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KDDI子会社の巨額架空取引、2461億円が水増し 99.7%が架空

KDDIは31日、子会社のビッグローブとジー・プランによる広告代理事業における架空取引が複数年にわたって行なわれていた問題で、訂正されるべき売上高が2,461億円、外部流出額は329億円におよぶと発表した。あわせて、ビッグローブの社長、CFOと、ジー・プランの社長、副社長は引責辞任。関与従業員2名は、懲戒解雇となる。

この問題は、2月14日の第3四半期決算発表にあわせて公表したもので、KDDIの連結子会社であるビッグローブと、ビッグローブの子会社であるジー・プランの2社における、広告代理事業に絡んでいる。外部の広告代理店と関係しながら、広告主や広告の掲載媒体が存在しない架空取引が複数年にわたって繰り返され、架空の売上や利益を計上。広告料は、起点となる広告代理店に戻る“還流”スキームで、会計上の取扱高が雪だるま式に膨らんでいたほか、取引の過程で発生する手数料が、これら外部の広告代理店に支払われていた。

以降、調査を進め、今回特別調査委員会の調査結果とともにまとめた。2017年4月から2025年12月までの間に計218社の取引先が存在したが、架空取引はこのうちの21社との間で行なわれ、実態としては、広告代理事業の売上のうち99.7%が、架空循環取引により計上されたものであったという。

不正が発生した2018年8月は、数十万円規模の赤字発生と数千万円単位の売上目標未達が見込まれたことから、この事業を立ち上げた人物が不正に着手。不正の動機について「焦り」と説明している。以降、正規取引により利益を出すことで架空循環取引の売上分を補填すると考えていたが、不正を継続する中で、資金を環流させるために取引金額が次第に増加していったという。

関与した関係者については、民事上の損害賠償請求訴訟を予定しているほか、外部流出分の回収を進める。また、関係者への刑事告訴も検討している。なお、巨額な不正だが、反社会的勢力と認められる取引はなかったとしている。

なお、この報告にあわせてKDDIは、延期していた2026年3月期第3四半期決算を発表。売上高は前年同期比で3.8%増の4兆4,718億円、連結営業利益は、前年同期比で1.1%増の8,567億円となった。

新規事業への無知と楽観、属人化の果てに

会見の冒頭で頭を下げるKDDI松田社長とCFOの最勝寺奈苗氏

特別調査委員会の報告では、ジー・プランとビッグローブで架空循環取引に関与したのはa氏とb氏の2名のみと断定された。主導したのは、ジー・プランにて自らが広告代理事業を企画し立ち上げたa氏で、業績不振による赤字を補填するため架空循環取引を開始した。金額が次第に膨らむその構造上、止めるに止められなくなっていったと結論付けられている。

a氏は私的利益のためではなかったと説明する一方、関係した外部の代理店から飲食代などの名目で、直近2年で合計約3,000万円を受け取っており、これも「途中で止められなかった理由であることは否定できない」とされた。

広告代理事業はジー・プランとビッグローブのどちらでも、a氏とb氏の2名のみが担当する事業で、極めて属人的な体制も大きく影響した。

ジー・プラン、ビッグローブにおける架空循環取引の経緯

b氏は、a氏の紹介でジー・プランに入社するなどa氏に恩義を感じていたといい、架空循環取引の全容を把握しないままa氏を補佐する形で関与を開始、外部の代理店に架空のレポートを作成し提供するなど取引全体では重要な役割を果たした。

ジー・プランとビッグローブで関与したのは2名のみだった

会見では、架空循環取引を始めたa氏の動機と、巨額になるまで続けることが可能だった理由・環境に注目が集まった。

調査委員会は、ジー・プランにおいて広告代理事業は新規事業で、親会社のビッグローブを含めて、それを監督する知見がなかったことを大きな理由として挙げており、チェック体制は「ずさんだった」と総括している。ビッグローブについては、キャッシュフローの悪化について「楽観的だった」とも指摘された。

特別調査委員会 委員長で弁護士の名取俊也氏

KDDIは、ビッグローブの事業を「全体」でしかチェックしておらず、「本業の通信事業よりはるかに伸長する新規の広告代理事業」という異常さのシグナルを見逃した。KDDIの経営陣が問題に気づいたのは2025年2月で、ビッグローブが参入し架空循環取引が巨額化した後だった。

知見のないジー・プランやビッグローブの経営陣にとっては、アフィリエイト広告を中心とした先端的で複雑な仕組みで成り立つ分野であり、現物の確認がしづらく、クライアントの顔が見えづらい、広告の「仲介業」だったことも影響した。

また、次第に大きくなる金額や取引内容について経営陣に質された際、a氏らは架空循環取引の発覚を免れるさまざまな策を講じ、「業界の慣行だ」などと抗弁を織り交ぜていたことも明らかになっており、経営陣がそれを鵜呑みにしたことも問題だった。a氏は“業績”が好調だったことから、社内で表彰されることもあったという。懲戒解雇前の2名の肩書は、a氏が事業部長、b氏はチームリーダーだった。

発覚を免れるための対応

ビッグローブは、子会社のジー・プランの広告代理事業が(見かけ上)好調だったことから、ビッグローブの信用力やブランド力を活かしてこの広告代理事業を拡大できると見込み、出向したa氏の指揮のもと広告代理事業に新規参入した。しかしこれは、a氏と外部の広告代理店で構築された架空循環取引の商流だったため、取引の金額や規模は、このビッグローブの参入で拍車がかかる形になった。

2社の広告代理事業は、事実上ほぼすべてが架空循環取引によるものだった。今回の2社の経営体制の刷新と同時に広告代理事業は廃止され、再開見込みはないとしている。一方、ジー・プランが手掛けるポイントサービスの「Gポイント」事業や、エンタメ関連などそのほかの事業は、広告代理事業とは別事業のため、サービスを継続する。

特別調査委員会の調査は任意の協力を求めるもので、外部の代理店から、架空循環取引の認識があったという回答は得られていないという。しかし、「広告の成果物は一切なかった」(特別調査委員会 委員長で弁護士の名取俊也氏)ため、手数料を受け取る一連のスキームの中で、実際には架空取引の認識があったと想定。任意協力の調査に基づく特別調査委員会の調査ではこうした事実関係について確定できないため、KDDIでは今後、民事・刑事訴訟の中で明らかにしていく方針。