いつモノコト

眼科&眼鏡量販店で1mの距離に合わせたパソコン専用眼鏡を作った

今回新しく作った眼鏡。パソコンのディスプレイまでの距離のおよそ1.2メートルに合わせています。非常に快適です

30歳代も後半くらいから、年々視力の低下を実感しています。単に老眼がきたのかなと思っていたのですが、乱視も近眼もあるようでした。そのときは車を運転するための遠くまでしっかり見える眼鏡と、近くを見るための老眼鏡を作りました。しかし、最近ではパソコンの文字も滲みがちになってた始末です。パソコン作業用の眼鏡を追加することにしました。

眼鏡導入でパソコンの拡大操作が減った

結論からいえば、新しく作った眼鏡をかけてパソコンのディスプレイに向かうとこれが快適です。どうして今まであんなにボケた文字を見て作業できていたのかと、不思議になるほどです。Webブラウザを拡大表示することは、ほぼなくなりました。PDFファイルや画像をみるときの拡大操作も減ったように思います。大きくしようかと思っていたテキストエディタの文字サイズも、むしろ小さくしても平気かなと思えるほどです。パソコンでの作業効率が上がったのを実感できるほどではないものの、確実に作業がラクになったのは分かります。

1メートルくらいがちょうど見えるようにした眼鏡なので、それより遠くはピントが合っていない理屈です。それでも弱い近眼の人と似たような状態。部屋の中であればボケボケに見えるわけでもないので、かけっぱなしでも困りません。また、老眼鏡のように手前を楽に見えるというほどではないのですが、ちょっとスマートフォンを見るくらいであれば、この眼鏡をかけたままでも目の調整力でカバーできる範囲です。乱視も補正されているので、クッキリしていますし、当然裸眼で見るよりも目の負担は少なく楽になりました。

現在私が使っている3つの眼鏡です。見る距離によって使い分けています。どこまで遠くにピントが合うかが異なります。左が、車運転用の遠く(無限遠)にピントがあうように作ったもの。中央が今回作った約1メートルくらいにピントが合うようにしたもの。左が老眼鏡で30センチくらいにピントが合うようにしています。いずれも、乱視の補正もしています

どこまで遠くが見えるかを変えるのが眼鏡の役割

何も考えずに眼鏡店に行っても眼鏡は作れるのですが、目の仕組みをしっていると、眼鏡で出来ることと、出来ないことが分かります。

人の目はボーっと楽にしたとき、最も遠くが見えます。それより近くは目の周りの筋肉を使って水晶体を変形(膨らませる)させてピントを合わせます。光は角膜と水晶体を通じて、網膜に像を作ります。網膜より手前に像を結んでしまうのが近視で、遠くにピントを合わせられません。遠視は、網膜の奥に像が出来るように光が入る状態で、一番遠くを見ようとするとどこにもピントが合いません。カメラのレンズに例えれば、近視は無限遠が出ず近くにしかピントを合わせられない状態。遠視はピントリングを無限遠より先に合わせたオーバーインフということになります。

角膜や水晶体の前にレンズを置いて、一番遠くが見える位置を変えるのが、眼鏡やコンタクトレンズです。近視であれば凹レンズでピント位置を遠ざけ、遠視であれば凸レンズでピント位置を手前にします。端的にいえば眼鏡は、見える一番遠くの距離を変化させる道具ともいえます。

凹レンズの眼鏡をかけると、その内側の顔は小さく見えますので、むかし漫画であった『眼鏡を外したら美人だった』という描写は、近視のための眼鏡によって小さくなっていたけど、眼鏡を外すことで本来の大きさで見えたという説明ができなくはないでしょう。

目の調整力が落ちる老眼と乱視

ただし、一番遠くから『どれだけ近くまで見えるか』は、その人の目の調整力によって異なります。そして、年齢と共に衰えてきて、手前のほうにピントを合わせられなくなってくるのが老眼です。私の場合、30歳代後半くらいから感じてきて、40代半ばとなると、文庫本を読むのに老眼鏡は不可欠になりました。

またもカメラのレンズに例えるなら、ピントリングが渋くなってきて、近距離にピントが合わせづらくなった状態です。そこで、凸レンズで見える一番遠くを手前にズラします。これが老眼鏡です。そのため、老眼鏡をかけると遠くのものにピントは合わなくなります。カメラのレンズにの前にクローズアップレンズやマクロコンバーターをつけると、遠くにピントが合わなくなるのと一緒です。

私の場合、乱視もあります。これは目が歪むことによって、縦の線と横の線で網膜にピントが合う位置がズレて見える状態です。目の形は基本的に球を切り出したようになっているのですが、ラグビーボールのような形になってしまうことで起きる現象です。見る距離に関わらず像がぼやけて見えるのでやっかいです。眼鏡では円柱を切り出したようなレンズ(もしくはその逆の形状)で補正することになります。乱視はこうした単純な正乱視のほかに、目(角膜)の表面がデコボコになることで起きる不正乱視があります。不正乱視は眼鏡は矯正できません。

なお乱視は、英語ではAstigmatismといい、つまりは非点収差です。カメラのレンズで非点収差というと、同心円方向と放射方向でピントが合う位置がズレてしまう現象なので、同じ言葉でもその原因と像の結び方は目の乱視とは少し異なります。

