レビュー

電動キックボード全部乗る。東京モーターショーで5台一斉試乗

クルマの祭典モーターショー。実はキックボードも大集合

東京モーターショーが開幕した。10月25日からは一般公開もスタートし、最新のクルマや未来をイメージしたコンセプトカーなどが多数展示され、盛り上がりを見せているようだ。ただ、ちょっと困ってしまうのが「会場間の移動」だ。

会場は、東京ビッグサイト 西・南展示場を使う「有明エリア」と、東京ビッグサイト 青海展示とMEGA WEBを使う「青海エリア」に分かれている。有明エリアは日産、ホンダ、マツダ、レクサス、三菱自動車など、青海エリアにははトヨタやスバル、ダイハツ、UDトラックス、いすずなどのブースが展開されているため、どちらかのエリアだけではショーは満喫できないはず。しかし、両エリアの距離は約1.5km離れているのだ。

有明と青海を結ぶOPEN ROAD

そこで、シャトルバスが運行されているほか、りんかい線やゆりかもめなどの公共交通機関でも移動できる。また、「OPEN ROAD」と呼ばれる1本道で繋がれているのだが、約1.5kmを歩くのは、なかなかに億劫。そこで今回のモーターショーに登場したのが「電動キックボード」だ。

今回のモーターショーでは、OPEN ROADの一部区間を電動キックボードとパーソナルモビリティを使って移動できるようになっている(26日から)。モーターショーの入場券を持っている人であれば利用できる。

シェア電動キックボードは、海外では近距離の新たな交通手段として普及が進み始めているが、日本においては公道での走行には運転免許の携帯やナンバー取得などが必要となることから、本格的な展開には至っておらず、各地で実証実験が行なわれている段階。今回のモーターショーでは、自動車だけでなく様々なモビリティによる新たな交通手段の可能性として、電動キックボードやパーソナルモビリティが体験できるようになっている。

会場では、有明と青海を結ぶOPEN ROADの間を、mobby、Luup、WINDなどの電動キックボードを使って移動可能になる。キックボードは6種類、パーソナルモビリティは4種類が用意される。

乗りたい電動キックボードやパーソナルモビリティを選択できる

OPEN ROADを使った会場間の移動は10月26日(土)からスタート。筆者が訪れた23日は、限られたエリアでの折返し運転となっていたが、5台のキックボードを一斉に乗車できた。唐突だがモーターショーに集合した電動キックボードのインプレッションをお伝えしたい。

電動キックボード(だいたい)全部乗る。結構違う体感性能

電動キックボードの乗車は、年齢13歳以上で、身長120cm以上、体重100kg以下が条件。またモーターショーの入場券とヘルメットの着用も必須だ。サンダルやヒールでは体験できないこともあるとのこと。

今回の試乗ルート。なだらかな勾配があるので加速性能も結構違いが感じられた

まず最初に乗車したのはLuupの2輪電動キックボード。4輪タイプのものもあるが、まずは2輪タイプのキックボードに乗車した。

Luup

左のレバーがブレーキ、右のレバーがアクセルという構造はどの電動キックボードも概ね一緒。乗車時には2~3歩勢いをつけたあと、アクセルレバーを倒すと、キックボードが加速してくれる。なお、多くのキックボードは時速20km程度は出せるが、今回のモーターショーの試乗では10km程度に抑えられている。

Luupの2輪キックボードは、加速も安定もよく、緩やかな坂道をグイグイと登ってくれて気持ちがいい。右手でアクセルレバーを押しながらの乗るため、カーブを曲がる際などに少し慣れが必要だが、これはどのキックボードも同じ。ブレーキは下り坂以外ではあまり使う機会はないかもしれない。Luupは小回りも効き、とてもバランスが良いキックボードと感じた。

続いて乗ったのが試作中というLuupの4輪モデル「Model Senior Prototype」。最高時速が8km程度に抑え、4輪で安定感を向上させ、高齢者向けの新たなキックボードとしての展開を想定しているという。左レバーがブレーキ、右がアクセルとなっており、他のキックボードもとは異なり、クルマっぽいハンドルを備えている。

