レビュー

キックボード? スクーター? glafitの新感覚電動モビリティに乗ってみた

glafitの新しい電動モビリティ「X-SCOOTER LOM」

5月28日、クラウドファンディングサイト「Makuake」に「X-SCOOTER LOM」という電動モビリティが登場した。これは、2017年に同じくMakuakeで目標の40倍以上の支援額を集めた折りたたみ電動バイク「glafit バイク」に連なる、2代目の製品。和歌山県に本社をもつglafitという日本メーカーが手がける新たな乗り物だ。

一見するとキックボードにも、スクーターにも見えるこのX-SCOOTER LOMに試乗することができたので、一体どんな乗り物で、どんな乗り味なのか、レポートしたい。

X-SCOOTER LOMの走り

将来の四輪に向けた2代目の電動モビリティ

glafitは、現在の同社CEOである鳴海禎造氏が2017年に立ち上げた会社(ブランドとしては2012年にスタート)。15歳の頃から自動車づくりに興味をもち、以来20年にわたって同氏が抱き続けてきた「自分の考える新しい自動車を作りたい」という野望の第一歩を、2017年の「glafit バイク」という形でかなえた。いずれは四輪のEV(電動自動車)を完成させることを目標に、同社はそれまでの過程における技術アウトプットとして二輪の開発を行なっており、今回はその2代目製品として「X-SCOOTER LOM」をお披露目したわけだ。

初代製品はペダル付きの自転車に電動モーターを装着した、いわばモペットのような乗り物だった。扱いとしては原付一種(定格出力600W以下)で、公道走行を前提としている。自転車と同じようにペダルを回して進むこともできれば、電動モーター(右グリップにあるアクセルで操作する)の力で走らせることもできる。ペダル(チェーン駆動)とモーターはそれぞれ独立しているので、日本でいう電動アシスト付き自転車、いわゆるe-bikeとも異なるものだ。

X-SCOOTER LOM(左)と初代のglafit バイク(右)

一方、新しいX-SCOOTER LOMは、初代の自転車然とした姿はほとんど捨て去り、サドルやペダルはなく、脚を乗せる台が用意された、タイヤの立派なキックボードという出で立ち。一部パーツに海外製を含むものの、バッテリーはパナソニック製。フレームなどの主要部品も国内の工場で独自に製造され、組み立ても全て国内で行なわれる国産製品であることも特徴となっている。

形としてはキックボードに似ているところがある
滑り止め加工された足を置く台

もちろん駆動力は電動モーターで、原付一種扱いなのは初代と同じであるため、公道走行が前提となる。今回試乗したものは開発中のモデルで、実際に販売されるものは細部のデザインが異なる可能性があるが、キックボード風に立ち乗りするスタイルで、前輪が大きく、後輪が小さいという特徴的なデザインは変わらないようだ。

バッテリーは両足の間に

このようなデザインにした理由は、鳴海氏によると、初代とは異なる若いターゲットに向けた製品として、全く違った方向性の乗り物にすることで「新しい移動体験を提供したい」という思いがあったからだそう。たしかに足を乗せる部分はスケートボードチックでもあり、コンパクトなスクーター風、あるいはセグウェイっぽさも感じられる雰囲気は、若者にも受けが良さそうだ。

真横から見るとよりコンパクトに見える

扱いは原付なので、公道走行には原付免許や普通自動車免許が必要になる。最低限ヘルメットの装備も必要だし、車体に装備している前後ライトや方向指示器(ウインカー)も使い、他のクルマと同じように交通規則に従って走行しなければいけない。

キックボード風のスタイルであることから軽い気持ちで乗ってしまいそうになるが、自動車に準じる車両であることを自覚して運転することを忘れないようにしよう。

ブレーキは前後ディスクブレーキ。灯火類もしっかり装備している
ウインカーやミラーのデザインは製品版では変更される予定とのこと

のんびり走るのも、パワフルに走るのもOK

安全な運転の仕方は、ボード部分に片足を乗せ、もう片方の足で少し勢いをつける形で前方に押し出し、両足を乗せたらハンドル右側にあるレバー(アクセル)を親指で押し下げる、といった流れ。レバーを押し下げる量によってモーターの出力を調整できるほか、「ECO/MID/HIGH」という3つある走行モードで、パワーの出方や最大出力を変えることもできる。

ハンドル右側にアクセルとなるレバーと、モード表示・切り替えなどを行うディスプレイが設置
ハンドル左側にはウインカースイッチ

ECOモードだとアクセルを全開にしても歩くのと変わらないか遅いくらいのゆっくりとした走りで、MIDは駆け足くらいの速度だろうか。しかしトコトコ進むECOモードの時点で、X-SCOOTER LOMの面白さの片鱗をすぐに味わえる。足を乗せる部分が低く重心が下がっているおかげか、安定感も高い。MIDに切り替えれば音もなくスーッと前に押し出され、怖さを感じない速度で爽快な走りを楽しめる。上り坂だと力不足を感じるが、平地を走る分にはMIDくらいでちょうどいいかもしれない。

いよいよ試乗してみる!

