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「VAIO A12」を仕事用ノートPCに選んだ理由。軽さより「2 in 1」と○○

仕事用のデバイスと言えばやっぱりノートPCが主役。とはいえ、スマホやタブレットの登場が人々の生活を変えたように、ノートPCの選び方・買い方に少しずつ影響を与えているのも事実です。クラムシェル型ノートPCを長らく愛用してきた筆者が、なぜ2 in 1 PCの「VAIO A12」を買ったのか? その顛末を解説します。

「VAIO A12」

仕事用PCは2台。このうち「外出先用ノート」を5年半ぶりに買い替え

フリーライター歴約18年の森田秀一と申します。──突然ですが! 私は仕事用にPCを2台使っています。1台目は自宅の仕事部屋(兼私室)に置いてあるデスクトップPCです。コスト優先で自作し、なるべく大きめのディスプレイ(現在は27型4Kディスプレイ)を接続。これでテキスト原稿の執筆だったり、画像のレタッチなどをこなしています。

2台目が外出先で使うノートPC。「あくまで外出先での仕事用」という点がポイントでして、例えば製品発表会などを取材し、数時間後に編集部へレポート原稿を送らねばならない仕事の時、使います。自宅にいる時にこのマシンで原稿を書くことはありません(遊び目的では使います)。

作業時間の割合を考えますと、自宅デスクトップPCが8、外出先用ノートPCは2といったところ。とはいえ、どちらも仕事で使うものなので、スペック周りではどうしても譲れない部分があります。

……と、そんな前提のもとで2018年12月。この「外出先用ノートPC」を買い替えました。VAIO株式会社の「VAIO A12」(カスタマイズモデル)です。ディスプレイ部とキーボード部が分離する、いわゆる「2 in 1」機なのですが、特殊なヒンジ構造などを採用することで、オールドスクールなノートPCとしての側面も強く打ち出されています。

ディスプレイを限界まで開いた状態。ほとんど普通のクラムシェル型ノートPCにしか見えません

買い替えは実に約5年半ぶり。直前までは、2013年7月に購入したVAIO Pro 11を長らく使い続けていました。こちらのプリイントールOSはWindows 8。いやはや時代を感じさせますね。後のWindows 10無償アップデートも適用させていて、特に故障らしい故障もなく、極端に不便を感じていた訳ではありません。

約5年半に渡って使ってきたVAIO Pro 11

仕事用PCという性格を踏まえれば、従来通りのクラムシェル型PCに買い替えるのも妥当な案です。ただ、そこでなぜ、あえてこの機種を買ったのか? もう少しお話ししたいと思いますので、ぜひお付き合いください

私用での持ち運び機会が減ったので、重くていいんじゃね?

まず最初に、私が買ったカスタマイズモデルのスペックはこんな感じです。ちなみにお値段は約22万円ほど。た、高い……。

  • CPU:Core i5-8200Y(1.30GHz)
  • メモリー:8GB
  • ストレージ:第三世代ハイスピードSSD 256GB
  • LTE通信モジュール:あり
  • 指紋認証:あり
  • フロントカメラ:あり(顔認証対応)
  • リアカメラ:あり
  • キーボード:あり(2ndバッテリー内蔵)

Microsoft Officeはもはやサブスクリプションで使う月だけ契約する方が安いのでパス。また、デジタイザースタイラス(ペン)はオプションでしたが一応買いました。

もう少し、買い替えの理由なども踏まえてスペックを補足していきます。画面サイズは12.5型。VAIO Pro 11が11.6型でしたから、わずかにアップしました。ちなみに解像度は1,920×1,080ドットで両機種とも同じ。1インチ程度の差ですと、そこまで変わった感じはありません。

VAIO A12(左)とVAIO Pro 11の画面サイズ比較

買い替えにあたって、実は一番悩んだのが重量でした。VAIO Pro 11は約770gと、2019年の現時点においても相当軽量な部類。これに対してVAIO A12はキーボード部に2ndバッテリーが内蔵されたモデル(実際に私が選択したモデル)だと約1.2kgに達します。500g近く違うので、本当に悩みました。「これで本当に日常的に持ち歩けるのか?」と。

私はノートPCに関しては軽さを重視する方でして、それこそ今までに買ったのは東芝Libretto のLシリーズ(たしかL5)、そしてVAIO type Tなど、どれも(当時としては)軽量モデルがほとんどでした。

とはいえ、時代も変わりました。VAIO Pro 11を買った2013年は、スマートフォンがグイグイ来ようとしていた頃(iPhoneで言えば最新モデルが5か5sの時期)。それから5年経った今、仕事のメールを返すだけならスマホ1台で事が足ります。メールどころか、Facebookメッセンジャーで仕事依頼が届くことも少なくありません。

つまり、出先でノートPCを必要とする機会そのものが減った。特に「今日は遊びで出かける日だけど、仕事のメールが来たら返信しないといけないので念のためノートPCを持っていく」というシチュエーションが、気付いたら激減していました。

もちろん、原稿執筆などで集中してノートPCを使う日はまだまだある。それならば、たまに持ち歩く日の重さは我慢して、2019年のIT事情を反映した、新しい使い勝手のノートPCを選択するべきでは?──そう考えて、最終的にVAIO A12を選択しました。

底面部。銀色の部分が、VAIO A12のキモとも言える特殊ヒンジ構造「スタビライザーフラップ」

Surface Proの良いところ、悪いところをVAIOでも

冒頭で「仕事のためのノートPCを買い替えた」と書きましたが、もちろんプライベートとの線引きは、それほど厳密ではありません。自宅にいる時、単純に娯楽として、あるいはネット通販のために、ノートPCを開くケースはもちろん多いです。

