない。「CORLEO」はライダーの動きに反応しながら動く。また動く路面に動的に対応する。これらは世界初だと天辰祐介氏が解説した。これを「究極のハイハイ」を作るようなものだと言っているという。
「乗り物としてのロボット」を開発するために、体験価値の定義、人を開発の中に入れること、デザインと技術を同時に進めること、モデルで全体をつなぐ、そして現実との差を前提に改善するといったコンセプトを立て、最後に合わせるのではなく、すべてを最初から繋がった状態として、仮想プラットフォームのなかで開発を行なっているという。最後に合わせてできて人が評価するのではなく、常に検証を行ないながら進めていると語った。
上位側では安心感や自在操作感といった体験価値を作り、それを要求仕様に落とし込む。そしてそれぞれせめぎ合う技術要素を仮想プラットフォームのなかで動かしながら開発を行なう。そこに人を介在させるためにライディングシミュレーターを開発した。
そしてシミュレーションと実機のギャップを埋めるためにAIの開発も行なって、それらのフィードバックサイクルを回しながら開発を進めているという。CORLEOは初心者とベテランでは乗り心地が変わる乗り物になる。
体験価値、人、バーチャル、AI活用など4つの原則を重視
天辰氏はCORLEO開発には4つの原則があると紹介した。実際の走行速度よりも「速く感じること」を重視している。これが「体験価値から常に考える」だ。たとえば「傾斜角度20度の砂利道で動く」といった条件を決めると、必要な機能と性能が決まる。それが要求仕様になる。そして「この範囲なら性能を発揮できる」という責任範囲と工学的な条件に変換する。
体験を評価するのは人なので「ライダーを常に開発に組み込む」。人が実際に登場して仮想環境上で操作し、人の意図を読み取らせる。そして乗り心地、乗り味、操作感を人にフィードバックし、定量的に評価する。ライディングシミュレーターを使って体験と制御を同時に設計し、人を評価対象ではなく、設計要素として捉える。ライダーは単なる荷物ではなく、動き方を把握して、CORLEOがそれをさらに加速させるような動きをする。
技術要素は、「仮想プラントモデル」を使って「バーチャルで徹底的に追い込む」。実際のメカ、電気、路面との接触、センサ、制御、人を統合し、各構成要素の相互依存を同時に扱う。「仮想プラントモデル」は並列要素を同期する中心となる。バーチャルオフロードコースはNVIDIAと共同で開発する。バーチャル空間上に例えば足元が不安定な「がれ場」を作り、そこをうまく歩けるようにする。開発は段階的に行なう。
AIの活用も行なうが、AIでは歩かせない。現実との差を前提にし、AIは残差を扱う。上野氏と天辰氏らはこれを「完璧は狙わない、後片付けはAIに」と表現した。Sim2Realギャップと呼ばれる問題は問題ではなく設計対象であると考え、実機試験で現実との差分を取得し、モデルとの差分を可視化する。ギャップを分析し、差分を次の設計へ返す。接触時の不確実性は強化学習を使って吸収できるようにする。一つのルートで試験をするのではなく様々なルートを仮想で作り、試験を行なう。安全系は別ルートで設ける。
川崎重工業としては、ここで得られた知見を、二脚を含む他の多脚ロボットにも活かす。
2030年リヤド万博には登場予定
川崎重工業では様々な研究開発をバーチャルのなかで行なっている。「バーチャルとリアルが常に見えるようなビジネス」をしていきたいと考えているという。リアルに何かが出てくることを前提としたバーチャルものづくりもしたいと考えており、たとえばゲーム内でのプロダクトが現実に出てくるようなイメージだ。実際にゲーム業界にも働きかけはじめており、これを「メカeスポーツ」と表現した。
2030年リヤド万博を一つのマイルストーンとして開発を進めており、そのときには歩かせたりする予定だという。2027年には大きくスタイルが変わる予定だ。
上市は2035年を想定する。その時には「CORLEOが自由に乗れるライディングパークのようなもの」を作りたいと考えているという。リヤド万博が行なわれるサウジアラビアに提案している。国内での提案は現時点では行なっていない。
ビジネスとしてはまずはBtoBからはじめ、そのあとにBtoC展開を想定する。「足がある」ことで、多くの人が愛着を覚えやすくなるのではないかと考えており、IDを作って、自分だけのCORLEOに世界中どこにあっても会えるといったイメージを考えているという。天辰氏は「豊かなストーリーを創出する」のが「SAFE ADVENTURE事業」であり、従来のライディングではできなかったことを実現していきたいと語った。
開発メンバー数は非公表。価格などは未定。CORLEOの体験価値がどのくらいの価格帯が適切なのか検討している段階だという。




















