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公取委、Apple・Googleの自社優遇に懸念 アプリ内課金の開放など指摘

公正取引委員会は、「モバイルOS等に関する実態調査報告書」を公開した。アップルとグーグルに対し、エコシステム全体にわたる自社優遇が独禁法上の問題になるおそれがあると指摘する内容で、自社以外のアプリ内課金システムの利用を許可することなど、具体的な提案も行なわれている。

公正取引委員会は、消費者にとってスマートフォンは生活必需品になっているとした上で、サービスの拡大に必須となっているのが、モバイルOSとアプリストアなどの、アプリ流通ルートへのアクセスであるとし、そこでの競争の実態を把握することは、競争環境の整備に非常に重要であると位置づけている。

報告書では、競争環境の評価として、アップルとグーグルによるモバイルOS市場(iOS、Android)とアプリストアの両方の市場において「十分な競争圧力が働いていない」と指摘している。

自社優遇に懸念

アプリストアで競争上の懸念とされているのは、OSを提供するアップル・グーグルが自社を優遇する取り組みを行なうことで、ライバルを排除し、場合によっては消費者に不利な選択を迫るというもの。モバイルOSにおけるシェアはAndroidが53.4%、iOSが46.6%と両社が分け合う形になっている。

対応策としてまず、自社優遇行為の防止が挙げられている。OSの機能・アップデート情報については、アップルやグーグルが把握する内容と同様の情報にアクセス許可を与えるべきとしている。

アプリストア運営については、近年は世界的にも問題になっている「自社以外のアプリ内課金システムの利用許可」を指摘している。

また、アプリストアの運営に関する費用・収入の明確化のほか、手数料率の個別交渉に積極的に応じること、他社アプリから生成される非公開のデータを競合アプリの開発目的で使用しないことなども指摘している。

OSやアプリストアからなるモバイルエコシステムでは、開発元であるアップルやグーグルが仕様を変更した後に、関係者が対応に追われるというケースは少なくない。報告書では、事前にルール変更の内容を通知し、それが必要な根拠を提示した上で、問い合わせ対応を適切に行なうなど十分に説明することが公正さの確保につながるとしている。

このほかには、データのポータビリティを通じて消費者がプラットフォームの乗り替えをしやすいよう相互運用性を向上させることにも言及。また、新たなモバイルOSやアプリストアの参入を促進させる取り組みとして、「競合モバイルOSの開発を認めない趣旨の契約」を結ばないよう指摘。セキュリティやプライバシーに問題がない場合は、自社アプリストア経由以外のアプリのダウンロードを可能にすることなどにも触れている。

これらの自社優遇を通じたライバルの排除は、独占禁止法上の私的独占、取引妨害、抱き合わせ、排他条件付取引、拘束条件付取引、優越的地位の濫用など、さまざまな違反行為に抵触する可能性がある。

アップル、グーグルが自主的に違反行為の防止に取り組むのが望ましいとする一方、実行されるとは限らないともしており、法整備も有効と指摘している。

同委員会は今後、モバイルOSとアプリストア運営事業者(ほとんどのケースではアップルとグーグル)に対し、独占禁止法上で問題となる具体的な案件に接した場合は厳正・的確に対処するとしている。

公正取引委員会は、大規模な取り締まりの前に調査を行なって、事実関係を整理・公開するケースがあり、報告書は警告ともとれる内容。今後まったく改善されない場合は、指摘しているような独占禁止法違反に問う可能性もあるとみられる。