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IOWNで1000km先の山岳トンネル工事をリアルタイム遠隔監視
2025年8月7日 15:00
安藤ハザマとNTTは、1,000km離れた遠隔地からIOWN APNを使って山岳トンネル工事をリアルタイムで管理するためのドキュメント「Use Case and Technology Evaluation Criteria -Construction Site」を一般公開した。
トンネル建設現場におけるIOWNを活用した施工管理の遠隔化・自動化について重点的に取り組むべき業務領域とユースケースを策定し、満たすべき評価基準などを取りまとめたもの。
建設業界では、労働力不足の一方、自然災害の激甚化・頻発化や社会インフラの老朽化に伴い工事量の増加が見込まれるなど、多くの課題に直面している。こうした課題解決のため、業界全体で生産性向上に向けた建設現場のオートメーション化が行なわれている。
特にトンネルの建設現場では、危険を伴う環境での作業が多く、これまではベテラン人材の能力に依存して作業が行なわれていた。しかし、人材確保の面でも課題があり、崩落や事故の予兆を検知するデータ解析や、オフィスから現場の管理や検査を実施する遠隔施工管理などの取組みも進められている。
遠隔施工管理などのために現場状況を正確に把握するには、リアルタイムに多様なデータをやりとりする大容量・低遅延通信が必要になる。両社はIOWN APNを活用することで、こうした課題の解決に取り組む。
トンネル施工管理の遠隔化・自動化に向けたシステム構築を推進するためのリファレンス実装モデルを作成するため、現状のトンネル現場における問題・課題をベースに取り組むべき業務領域を想定。最大1,000km離れた施工者や発注者のオフィス、現場、データセンタなどが相互にIOWN APNで接続された構成として、早期に実現が見込める4つのユースケースを策定した。
山岳トンネル建設現場では、さまざまな工程が自動化されているが、現場での安全確認など、未だに人員が必要なケースも多い。また、粉塵や高温多湿で現場環境も劣悪になる。IOWN APNにより、これまで熟練作業者依存だったトンネル工事を遠隔・リアルタイム化することで1,000km離れた場所からでも安全で効率的な管理を可能にし、人員不足にも対応する。
例えば、現在は安全点検の多くを専門家が目視で行なっているが、現場の変化をすべて追うことはできない。専門家の目視に頼らず現場の変化を把握できるインフラが必要とされている。これを解決するため、IOWN APNによる大容量・低遅延通信でリアルタイムのデータ転送を行なうことで、建設現場の高解像度映像やセンサデータを遠隔地に集約。AIによる自動分析によって常時監視や早期安全リスク検知を実現する。
また、掘削後の形状が設計通り確保できているか確認する場合は、危険な切羽エリア(トンネル掘削の最先端部分)で長時間の確認作業が必要になる。熟練者の作業が必要で、そのために工事も中断される。これらを解決するため、IOWN APNを介して現場と遠隔処理環境を接続。大容量点群データ解析にかかる時間を工事進行を妨げない60秒にまで短縮しながら安全・品質判断の即時性も確保する。
施工した光ファイバは定期的な点検にも活用。光ファイバ等をセンシングに転用し、延長方向の任意の箇所の歪み検知と加速度計測を行なうことで、剥離や変形などの経年劣化を遠隔で常時監視するシステムも構築する。
今後はパートナーを募り、2026年3月までに開始予定の実証を通じて、その有効性や実装可能性を評価することで実装例(リファレンス実装モデル)を確立。トンネル建設工事に関わるステークホルダーにとって有益となる次世代ICT基盤を構築するとしている。







