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日本からのAI開発 Google DeepMind日本拠点のグローバル開発とゲーム・高齢化対策

Googleは9日、日本におけるGoogle DeepMindの取り組みについて説明した。DeepMindの日本拠点は、日本語などのローカライズではなく、Geminiへの研究成果の展開などグローバル規模での研究拠点となっている。その技術や取り組みについて、Google DeepMind日本拠点リードの全 炳河氏が説明した。

Google DeepMind日本拠点リードの全 炳河氏

GoogleのAI研究部門となるGoogle DeepMindは、後にノーベル賞を受賞するデミス・ハサビス氏らにより2010年に設立。2014年にGoogleが買収し、DQN、AlphaGo、Wavenet、Alphafold2などの成果とともに、2017年のTransformerの発表など現在のAIの基礎となる多くの研究を手掛けてきた。2023年にはGoogle Brainと統合し、現在のGeminiなど多くのGoogle AIサービスの基盤となっている。

8月には、デミス・ハサビス氏がCEO職を退き、会長に就任。Google親会社のAlphabetとの連携を強化する体制変更も発表している。

全氏も当初は、Google側で研究に携わっており、Google アシスタントやGoogle Homeなどの音声対話AIの基礎となった「WaveNet」論文の主要著者の一人となっている。全氏以外の著者は全てDeepMindの研究者・エンジニアだったという。その後、2018年にGoogle Brain Japanを全氏と現サカナAIのデビット・ハ氏が立ち上げ、2025年に正式にGoogle DeepMindの日本拠点となった。

Google DeepMindは、ロンドンとマウンテンビューに最大級の「ハブ」を置き、それ以外にも、パリ、チューリッヒ、サンフランシスコ、ニューヨーク、トロントなどに拠点を有する。東京もアジア太平洋地域の主要拠点となる。

全氏は、「ビッグテック企業として唯一日本に研究開発拠点を置き、フロンティアモデル開発を行なっている」と語り、言語のローカライズなどの地域課題だけでなく、Gemini本体に関わる開発など、グローバル規模での研究・開発拠点としての日本の取り組みについて紹介した。

2026年9月9日はWaveNet発表から10周年とのこと

「音声」に強みを持つ日本拠点 水平・垂直での研究アプローチ

Google DeepMindでは、「ホリゾンタル(水平)」と「バーティカル(垂直)」の研究アプローチを採用する。

ホリゾンタルは、基礎的なモデルやアルゴリズム、インフラなどの基礎研究。バーティカルは教育や、ヘルスケア、ゲームなどの特定領域の研究となる。日本拠点ではこの両面において研究を進めている。

ホリゾンタルは、フロンティアモデル自体のコアアーキテクチャや機械学習アルゴリズムなどの「基盤」に関わる研究となるが、日本においては、全氏の専門が音声合成ということもあり、音声やマルチモーダル関連の研究に強みを持つ。Gemini本体のリアルタイム音声対話能力や、音声トークナイザー/デトークナイザーによる音声処理メカニズムなどにその成果が取り入れられている。

AIの話し方や感情表現、トーンを制御する「音声タグ」(Audio Tags)も東京チームの成果。さらに、日本語を含む音声対話機能を進めており、今後リリースされるGeminiにその成果を順次反映していくという。

バーティカルでは、教育、ヘルスケア、ゲームの特定業界のアプリケーションなどについて研究を進める。一例としては、教育領域向けにチューニングされたモデル「LearnLM」を挙げており、開発し、一般公開し、その知見や評価データをGeminiに反映するなどの「ループ」を回すことで、特定領域だけでなく、Gemini本体側の改善を図っていく。

その中でも、日本においては、音声のほか、「ゲーム」や「高齢化社会」が主要な研究テーマとなる。

日本におけるゲーム研究と高齢化社会のAI対応

DeepMindは、創業者のデミス・ハサビス氏もチェスプレーヤーかつゲーム開発者であり、ゲームを用いたAIシステム研究に長い実績を持つ。また、日本企業が世界的に主要なプレーヤーであることもあり、日本での重要テーマとなっている。

一例としてあげるのが、ゲームAIエージェントの「SIMA」で、GeminiベースのVLA(Vision-Language-Action)画像認識などで、テキストの指示を受け取り、Geminiが状況を認識し、出力として「コントローラーのどのボタンを押すか」を直接生成・実行する。

物理法則や空間の推移を予測・学習するワールドモデル(Genie等)とは異なり、現在の状況(画像)を見て状況を判断。人間と同じように画面の画像を見て自分がどこにいるのかを認識した上で行動する。

そのため、「ワールドモデルが生成する環境内にSIMAを置いて探索させ、成功・失敗の事例をもとに強化学習を行なったり、ワールドモデル側のハルシネーションを発見してアップデートする」といった活用を見込む。東京チームは25年後半からこの取り組みに加わっており、まだ大きな発表成果は無いが、今後の強化領域としていく。

高齢化社会向けのAIでは、介護現場向けに、介護従事者の毎日の記録作成時間を短縮するGem機能「ケア記録アシスト」を公開したほか、Gemini Liveでカメラにキャプションで物体名などを表示する「シンプルガイド」などの事例を紹介。一部の成果は、すでにプロダクトへ反映されているという。

ただし、高齢者のQoL(生活の質)向上を目指すAIエージェントなどの研究については、「まだ開始したばかり」で、課題抽出などから進めているとのこと。

グローバル開発促進のための日本拠点の重要性

Google DeepMindの全体や日本での人員は非公開。ただし、欧米に依存しない研究拠点のダイバーシティ(多様性)は非常に重要としており、日本語においても、「本格的な開発には現地での研究開発が不可欠」と語る。

例えば、日本語は漢字の読み方や表記と発音の乖離など極めて難易度が高く、こうした知見や経験を持つ人が研究に携わる必要がある。

また、また地域により利用環境も異なり、例えば日本においては公共の場で音声入力を行なう人は少ないが、インドにおいては多くの人が音声入力を使うため、他の話者と音声が混じったり、多言語下で使われるなど、地域特有の課題も多い。こうしたローカルな課題を解決しながら、グローバルモデルの発展につなげていく必要があるという。

なお、8月のデミス・ハサビス氏のCEO退任など、経営体制の変更はあったが、日本拠点における研究開発方針や業務レベルで大きな変化などは発生していないとしている。