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政府、スマホOSやアプリストア規制案 App Store以外でもアプリを

政府は「デジタル市場競争会議」の第7回を開催し、「モバイル・エコシステムに関する競争評価」の最終報告案を公表した。スマートフォンやデジタルサービスのプラットフォーマーに向け、競争環境を確保するための対応策が示されている。最終報告を元に今後は必要な法制度を検討、パブリックコメントも募集していく。

スマートフォンが社会の基盤となり、グーグルやアップルなど、モバイル・エコシステムを形成しているプラットフォーム事業者は、大きな影響力を持つに至っている。政府は公平・公正な競争環境の実現を目指し、プラットフォーマーの影響力が競争環境に与える影響について評価を続けてきており、2022年4月には中間報告を公表していた。

デジタル寡占市場の治癒は困難、「事前規制」「共同規制」の2つをミックス

モバイル・エコシステム全体では、グーグル、アップルの寡占状態であり、ルールを決定できる立場にあり、有力な地位を強化、固定化される循環ができていると指摘。サードパーティは常に対等な立場にないほか、排他的行為や参入抑制といった競争圧力を排除する体制に懸念を示している。そのあるべき姿は、多用な主体によりユーザーに選択の機会が確保されることとし、公平な競争環境のために競争圧力を高める対応が必要としている。

一方で、デジタル技術を駆使する市場では、有利な地位が強力に固定化され、市場による自然治癒に期待することは困難であるとも指摘。加えてユーザーも選択肢の認知の限界や現状維持バイアスなど、選択・判断の合理性について制約があり、プラットフォーマーの選択次第でユーザーの判断の余地をさらに低下させられる懸念があるとした。

さらに、モバイル市場は無償サービスが多く、各市場・レイヤーでの影響力が複雑に絡み合うため、公正競争を求める従来の手法では判断が困難か評価が難しいとし、これまでの競争法とは異なるアプローチが必要と結論付けている。

そこで会議では、「事前規制」による対応が適切としている。事前規制は、事前に一定の行為の禁止や義務付けを行なうアプローチ。

また一部の問題に対しては、すでに施行されている「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」(透明化法)のような「共同規制」の枠組みが適しており、「事前規制」「共同規制」の2つを組み合わせたアプローチができるとしている。

OS、アプリストア事業者は規制対象

具体的には、一定規模以上のモバイルOSの提供事業者(現時点ではグーグルとアップル)は規制の対象とすべきとする。

またアプリストアやブラウザ、検索エンジンなど各分野で一定規模以上のサービスを提供する事業者も規制の対象にすべきとした。

これら規制対象事業者は、遵守状況について自ら点検し説明を実行。ステークホルダーによるチェックも促す。新たな規制の遵守状況について執行機関に報告書を提出し、この報告書を公表する。

一定規模以上のモバイルOSの提供事業者(現時点ではグーグルとアップル)は規制の対象とすべきとした

最終報告書案ではまた、アプリがユーザーを追跡する許可について、アップルは自社サービスを肯定的にみせる文言をダイアログなどに表示して自社を有利にしているという懸念や、グーグルが2020年までニュースコンテンツにAMPフォーマットを採用するよう促し、自社検索エンジンが扱いやすいデータ形式で提供させて競争力を優位にしていたという例などで、透明性・公平性への懸念を示している。

不満の多い決済・課金システムの独占

アプリストアの決済・課金システムにおいては、アプリ開発者に対してグーグル・アップルそれぞれが自社の決済・課金システムの利用と、30%や15%といった手数料の支払いを義務付けている。

両社は手数料について「ストア利用の対価」と主張する一方、アプリ開発者からは「手数料負担が収益を圧迫している」「サービスが手数料に見合っていない」「負担は一部の開発者に偏っている」といった、妥当性と公平性についての根強い不満がある。開発者は多用な料金プラン・サービスが実現できないほか、返金やキャンセルなどでユーザーとスムーズにコミュニケーションできないといった問題点も取り上げられている。

アプリストアの問題点

さらに30%の手数料を支払う(=規模の大きい)事業者の7割以上が、サービスの対価として30%の手数料は高いとアンケートに回答。「手数料の根拠が不明」といった根本的な疑問の声も挙がっている。手数料を支払う事業者の約6割は、グーグル、アップル以外の決済・課金手段が使えることを求めており、ユーザーが決済方法を選べるようにすべきとしている。

最終報告書案における競争上の評価も、代替決済サービスの参入の阻害、多用な料金プランを妨げるイノベーションの減退、ユーザーの選択肢を奪う、開発者の収益を圧迫することによるイノベーションの減退など、さまざまな問題点が列挙されている。

こうしたことから、一定規模以上のアプリストアを提供する事業者は、自社の決済・課金システムの利用を義務付けることを禁止する、という方向性が打ち出された。また手数料などは、公正で合理的かつ非差別的なものとすることを義務付けるとしている。

自社の決済・課金システムの利用を義務付けることを禁止するという方向性

決済・課金システムに関連して、現在のアプリストアで配信されているアプリは、アプリ内から外部Webサイトに遷移してデジタル商品を購入するような仕組みや案内方法が、ストアの手数料支払いを回避するフリーライドであるとして制限されている。これもユーザーの選択肢を狭める行為であると指弾されており、アプリ内から別の決済手段といったほかの取引を案内することを無償で容認することを義務付ける、としている。

iOSはサードパーティ製アプリのインストールに対応を

アプリの流通経路では、iOSにおいてApp Store経由以外のアプリのインストールは原則として認められておらず、競争上の問題が生じしていると指摘。これを受けて、一定規模以上のOSを提供する事業者は、セキュリティ・プライバシーの確保が図られているアプリ代替流通経路を実効的に利用できることを義務付ける、という方向性が示された。これにより、「信頼あるアプリストア間の競争環境整備」を図るとしている。

アプリ代替流通経路の容認について

ブラウザ、通信機能など多方面で競争上優位になる取り組みを禁止

このほか、アップルのiOSがブラウザのエンジンにWebKitの利用を義務付けていることを禁止するといったものや、プリインストールやデフォルト設定の強い排他的効果を減らす措置や選択画面の義務付け、Google 検索におけるGoogle Mapの優遇の見直し、プラットフォーム上で取得するデータについてサードパーティが入手できないデータを対抗策として用いないこと、OS間のデータポータビリティ(機種変更時などでのデータ移動)の促進、アップルの自社製チップセットの通信機能に一定期間自社アプリしかアクセスできないようにした競争上優位になる措置の禁止、iOSのNFCの技術仕様がオープンになっていないこと、ボイスアシスタント機能への他社のアクセス制限など、多方面にわたって問題点や対応の方向性が示されている。

ブラウザをはじめ、公正な競争を阻害するという要因が多方面にわたって指摘された