石野純也のモバイル通信SE
第102回
eSIMから始まる旅行の課題解決 「海外旅行スーパーアプリ」へ近づくトリファ
2026年7月8日 08:20
海外eSIMサービスを手がけるトリファは、米国渡航認証(ESTA)の取得代行に対応した。米国のeSIMを購入した場合、「シンプルプラン」であれば無料で申請を代行してもらえる。
申請までの時間を短縮したり、担当者による申請内容の確認がセットになった「あんしんプラン」も、1,980円で提供する。シンプルプランはeSIM購入がないと2,980円、あんしんプランは購入なしでも3,980円で利用できる(公式申請手数料は別途必要)。
海外旅行を身近に
旅券法が改正され、7月1日からパスポートの発行手数料が引き下げられ、18歳以上で電子申請の場合、1万5,900円から8,900円になった。
円安が進み、海外旅行には厳しい状況が続いているが、パスポートの値下げを受け、夏休みに海外旅行に出かけようとしている人で全国の窓口は混み合っている。
一方で、最近では、ESTAのように別途事前に渡航のための認証を必要とする国や地域が増えている。
「世界的に出入国管理の厳格化が進み、入国手続きが旅行の新たなハードルになりつつある」(トリファ 代表取締役社長 嘉名雅俊氏)というのがトリファの認識だ。実際、検索結果で上位に表示される高額な手数料の代行業者に誤って依頼してしまったというトラブルは相次いでいる。国民生活センターは代行業者のトラブルが増加していることを注意喚起する啓発資料を公開している。
意図せず代行業者に頼まなかったとしても、「住所の順序が違ったり、普段入力しないような項目があったりして、慣れていても時間がかかることがある」という。現に、トリファで取ったアンケートでは、「非常に」と「やや」を合わせて、約70%の人が申請に手間を感じているという。
ESTAへの対応は第一弾という位置づけで、トリファでは今後、韓国や台湾、EUなどの渡航認証に対応し、展開国を広げていく構えだ。海外用eSIMサービスとしてスタートしたトリファだが、「自分たちをeSIMの会社だとは思っていない」(嘉名社長)。
eSIMをきっかけに、旅行前や旅行中などの旅全体をサポートするサービスを目指しているというのが同社の戦略だ。
eSIMから「海外旅行スーパーアプリ」へ
この方針にのっとり、同社は入国手続きサポートだけでなく、すでにさまざまな機能をアプリ内に実装している。5月に対応した「ラウンジパス」はその1つ。こちらは、文字通り空港のラウンジを利用できるサービスだ。年会費や月額料金が不要で、都度課金で購入できるのが魅力と言えるだろう。
25年12月には、海外旅行保険の提供も開始しており、eSIMと同様、出国前に加入しておくことが可能になった。通信関連では、eSIMに加えて3月にVPNサービスも展開しており、アプリ内で決済し、そのままVPNに接続できるような機能が搭載されている。
海外にいながら日本のIPアドレスで接続したいときや、レストランなどのWi-Fiに接続する際に通信を暗号化しておきたいときに、気軽に利用できる。
海外向けeSIMアプリというよりも、海外旅行に特化したスーパーアプリ的な進化を続けているというわけだ。海外eSIMを提供する事業者は、国内外に多数存在するが、いずれもeSIMの提供にとどまっているため、差別化がしづらい。現地接続先の違いや料金プランの違いはあるが、比較もしやすいため、単純な価格競争におちいりがちだ。
異業種からのeSIM参入と激化する競争
最近では、OTA(Online Travel Agency)もeSIMを提供しているところが多く、しかも航空券やホテルに付随するサービスとしてかなり価格を抑えている。
さらに、大手キャリアもデータ容量が無制限に近い最上位プランなどには、無料の海外ローミングをつけるようになってきた。ローミングができないMVNOやローミングが無料もしくは低容量のブランドを使うユーザーの方がまだ多数派だが、それも時間の問題。単純なeSIMサービスだけでは需要が先細りになるおそれもある。
こうした中、海外で困りやすい通信を起点にユーザーを集め、その基盤を生かして旅行前から旅行中にまで必要なサービスに広げていく戦略は合理的だ。アプリの利用目的を通信で終わらせず、旅行という目的に沿ったものにしている点は、これまでのeSIMプロバイダーや一般的なキャリアとの大きな違いだ。
旅行をサポートするサービスと定義し、機能やサービスを追加していくと、その品ぞろえは今後、OTAに近くなっていくのかもしれない。一方でそのアプローチの仕方はOTAが旅行そのものからサービスを展開し、海外eSIMにたどり着いたのとは真逆だ。
とは言え、まだ旅行全体をサポートするにはまだまだ足りない機能も多い。例えば、現地での交通手配やアクティビティの予約など、eSIMの手配と一緒に済ませておきたいものの1つだ。
ただ、やみくもに領域を広げすぎると、大手のOTAと競合し、差がなくなってくる。同じ通信領域のサービスであるVPNのように、原点であるeSIMを生かしつつ、既存のOTAにはないサービスを投入していくことに期待したい。