ところがHIGHもその延長で乗ろうとすると、少し危険だ。HIGHで走り出すとき、不用意に指をアクセルに掛けると、あっという間に身体が置いていかれX-SCOOTER LOMが捲れてひっくり返る恐れがある。転倒してケガするかもしれないので、足で地面を蹴って前方に勢いをつけてから、ゆっくりアクセルを押し下げる、手順通りの慎重な乗り方を心がけたほうがいい。

乗り出す前に鳴海氏からレクチャーを受ける筆者
一度両足を乗せてからアクセルをゆっくり押し下げてスタート

ゆっくり走り出した後でも、アクセルを全開にすると、HIGHでは最高時速25km以上までリニアに加速していき、狭い道路ではやや恐怖を感じてしまうほど。パワーの出方はかなりやんちゃで、少し押し下げるだけでぐっとモーター出力が上がり、体重の乗せ方によっては走行途中でも前輪が浮き上がるほどだった。フロントブレーキも強力で、思い切って握り込むと身体が前に投げ出されそうなくらい。一言で言えば、刺激的だ。

渋谷の公道を疾走する筆者
かなり慣れてきた

それでも前輪が大口径なことから、少々の段差もものともせず、スピードをある程度出していても信頼感はある。欧米などでは小さな車輪の電動キックボードがシェアサイクルのような形で貸し出されており、筆者もそれに乗って石畳の街中を走ってみたことがあるが、あの危なっかしさに比べればX-SCOOTER LOMの安心感は雲泥の差だ。乗り方に慣れてしまえば、唐突感のあるパワーの操り方も学んで、より楽しく走れるようになりそうだ。

あくまでも自動車やバイクと同じ車両なので、右左折時や横断歩道前などではしっかり安全確認しなければいけない
初代のglafit バイクにも試乗。こちらの方がサドルに座って運転することもあり、よりバイクっぽさがある
編集長も疾走。加速時に膝を少し曲げて前屈みになっているのは、X-SCOOTER LOMのパワフルさを考えるとむしろ安全

Makuakeでしかゲットできないカラーリングも!?

試乗したタイミングではこうしたパワーの出方はまだ調整段階で、製品版では変わる可能性が高いとのことだった。フロントブレーキについても製品版ではディスク径を小さくし、マイルドな効きに変える予定だという。

フロントブレーキは効き過ぎの印象があったので、ディスク径が小さくなれば扱いやすくなるだろう

X-SCOOTER LOMは単純な移動用のツールとしても便利に使えるだろうけれど、個人的にはHIGHのときのやんちゃな雰囲気はできればそのままにして、走ることそのものの楽しさも併せ持った新感覚のモビリティとして独自の路線を突き進んでほしいと思う次第。鳴海氏としても、慣れた人にとって面白いパワフルさは残したい、という方針のようなので、期待したいところだ。

X-SCOOTER LOMの目標金額は400万円。支援のリターンとして同製品を1台入手できる支援額は10万5,000円(税込)から(通常価格は149,600円/税込)。11月から12月末までに出荷を完了する計画となっている。

純正アクセサリーとして持ち運びを容易にする専用の持ち手、本体を包んで運べるキャリーバッグ、航続距離が延びる大容量バッテリーなども販売予定とのこと。ボディカラーはMakuakeでは4色用意されるが、市販される際にはラインアップが絞られる可能性があるので、気に入った色があるなら今のうちにMakuakeで支援することをおすすめしたい。

ホワイト
モカベージュ
スカイブルー
マットブラック

日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。AV機器、モバイル機器、IoT機器のほか、オンラインサービス、エンタープライズ向けソリューション、オートバイを含むオートモーティブ分野から旅行まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「できるGoProスタート→活用 完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS+Androidアプリ 完全大事典」シリーズ(技術評論社)など。Footprint Technologies株式会社 代表取締役。