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ソフトバンク、生成AIで通信品質を高精度予測

通信品質をAIで予測

ソフトバンクは、通信業界向けの生成AI基盤モデル「Large Telecom Model」(LTM)の開発において、SB Intuitionsの国産LLM「Sarashina」(さらしな)を組み合わせた国産AIモデルを構築した。ソフトバンクの通信ネットワークのノウハウや独自データを国内のデータセンターで学習・推論させることで、安全性や主権性を兼ね備えた生成AI基盤モデルを実現したという。

ソフトバンクは、モバイルネットワークの運用業務の効率化や高度化を目的に、この国産AIモデルとして構築したLTMの社内利用も開始した。LTMを活用して大規模イベント開催時における通信品質を予測する「通信品質予測特化型モデル」を開発、9月27日に東京都北区で開催された「北区花火会」の通信品質予測を実施した。

このイベントエリアはトラフィックが集中しやすく、複数の基地局からの電波が重なるため、1,000件以上の基地局の状態をLTMに入力し、各基地局の接続数の変化などを予測。当日の実測データと比較したところ、周波数ごとの通信品質を90%以上の精度で予測できることが確認されたという。

さらに、強化学習の導入によるLTMの高度化も進め、AIが最適な通信環境を実現するために自律的に学習を行う環境を構築している。

LTMを活用することで、ネットワーク運用プロセスで設定変更などに要する時間を数日から数分へと大幅に短縮することが可能で、属人化の解消や人為的ミスの防止、作業時間の大幅な削減が期待できるとしている。また、高いセキュリティー環境下で利用できるため、将来的に外部の事業者へのサービス展開を検討することも可能としている。

無線信号処理をGPUで実現

ソフトバンクはまた、米国カリフォルニア州サンタクララにあるNVIDIA本社で展開しているAI-RANのプロダクト「AITRAS」(アイトラス)において、NVIDIA製GPUを活用して無線信号処理を完全にソフトウエアで実行する「AI-RAN」を構築したと発表している。

AI-RANを活用してMassive MIMOに必要な無線信号処理を実現、ダウンリンクで16レイヤーのMU-MIMOの屋外実証に成功した。

無線信号処理は従来、FPGAやASICなどの専用ハードウエアで実行されることが一般的だったが、今回の屋外実証ではCUDAを使用して高速化されたNVIDIA GPUの大規模並列演算を活用して全ての処理をソフトウエアで実行、実際の通信環境下で高い性能を示すことが確認できたという。

これにより、AI処理と統合可能な次世代vRAN(virtualized Radio Access Network、仮想無線アクセスネットワーク)アーキテクチャーの有用性が実証されたとしている。