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スマホ新法は競争促進には悪影響も アップルが懸念声明
2025年6月19日 09:10
グーグルやアップルなどの大手テクノロジー企業等を規制する「スマホソフトウェア競争促進法」(スマホ新法)が25年12月18日に施行される。一方、その施行に向けた懸念も指摘されおり、同法の規制対象となるアップルも6月上旬にパブリックコメントを提出した。規制への懸念を表明するとともに、ガイドラインの明確化や慎重な施行を求めている。
スマホ新法では、公正取引委員会が、OSやブラウザ等の「特定ソフトウェア」を提供する大規模事業者について、ソフトウェアの種類ごとに規制対象事業者として指定。指定事業者は、一定の行為の禁止(禁止事項)や、一定の措置を講ずる義務付け(遵守事項)が定められる。主な禁止・遵守事項は、「他の事業者のアプリストア提供を妨げない」、「他の課金システムの利用を妨げない」、「デフォルト指定を簡単な操作で変更できるようにする」など。アップルは、OS、アプリストア、ブラウザについて規制対象事業者に指定されている。
同法では、「(アップル等)プラットフォーム事業者による市場支配的行為を是正し、新たな事業者の参入やイノベーションを促すこと」が目的のひとつとされている。しかしアップルは、規制による日本市場での負担により、新機能の投入が遅れる、あるいは提供されないといった懸念があるほか、OS機能の開放についてもプライバシー等の懸念があること、知的財産権への「フリーライド」などの課題があると指摘。適切に施行されなければ、競争やイノベーションを妨げる可能性があるとする。
アップルがパブリックコメントで要求しているのが、ガイドラインの明確化だ。例えばアップルのOS機能へのアクセスを開放する要求について、同法では、サイバーセキュリティの確保、スマートフォンの利用者情報の保護など、「正当化事由」がある場合は規制の対象外としている。
しかし、ガイドラインでは正当化事由を適用できる具体例については触れていない。アップルは、どのようなケースであればアクセスを制限できるのか、明確にするよう求めている。
例えば、欧州でのデジタル市場法(DMA)の開始により、OSの機能開放が進められた。その中で一部の企業は、メッセージやメールの閲覧、通話履歴の確認、アプリの追跡等を要求する動きを見せているという。こうしたユーザーのプライバシーやセキュリティを脅かす懸念に対して、対抗するためにも利用ケースを明確に限定する必要があると、アップルは主張している。
一例として、コロナ禍で使われた「接触確認」のような機能を、出会い系アプリに使うといったことは要求できるべきではないと説明。OSアクセス開放は、用途限定の必要があると強調する。
また、25万以上のAPIを公開し、2024年には300億ドル以上の研究開発投資を行ないエコシステムを構築していることから、「競合他社にAppleの独自技術への無制限のアクセスを認めるべきではない」とし、消費者保護の観点からも「OS機能へのアクセス提供に伴うリスクを最小化することが認められるべき」と訴えている。競合他社がOS機能に“フリーライド”しながら、ユーザーのプライバシーを危険にさらす危険について、強く反対している。
App Store以外のアプリストア開放については、多くの不正アプリの削除や却下を行なってきた実績を説明するとともに、アップルの管理が及ばず「新たなリスク」になると指摘。アップルなどの指定事業者が、継続的に審査プロセスに関われるよう、代替アプリストアの適格基準を定めてよいと明示するようガイドラインの変更を求めている。
決済システムの代替システムについては、サブスクリプショントラップや誤解を招く支払い手法などのリスクを指摘。特に「ファミリー共有」や「問題の報告」「承認と購入のリクエスト」など子供や家族を保護する機能が制限されることへの懸念を示している。そのうえで、問い合わせの複雑化なども懸念されることから、アップルからユーザーに対し、「Appleとの取引ではなくサードパーティとの取引」と明確に伝えることのできる、「適切で十分な警告」を表示することを公取委に求めている。