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西川創業460年 超デジタル×超アナログで日本“不眠大国”問題に挑む
2026年5月14日 08:40
西川(nishikawa)は、創業460周年ビジョン説明会を実施した。500年企業へ向けて、「寝具を売る」モデルから、「睡眠の課題を解決し、睡眠のバイタルデータを活用する」モデルへの変革を目指す。睡眠にとどまらず、マットレスのセンシング技術の自動車シートへの活用を推進するほか、宇宙という極限環境へも挑戦していく。
西川(nishikawa)は、1566年(永禄9年)の初代仁右衛門による近江国(現在の滋賀県)における創業を起源とし、2026年に創業460周年を迎えた。祖業は蚊帳や生活用品の行商で、天災や戦争、経済危機なども含めて時代の変化に応じて事業革新を行なってきた。ふとんの販売を開始したのは1887年となる。
西川 代表取締役社長 COO 竹内雅彦氏はまず、日本における睡眠の課題について説明。日本人の睡眠時間はOECD加盟国で最短レベルだという。睡眠時間の短さは個人の健康・パフォーマンスの低下につながり、その影響は生産性やメンタルに及ぶ。これは個人の悩みではなく「企業経営・社会全体の活力の課題」であると指摘した。
睡眠時間が短いほど、国民一人あたりのGDPは低い傾向にあり、日本は最下層に位置すると説明。また、従業員の睡眠時間が長い企業は、短い企業に比べて売上高経営利益率が高いというデータを示した。
そこで西川が中心目標として掲げるのが「不眠大国日本を眠りから元気に!」。睡眠の改善が国の力を支えるテーマになるという考えのもと、500周年を迎える頃には「ライフデザイン&スリープインフラカンパニー」となっていることを目指す。
これを実現するためには、「モノづくり」から「インフラづくり」へのパラダイムシフトが必要となる。従来の“老舗寝具メーカー”としては、「何を作るか」を考え、競合他社とは「モノの価値と値頃感」を競うこととなる。
一方、ライフデザイン&スリープインフラカンパニーとしては、「一人ひとりの眠りの悩みをどう解決するか」を考え、オーダーメイド枕などに代表される、価格が高くても自分に合っていることがわかる「納得できる価値」を競うこととなる。西川ではプレミアムな価値を提供するため、データ・科学・リアル体験を融合した商品とサービスを提供していく。
竹内氏は、そういった中で「西川の超デジタル×超アナログの二刀流が最大の武器となる」と訴求。「超デジタル」の面では、nishikawa ID・アプリ・IoT、AIを活用した睡眠データの蓄積がある。事業としては、睡眠アプリ「goomo」とセンシングマットレスを開発している。
goomoは、睡眠を計測して一人ひとりに合わせた改善提案を行なうアプリ。睡眠スコアやアドバイスをはじめ、スマートアラーム、行動アシスト、寝室のスマート化、見守り機能、タレントボイス等を備え、睡眠をとりまく日常生活をサポートするとしている。
また、高精度センサーを内蔵した「[エアーコネクテッド]SXマットレス」と連携することで、自律神経バランスや無呼吸リスクといったバイタルデータ測定が可能となる。自律神経バランスから導くウェルビーイング機能として、ファッションサブスク・レンタルのエアークローゼット監修「今日のおすすめファッションカラー」、Alexa対応「コンディション別モーニングミュージック」なども導入している。
超アナログの面では、直営店舗を全国展開するほか、睡眠コンサルティングサービス「眠りの相談所」を展開し、睡眠の質や寝室環境を測定・可視化する「睡眠環境解析サービス」「寝室チェックシステム」などのメニューで悩みに合わせたアドバイスを行なっている。
西川は「ビヨンドスリープ」のテーマも掲げており、寝具だけにとどまらないテクノロジー開発も進めている。大阪・関西万博では、自律神経を計測できるセンサーをクッションに内蔵した技術を公開。座るだけで自律神経の状態をリアルタイムに把握できるもので、その時の状態に合わせた飲食店のメニューをレコメンドするという体験を万博会場で提供した。食だけではなく、音楽やファッションのレコメンドなども推進する。
さらに、マットレスに内蔵したセンサーのデータを活用し、眠りの状態に合わせてふとんの中の温度・湿度を自動的に快適な状態に調整するスマートマットレスの開発も進めている。竹内氏は「これはもはや、寝具の枠を超えた眠りのためのパーソナルインフラ」と述べた。
宇宙を「実験場」として地上の課題を解決する
竹内氏は将来的な取り組みについて、「西川の睡眠技術を自動車シートに本気で導入しようとしている」と説明。異業種とのコラボレーションではすでに、ANAの国際線ファーストビジネスクラスのシートや、JR東日本の「四季島」などで、西川の技術が採用されているという。
自動車シートでの導入については、前の日の睡眠データを解析し、その日の疲労度、覚醒レベル、集中力を予想。そして例えば、居眠りの予兆を検知したら警告を出す、疲労度が高まった際には自動運転を強化する、今日は運転を控えたほうがいいという判断をデータがサポートする、といった活用を想定しているという。
「人の命に直結する領域で睡眠データが社会インフラになる。健康経営、介護、ホテル、住宅、スポーツ、教育など、広げられるテーマは大きい」とした。
さらにその先には、宇宙への挑戦がある。竹内氏は「話題作りのためではない」と前置きしたうえで、「極限環境で人がどう眠るかを考えることは、最先端の挑戦であると同時に、地上にいる私たちの眠りを見直す近道」と説明。温度、湿度、姿勢、無重力、閉鎖空間、体内リズムの乱れといった、過酷な条件で成立する睡眠設計を、地上での高齢者ケア、長距離移動、災害時の対応に応用する。
西川 代表取締役会長 CEO 西川八一行氏によれば、同氏が西川のトップとなった20年前には売上拡大を目指した取り組みは、ファッションブランドのライセンスブランドでの販売、毎週のように実施するセールなどが中心だったという。さらに、2019年に経営統合したが、当時は東京の「西川産業」、大阪の「西川リビング」、京都の「京都西川」がライバルとなって競っている面もあった。
3社の統合を経て、割引をせずとも予約が埋まる店舗展開を実現できており、今後は「さらに、新しい技術やAIの導入などを通じて一人ひとりのお客様に貢献していきたい」と説明。「ビヨンドスリープの考えのもと、どんな服を着たらよいか、どんな香りをまとったらいいかといったことを提案することでQOLが上がり、労働生産性も上がる。また、病気の予兆を発見することで社会保障費が上昇しにくくなる、介護の現場で少ない人数でケアができるようになるといった、大きな社会課題の解決に踏み込んでいきたい」と述べた。














