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法人カード「UPSIDER」が“決済以外”に拡大 複数SaaSの申請・承認をSlackで完結

法人カード「UPSIDER」などを展開するUPSIDERは、決済以外の領域に事業を拡大する。Slack上でチャット形式で契約書などの締結・稟議承認・支払いといったアクションを完了できる「AI Coworker」を8月から開始する。

UPSIDERは法人カード「UPSIDER」やビジネスあと払いサービス「支払い.com」を展開している企業。法人カードのUPSIDERは、利用限度額や会計処理などの財務課題を解決する法人カードとして、アクティブな利用企業は数千社以上、累計決済額は1,000億円を突破している。

直近では、10秒で領収書を登録完了可能なiPhoneアプリや、クリックひとつで仕訳・証憑を会計ソフトに同期する機能をリリース。また、Visaリアルカードも提供し、実店舗、オンラインどちらでも利用可能となっている。

法人カードのUPSIDER

これまでのUPSIDERは、“決済”を軸に事業展開していたが、法人カードの顧客基盤を活かしながら、対応業務を広げるとともに新たな与信サービスにつなげていく。そのための新たなサービスが「AI Coworker」だ。

Slack上で契約書などの申請・承認を完結「AI Coworker」

「AI Coworker」は、SlackのチャットでAIに依頼すると、AIが申請者のポジションや目的に応じて稟議書作成などの業務を代行。会話形式で契約書等の締結・稟議承認・支払いなどのアクションをSlack上で完結できるサービスとなる。

AIが企業の申請ルール、組織図などを学習し、従業員の役割に応じたリマインドや各ツール間のデータの突合などを代行。企業の管理者・従業員が苦労する、複数のSaaSにそれぞれログインして行なう細かな業務を、AI Coworkerが「秘書」として代行することを目指す。

契約書管理システムや会計システムは、UPSIDERが開発するのではなく、外部のSaaSツールと連携。freee会計、DocuSign、クラウドサイン、Salesforce、Kintone、Google Workplaceなどと、年内に連携予定としている。

承認だけでなく、差し戻し、却下のアクションもSlack上で対応可能で、申請が滞留している場合は、承認者に向けたリマインドもSlack上で行なう。別システムに遷移せずに、Slack上で申請や承認作業を完結できることが特徴で、承認者の時間を使わず、本来業務に集中可能にする。

AI Coworkerの利用イメージ
AI Coworkerデモ動画

法人カードのUPSIDERは、カードだけでなくワークフローや支払い管理機能などをシステムとして提供。利用先制限や上限設定・稟議申請など決済前の手続きから、決済後の利用履歴の即時管理画面反映、証憑回収・紐付け、稟議への紐付け、Slack連携による通知・証憑提出などを一気通貫して実現できる点が特徴で、特に上場を目指しているなどでガバナンスを重視するスタートアップ企業で導入が進んでいる。

こうしたUPSIDERの機能を、AI Coworkerにより契約など決済以外の業務領域にも広げていく。

AI Coworkerは、法人カードUPSIDERのユーザーやスタートアップ企業であれば、追加費用無しで導入可能で、8月のスタートを予定。AI Coworkerにより法人カードのUPSIDERの導入促進を図る。また、企業のガバナンス体制や意思決定スピードなど、蓄積された事業データをもとに与信枠を付与できることから、これらを生かしたビジネス展開を図っていく。

なお、AI Coworkerの仕組みはSlack以外のMicrosoft Teamsなどのチャットツールにも対応可能とのことで、今後検討していくという。

「UPSIDER Capital」設立 現在・未来のデータを活用

UPSIDERでは与信を生かしたビジネスを強化する。グロースステージ以降のベンチャー企業に対する融資を進めるための子会社「UPSIDER Capital」を5月31日に設立した。

法人カードのUPSIDERは、過去の実績である財務諸表をベースにした与信だけでなく、リアルタイムのデータも活用し、事業成長スピードの速い企業への高額な利用限度額を提供してきた。さらに今後AI Coworkerの導入により、「何を仕入れるのか」「誰を採用するのか」「いつオフィスを移転するのか」など、現在と未来の企業データも取得可能になるため、これらの先行指標も融資判断に活用していく。

UPSIDER Capitalでは、UPSIDERのAI与信のデータに加え、今後AI Coworkerで取得できるさまざまなデータをもとに、スピーディーかつ大きな金額の融資を可能とする。UPSIDER Capitalは融資は行なわず、成長企業の信用力を評価し、大手金融機関に対して提供。そのデータに基づき、大手金融機関が企業へ融資する仕組み。

UPSIDER 代表取締役の宮城徹氏は、「5億、10億円の借り入れといった場合、現状貸し手がいない。大手の銀行は赤字だと貸してくれない。金利が3%でも5%でもいいので大きなお金を借りたいというニーズがあるがそこに貸し手がいない。ここが今のベンチャー界隈の課題になっている」とし、UPSIDER Captalがこうしたニーズに答えていくとする。

UPSIDER 共同 代表取締役の宮城徹氏

UPSIDERでは、生産性向上のための「AI Coworker」と大手金融機関と協力する「UPSIDER Capital」のスタートにより、「カード会社」から「AI化された金融機関」に転換。日本のスタートアップ企業の資金調達の選択肢拡大を目指す。