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Slack、AI本格展開 自動翻訳やハドル議事録 文脈・作業理解をAI支援

今後提供開始予定の「AIメッセージ説明」

Slackを展開するSalesforceは17日、Slackにおける「Slack AI」の新機能などを発表した。以前から段階的に導入してきた「エンタープライズ検索」、「翻訳」、「AIを使用してハドルミーティングの議事録を作成」、「チャンネルとスレッドの要約」などの機能が、17日からはより多くの有料プラン契約者が利用可能とする。

今後提供する新機能として、「AIメッセージ説明」、「AIアクションアイテム」、「CanvasでのAI文章作成支援」、「AIプロフィール要約」なども発表した。「AIメッセージ説明」は、メッセージの文脈をAIが読み込み、部外者には意味がわからないような話もわかりやすく解説してくれる機能になる。

Slackに自動翻訳 世界中の人と日本語でやりとり

Slackは2013年からサービスが開始された組織や組織を超えたチームのやりとりを容易にするコミュニケーションツール。Webブラウザーやモバイルアプリなどを利用して、組織全体や部課、事業ごとにメッセージのやりとりを行なえる。

チャットツールから始まり、近年ではハドルミーティングと呼ばれる複数ユーザーによるライブ音声でのやりとりが追加され、年々機能を向上させている。

Slackの翻訳機能

Slackが近年力を入れているのが「Slack AI」と呼ばれる生成AIの基盤モデル(サービスの背後で動いているソフトウエア群のこと)を活用したAI機能だ。

その代表例が、「翻訳」の機能になる。簡単に言えば、日本語から英語、英語から日本語への翻訳をSlack AIが自動的に行なう。例えば、チームメンバーが日本語だけでやりとりをしていると、普通にメッセージは日本語だけになる。

翻訳機能の動作、「Translate」のボタンを押すだけで日本語が英語に翻訳される。もちろん逆も可能

しかし、後から日本語が話せないチームメンバーが追加された場合、日本語のやりとりだけの中に放りこまれた形となり、途方に暮れるだろう。そこで、Slackの翻訳機能を利用すると、メッセージの下部に用意されている「Translate」ボタンを押すと、あらかじめ自分の母国語として設定した言語に自動で翻訳されて表示される。

これにより、これまではGoogle 翻訳などの他のサービスでいちいち翻訳していた母国語以外の言葉を、Slack上で文字通りワンタッチで母国語に翻訳できるようになる。英語のメッセージを日本語にすることも可能で、グローバル企業に勤めていて、Slackでのやりとりが多いが、英語は苦手、というユーザーにもメリットがある。

他にも、より詳細な検索を可能にする「エンタープライズ検索」、ハドルミーティングの議事録を自動作成してくれる「AIを使用してハドルミーティングの議事録を作成」、チャンネルやスレッドの要約をAIが行なってくれる「チャンネルとスレッドの要約」などのSlack AIの機能として用意されている。

エンタープライズ検索(クリックして再生)
AIを使用してハドルミーティングの議事録を作成(クリックして再生)

SlackはこうしたAIの機能を段階的に提供してきたが、17日よりこれらの機能は、契約している有料プランに応じてすべてのユーザーが利用できるようになった(フリープランではAI機能は利用できない)。

プロプランでは「ハドルミーティングの議事録を作成」と「チャンネルとスレッドの要約」が利用可能で、ビジネスプランではそれに加えて「翻訳」が利用でき、最上位のEnterprise プラスプランではさらに「エンタープライズ検索」が利用可能になる。

AIが“要するに”をまとめてくれる「AIメッセージ説明」

また、Slack AIの新機能として、「AIメッセージ説明」、「AIアクションアイテム」、「CanvasでのAI文章作成支援」、「AIプロフィール要約」などを今後導入する計画であることを明らかにした。

AIプロフィール要約の動作

AIメッセージ説明(AI message explanations)

AIメッセージ説明は、AIがそのメッセージの前後のメッセージも読み込み、その文脈を理解して、ユーザーにわかりやすく解説してくれる機能。

通常チーム内のメッセージはそのチームでは常識となることは省いて書かれていることが多い。そこで、SlackのAIがそのメッセージのスレッド全体など読み込み、文脈を理解して、初めてそのメッセージを読むようなユーザーにもわかりやすい文章にしてくれる機能となる。

例えば、新たにチームに加入した人が、チームのSlackを読んでもさっぱり理解できないといったときに、AIに教えを請いながらやりとりすることで、チームのルールや文脈などの理解を手助けしてくれる。

AIアクションアイテム(AI action items)

AIアクションアイテムは、アクションと呼ばれる他のユーザーに対応を促す機能を、AIがユーザーに代わって行なう機能だ。例えば、この資料の最新版がほしいというアクションが設定されている場合、従来はユーザーが自分自身でその資料ファイルを探してきて添付するという対応になっていた。

AIアクションアイテムを利用すると、ユーザーはアクションボタンを押すだけ。あとは、AIがそのアクションが何なのかを理解し、代わりに資料を探してきて添付してくれる。

CanvasでのAI文章作成支援(AI writing assistance in canvas)

CanvasでのAI文章作成支援は、Slackが23年に導入したCanvasにAIによる文章自動生成機能を追加するものだ。

Canvasはコンテンツの作成や管理、ワークフローの追加などが行なえる機能。新機能は、そのCanvasに何かを書き込みたいときに、AIが会話などから自動で重要なポイントを抽出し、最初のドラフトを作成してくれるというもの。Canvasにどんなことを保存したり書いたりということがわからないというユーザーでも、より簡単にCanvas活用を開始できる。

AIプロフィール要約(AI profile summaries)

AIプロフィール要約では、Slackのプロフィール機能を拡張し、AIがそのユーザーの投稿などを読み込んで解析することで、より詳細なプロフィールを作成する。

例えば、ユーザーが長年あるプロジェクトに関わっており、「この領域の業務に非常に詳しい」などを把握し、プロフィールを作成。そのユーザーにどんなことをお願いすれば仕事が円滑に進めるようになるかなどが一目瞭然となる。

こうしたSlack AIの新機能は、現在開発中で、まもなく順次導入される計画だ。なお、どのプランで利用できるかどうかは現時点では非公表で、実際に展開する段階で順次案内するとしている。