Luup Model Senior Prototype

こちらは2輪に比べると、蹴り出しがゆっくりしており加速感も穏やか。直進は安定するが、本体が重たいことやハンドルが独特のため、カーブでの小回りにはやや難あり。また他のキックボードと異なり、アクセルを離すとブレーキが掛かるという仕様になっており、その効きがややキツイので乗りこなしは難しかった。今回の出展はそうしたフィードバックを得る機会として考えているとのこと。

Luup Model Senior Prototype。ハンドル形状が独特

次に乗ったのは黄色いWIND 3.0。WINDは千葉市美浜区や浦和美園駅で実証実験が行なわれているが、その最新キックボードがWIND 3.0となる。20km以上の速度は出せるが、今回はほぼ10kmに抑えられている。

WIND 3.0

乗ってみるとパワフルな加速ととももに、直進の安定性に驚く。大型のタイヤとともにサスペンションも備えており、路面の凹凸がハンドルにほとんど伝わらず、高級車のような乗り心地だ。加速時ももパワーは感じられるが、アクセルをゆっくり開けるとゆっくり加速してくれて上品。小回りも問題なし。

説明員によれば、他のキックボードよりも重量があるため、手持ちの移動などは大変とのことだが、乗車時の「安心感」はWIND 3.0が一番高く感じられた。

Luup(手前)に比べると一回り大きいWIND

続いてはmobby。加速性能が高く、直進時の安定性もとても良い。スタート時に他のキックボードよりも助走速度が必要なようだがすぐに慣れた。小回りも効くし、ブレーキもかなり強力だ。Luupの印象に近く、より安定しているように感じたが、単に筆者がキックボードに慣れたから、ということかもしれない。

mobby

最後に乗ったのはeBikeRの「CityBlitz」。こちらは公道仕様ではなく、ホビー用に市販されているもので、3段階の速度調整も可能。[3]を選ぶと最高24kmまで出るのだが、会場の都合上10km程度となる[2]での体験となる。

eBikeRの「CityBlitz」
3段変速に対応する

3段階の速度調整もユニークだが、今回乗車した中では一番小径のタイヤということもあり、小回りは効くが路面の凹凸がかなりダイレクトに伝わってくる。そのため、さほど速度が出ていなくても体感速度は速く感じられる。ボディも軽量のためか加速感が強烈で、ちょっとしたスポーツといった趣き。乗っていて楽しい。

後輪を踏んでブレーキにも対応するなど、スポーティ仕様

振動がかなり体に伝わるため、長距離移動すると疲れるかもしれない。Airwheel Z5と比べると他の電動キックボードは、誰でも安心して街乗りできるよう相当配慮されていることが感じられる。街乗りの自転車とスポーツサイクルのように、電動キックボードも用途や趣味にあわせて様々な製品が出てくるのかもしれない。

あともう一台、eBikeRのAirWheel Z5という車体も用意されているが、筆者が訪れた時間には実機が無く乗車できなかった。

CityBlitz(左)とAirwheel Z5(右)

パーソナルモビリティは、トヨタの歩行領域EVが立ち乗りタイプ、座り乗りタイプ、車椅子連結タイプの3種類と、ヤマハのTritownが用意されている。トヨタの立ち乗りタイプに乗ってみたが、安定・安心感ある乗り心地で、スピードは最高6kmとゆっくり。キックボードとはまた違う乗り物という印象だ。

パーソナルモビリティ試乗も

なお、モーターショーのOPEN ROADは、途中道路と横断歩道があり、そこを渡る際にはキックボードから降りて手押しする必要があるとのこと。

正直乗る前は「大体どのキックボードも同じだろう」と思っていたが、予想以上にキックボードごとの性能や体験の違いが大きく驚かされた。今後近距離のモビリティとしての普及が期待される電動キックボードだが、クルマやバイクのような趣味としても注目されていくかもしれない。

そういう点でもモーターショーにこの試乗体験コーナーがあるのは面白い。ぜひモーターショーを訪れたら電動キックボードも体験してほしい。

東京モーターショー 2019 特集

臼田勤哉