VAIO A12では、そのプライベート用途がさらに幅広くなることを期待しています。まずはなんといってもタブレットとしての用途。本体を分離したタブレット単体であれば、その重量は600g台前半。12.9インチのiPad Proと同等です。これならば、新書サイズの電子コミックを見開きで読むのも容易いでしょう。

タブレット部とキーボード部を分離させた状態

実はもう1つ、Surface Proシリーズの存在もVAIO A12に繋がりました。仕事用ではなく、あくまでも娯楽・研究目的でSurface Pro 4を2016年11月に買っておりまして、それはまぁ感心するばかりでした。クラムシェル型ノートPCと違う独特のスタンド構造は、Surfaceを使用していない時、棚の隙間にちょっとしまっておくのに便利。充電ケーブルと充電端子がマグネットでスッとくっ付くのも、日々の手間を軽減してくれました。

こちらはSurface Pro 4。VAIO A12を買ったので、さすがにこちらは手放そうかと思案中

そして一番気に入ったのは、顔認証によるログイン。4桁の暗証番号入力ではなく、フロントカメラ部に顔を写すだけなので、ちょっとメモ帳を整理しながらでもWindwosの立ち上げが完了する。ほんのわずかな違いが、ここまで印象を変えるのかと驚きました。

VAIO A12では、オプションでほぼ同等の顔認証機能を追加できます。当然、選択したことは言うまでもありません。

オプションをきっちり選んだので、VAIO A12でも顔認証ログインができます

一方で、Surface Pro 4にはもう一声欲しいところも……。特に重量は700g台後半で、タブレットとして実際に持ってみるとやや重い。また別売のキーボードカバーは、打鍵感も悪くないのですが、取り付けマグネットが強力すぎて、こまめに付けたり外したりするのが少々億劫なのです(我ながら面倒くさがりでスイマセン)。

その点、VAIO A12はスライドスイッチ機構でタブレット部とキーボード部の分離が簡単。重量も100g以上軽いです(CPUの性能差については、ひとまず置いておきます)。

microSDじゃダメ、どうしてもSDカードスロットが欲しかった

Surface Pro 4を仕事用になぜ使わなかったかというと、予算の都合で最低スペックのものを選んだということが1つ。とはいえ、ストレージは128GBありますから、やりようはあると思います。

ただ──これは実にヘンクツな理由だとは承知しているのですが───Surface ProにはSDカードスロットがないんですよ……。あるのはmicroSDカードスロットなんですよ……。

キーボード部の左側面にあるSDカードスロット。これがあって本当に良かった

取材先ではデジカメで撮影をします。私の場合、画像保存用にSD(SDHC/SDXC)カードを使っているので、これを何のアダプターも使わず、ケーブルも用意することなく、ただノートPC本体に挿しかえてコピーしたいのです。

カードアダプターだったり、USBケーブルでPCとデジカメを接続するとか、やりようはいくらでもあるのは分かってます。超高級デジカメで高解像度撮影をしている訳ではありませんから、microSDカードだってアクセス速度的になんの問題もありません。

しかし、アダプターを床に落として見つからなくなったら? USBケーブルを忘れてしまったら?原稿を素早く書き上げるために1分1秒でも惜しいのに、荷物が増えると、それだけ気が散ってしまいそうで怖い。こうまで書くと、もう「信仰」のレベルに近いかもしれません。

ただ、VAIO A12はそんなSDカード原理主義者(?)に気を使ってくれているようで、しっかりとフルサイズのSDカードスロットをキーボード部側面に用意してくれています。SDカードスロットを搭載したノートPCはもう少数派なので、本当に有り難いです。

あと「キーボードの一番左下が『Fn』じゃなくて『Ctrl』」というのも、実は譲れないポイントなんですが、今回はこれくらいにしておきます。

時代が変わって、PCも変わった

こうして5年半ぶりの買い替えとなった訳ですが、いやほんとに細かいところで時代を感じます。まず、リカバリーディスク作成の概念はあるのですが、必要メディアがDVD-RやBDではなく、「16GB~32GBのUSBメモリ」だったのにビックリ。思わず、数百円のUSBメモリを秋葉原で調達してしまいました。

また、VAIOシリーズでは、ドライバー類の一括更新などを行う「VAIO Update」というソフトウェアがあったのですが、これも事実上廃止された模様。アップデートが必要な時は、基本的に公式サイトからファイルをダウンロードするかたちになったようです。

「VAIOからのお知らせ」アプリを搭載。かつての「VAIO Update」と似ているようで、違う

さて私のVAIO A12は1月に納品されたばかり。まだ2カ月ほどしか使っておらず、まだまだその真髄に迫り切れてはいません。ただ、そんな中でも不安を感じるのが、アプリの数不足です。

特に、動画配信や電子書籍ではそれが顕著で、YouTubeはそもそも公式アプリがWindowsアプリストアにはありません。ブラウザーで見られれば十分とも言えますが、やはり細かい部分でタッチ操作に最適化されていない印象です。またサブスクリプション系動画サービスの多くは、スマホ向けにはパケット節約目的のダウンロード機能がありますが、Windowsにまで用意されているケースは稀です。電子書籍系のアプリも、デスクトップ動作は問題ないものの肝心のタブレットモードに最適化していなかったりします。

とはいえ、せっかく高いお金を出して買ったPC。ちょっとのことにはめげず、少なくとも3年は頑張って使っていくつもりです。その中で、何か目が覚めるような使い方に出会えるといいなぁ!

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのWebニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。主に「INTERNET Watch」「AV Watch」「ケータイ Watch」で、ネット、動画配信、携帯電話などの取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2017」「ウェアラブルビジネス調査報告書 2016」(インプレス総合研究所)。