眼科で処方箋をもらって眼鏡量販店で作る

前述のように私が持っている眼鏡は2本。しかし、約1メートルの距離にあるパソコンのディスプレイを見るのには適しません。遠くがバッチリ見える眼鏡では、老眼によって近くにピントをあわせづらいのです。老眼鏡の方は、もっと手元にピントが合うようにできているので、それより離れたパソコンのディスプレイにはピントが合わせられません。遠近や中近といった累進レンズの眼鏡を作るかとも思ったのですが、付け替える手間を考えなければ見たい距離に合わせて眼鏡を個別に用意するのが一番簡単な解決方法です。

すでに持っている2本の眼鏡は、市内で評判の良さそうな眼鏡店を探して作ってもらい満足しているのですが、お値段はそれなりでした。今回は出費を抑えるべく眼鏡量販店で作ることにします。ただし、すべてお任せするのではなく、事前に眼科で眼鏡の処方箋をもらいました。量販店での眼鏡を作るための測定に不安があるというわけでもないのですが、あまりこういう用途で使うという話も聞かないので、作るにしても眼科で相談したほうがいいだろうという判断です。

眼科では、パソコン用の眼鏡を作りたいと伝えます。当初は2メートルくらいの距離がちょうど見える眼鏡にしておき、目の調整力でなんとかしようと思ったのですが、相談してやはりピッタリに近いところにしました。「パソコンまでの距離が1メートル?」と驚かれましたが、2枚のディスプレイで幅1.2メートルくらいになりますので、やはりそれくらいは離れて使いたいものです。

レンズを色々かえて最適なところを探してもらいます。視力検査の表(環の一カ所が欠けたランドルト環のやつです)の小さいバージョンを1メートルくらいに離して視力検査を繰り返します。その後、合わせたレンズの組み合わせで問題ないかしばらく院内をかけてみてと確認を促され、眼科医と面談して眼鏡の処方箋をもらいます。これを持って眼鏡店に向かいます。

眼鏡店というのは、どうも慣れません。おいてある眼鏡フレームをあれこれかけてみたところで、自分がどんな眼鏡が似合うのかわかりません。どうせかけている自分は見えませんから、デザインはどうでもいいともいえます。他人に見せることもありません。

などと選ぶのが面倒になってきたことへの言い訳を考えながらも、これにしようかと手に取っても、私が行った量販店で一番安いレンズ込みで5,000円(税別)よりも値が張るものばかりで、ガッカリしてしまいます。今回は一番安いのでと決めていたので、最終的には5,000円のコーナーの中から定番そうなのを選びました。あとになって、この眼鏡量販店の通販サイトを見てみると人気ナンバーワンだったので、少しホッとしました。個性は要りません、みんなと一緒でいいんです。

このフレームで欲しいと眼科で作ってもらった処方箋を出します。眼鏡が出来るまでは1時間ほどだったでしょうか。丸いレンズからフレームの形に削ってハメ込むのに、そんなにも短時間でできるとは思っていませんでした。なにか登録するとキャンペーンかなにかによって値段変わらずブルーライトカットのレンズも選べるということでしたが、レンズを取り寄せる必要があり数日かかるということだったので、在庫があり当日受け取れる普通のレンズでお願いしました。

眼科で作ってもらった眼鏡の処方箋。「SPH.」は球面度数で、単位はディオプター(dpt)。遠視/近視/老眼でどれだけピントが合う位置をズラすかを表しています。「CYL.」は円柱度数で乱視の補正の度数です。「AX.」は乱視がどの方向に起きているのかの角度です。「P.D.」は瞳孔間距離で、目と目の間の長さになります。R(右目)とL(左目)でそれぞれ記されています。私は眼鏡量販店のJINSの店で作りましたが、処方箋があれば度数を指定できますので通販でも対応しているようです
使ったレンズの空き袋も渡されました。処方通りのレンズが使われています。元は70mm径のレンズから削りだしていると思うと不思議な感じです。上段と下段に2つの値が書いてありますが、結果的には同じことなのでどちらも対応できるという意味になります。フレーム込みで5,500円ですが、非球面レンズ(Aspherical)というと、ちょっと高級な気分になります。

眼科からは、少し使ったら眼鏡を確認するから来てねと言われていました。2週間ほど使ったのち、持っていきます。眼鏡をかけた状態で実際にどう見えているのかの検査に加えて、眼鏡単体での検査もしたようです。眼科医との面談では問題なかったと伝えられます。

眼鏡をかけた直後、眉間のあたりに痛みを覚えることを伝えますが、しばらくして痛みがなくなるようであれば慣れだから大丈夫と言われホッとしました。

ちなみにかかった費用は、眼科に2回行って健康保険適用で3,190円(2,620円+570円)、眼鏡が消費税込みで5,500円の合計8,690円です。もちろん、眼鏡代だけで済ませることも出来るのですが、専門医と話をするという安心感も含めれば満足しています。もっと早くに作っておけばと思いました。

猪狩友則

フリーの編集者、ライター。アサヒパソコン編集部を経て、2006年から休刊までアサヒカメラ編集部で編集者。その他ムック等の編集、ソフトウェアの使い方や各種仕組み解説、スマートフォン関連の執筆もおこなう。趣味はマイル修行。