石野純也のモバイル通信SE
第103回
「Galaxy Z Fold8」はなぜ横長画面になったのか その狙いとiPhoneの影
2026年7月23日 08:20
サムスン電子は、7月22日に英ロンドンで製品発表イベントのUnpackedを開催。フォルダブルスマホのシリーズとなる、Galaxy Zシリーズを発表した。ここまでは例年と同じ動きだが、異例なのが、シリーズが3機種展開になったこと。これまでもフリップ型の廉価モデルを加えたことはあったが、形状まで変えた3機種目のGalaxy Zが登場したのは初めてだ。
横に開く「Galaxy Z Fold8」
新たに加わるのは「Galaxy Z Fold8」。その名のとおり、横に開くフォールド型の端末だが、ディスプレイの比率が7世代目まで続いてきたどのGalaxy Z Foldとも異なる。これまでは、閉じたときは一般的なスマホに近いサイズ、開くと正方形に近い縦長の大画面が出現する仕掛けだった。
これに対し、Galaxy Z Fold8は開いたときの縦横比率が3:4になる。開くだけで、本体を横に倒した時のような“横長”のディスプレイになるというわけだ。しかも3:4で作られているため、この比率で撮られることが多い写真や動画が、開いたとき、画面にピッタリフィットする。
電子書籍も、そのまま見開きで表示できるのが横長のメリットだ。開いた状態で使うのであれば、横長3:4であることの優位性は多い。閉じるとこれまでよりも横幅が広く、ずんぐりむっくりしたようなデザインに見えるが、ギリギリ片手でも扱える。縦に詰められる情報量は減ってしまうが、画面内の要素が大きくなって表示が見やすい。
過去にはサムスン以外のメーカーも、開くと横長になるフォルダブルスマホを手掛けていた。日本で発売されたモデルでは、グーグルの初代「Pixel Fold」が閉じた時と開いた時で画面の向きが変わっていた。ただ、Pixel Foldも3:4まで大胆な横長にはなっていなかった。これに対し、最近では、中国メーカーのファーウェイが「Pura X Max」で開くと3:4になるフォルダブルスマホに挑戦している。
標準モデルが「横型」の衝撃 変更のデメリットもあるが……
ただ、当然ながら、形状を大きく変えたことのデメリットもある。例えば、縦位置しか想定していないアプリの場合、左右に帯が出てしまうことがある。最近では、ディスプレイ比率にレイアウトを適用させるのが一般的だが、ゲームなど、アプリによっては縦位置固定というものもある。このようなアプリを使うことが多いと、横長ディスプレイが生きない。
縦動画を再生する際も、同様だ。これまでスマホ向けに培ってきたコンテンツが、いずれも開いただけでは全画面表示できない(ことが多い)というわけだ。また、電子書籍も文字中心の文庫のようなものを表示するにはいいが、写真やキャプションを多用した雑誌を見開き表示すると、文字が小さくなってしまい読みづらい。このような時は、本体を横にすればいいが、やや本末転倒感もある。
横長になったことで、これまでのGalaxy Z Foldに搭載されていた一部の仕様も省略されてしまった。中でも大きいのは、半開きで使う「フレックスモード」に非対応になったことだろう。Galaxy Z Fold7までの機種では、カメラなどを半開きにすると画面が分割され、机やテーブルに接している方の面だけを使って操作ができた。
YouTubeやNetflixなどの動画アプリも同様の表示ができ、ノートPCのようなスタイルで垂直に起こした面を使って動画を視聴できた。横長のGalaxy Z Fold8には、このフレックスモードが内蔵されていない。ヒンジも90度から一定の角度がつくと一気に開いてしまう仕様のもの。これまでのGalaxy Z Foldとは根本からコンセプトが異なる。3から7まで毎年Galaxy Z Foldを使い続けてきた筆者が、もっとも戸惑ったのもこの部分だった。
サムスン電子もそれは承知の上で、従来の延長線上にあるGalaxy Z Foldは「Galaxy Z Fold8 Ultra」になり、最上位モデルとしてラインナップに残っている。こちらのディスプレイ比率やヒンジの仕様はGalaxy Z Fold7までと同じ。開いた時の厚みを1mm削減しているが、コンセプトやデザイン、機能は基本的にこれまでのGalaxy Z Foldを受け継いでいる。
とは言え、8世代ぶんの積み重ねがある従来型のGalaxy Z Foldではなく、横長ディスプレイを搭載する新たなGalaxy Z Fold8をフォールド型端末の“標準モデル”に据えたのは驚きだった。上記のように、この仕様にはメリット・デメリットの両面があるうえに、一部の機能がGalaxy Z Fold8 Ultraはもちろん、先代のGalaxy Z Fold7までのモデルにも追い付けていないからだ。
ちらつくフォルダブルiPhoneの影
背景には、やはりアップルのフォルダブルスマホ参入があると見ていい。あくまで現時点ではウワサレベルだが、すでにサードパーティが作るケースなどが流出しており、9月にアップルがフォルダブルiPhoneを投入するのは確実視されている。このフォルダブルiPhoneが横長で、3:4に近いと言われている。
ファーウェイのPura X MaxやサムスンのGalaxy Z Fold8は、この新iPhoneの登場にあたって先手を打った端末と言える。iPhoneの登場で開くと横長が一般的になる状況も見越し、あらかじめ端末のバリエーションを広げておいたというわけだ。実際、サムスンはフリップを含めた3タイプからフォルダブルを“選べる”ことを訴求し、横長一本になる(と予想される)アップルをけん制する。
もっとも、iPhoneやGalaxyが横長だからと言って、本当にそのスタイルが定着するかは未知数だ。昨年の例では、超薄型モデルの「iPhone Air」に対抗するため、サムスン電子が急ピッチで開発した「Galaxy S25 Edge」を投入しており、薄型競争勃発かと思いきや、当のiPhone Air自体が販売不振と言われており、一時は後継機の登場も危ぶまれていた。
サムスン自身もGalaxy S26シリーズには超薄型モデルをラインナップしておらず、開発を中止したと言われている。薄型モデルとは違い、フォルダブルはアプリなどのエコシステムも大きく巻き込むため、1世代で終了するようなことはない……と思いたいところだが、何が起きるかわからないのがこの業界。来年には、従来型のフォルダブルが主役の座を取り戻している可能性も十分ある。ユーザーの選択が、その方向性を決めることになりそうだ。











