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AIが私にくれた2つの“翼”
2026年4月9日 09:00
インターネットの良いところは、国境がなく、海外の情報にも簡単にアクセスできるところです。近ごろは生成AIにより翻訳サービスの品質が格段に上がったこともあり、Webブラウザの拡張機能を追加すれば、テキストを選択してポップアップするボタンをクリックしたり、右クリックしたりするだけで、自然で正確な翻訳を簡単に得られます。海外のニュースやフォーラムも臆せずに読んだり調べたりでき、世界中を自由に飛んでいる気分です。
近年で翻訳品質が大きく向上したと感じたのは「DeepL」がきっかけでしょうか。独自のアプローチと高い精度ですぐに注目を集めていたように思います。その後、ChatGPTをはじめ一連の生成AIモデル(LLM)が広まると、言語翻訳の品質はさらに高くなりました(DeepLも最近はLLMを取り込んでいます)。一方で、生成AIを翻訳で使う場合、「この目の前の文章を翻訳してほしいだけ」という場合に、導線の面では煩わしい部分が残っているのも事実です。
そうした「確かな翻訳品質」と「手軽さ」を満たすサービスがないかと探していたところ、国産で翻訳に特化したPreferred Networksの「PLaMo翻訳」の存在を知りました。2024年8月からベータ版が、2025年5月からは正式版が提供されています。
PLaMo翻訳の開発背景や特徴はニュース記事に譲りますが、Webブラウザに追加できる拡張機能により簡単にテキストやページ全体の翻訳が可能で、その翻訳品質も十分に満足のいくものになっていると感じました。
料金体系もけっこう良心的といえる内容で、Webブラウザの拡張機能を使う「ブラウザ翻訳」は、1カ月に20万文字までは無料です(2026年3月時点)。1日に数件の英文のニュース記事を翻訳するといった程度なら、無料プランの範囲に十分に収まりそうです。
海外ニュースサイトを臆せず閲覧
プライベートでの話ですが、海外で起きていることを素早く正確に知りたいと思った時、海外のニュースサイトにアクセスするのが、手っ取り早いと思っています。ただ、公式な日本語ページがあるのはBBCやWSJ(有料)、国際的な通信社など一部に限られ、伝統的な新聞社などは言語の壁が高いと感じていたのですが、DeepLを含め、精度の高い翻訳サービスが手軽に使えるようになったことで、臆せずにアクセスして、すぐに情報を得られるようになりました。
私は、ロシアがウクライナに侵攻したのをきっかけに、欧州の生の反応が知りたいと感じ、英ガーディアン紙をチェックするようになりました(寄付で閲覧制限を解除しました)。2022年当時はDeepLを使っていました。同紙はリベラル寄りで環境問題などでは厳しめの主張が目立ちますが、政治や経済の紙面を通じて欧州の混乱をよく理解できました。取り扱う話題はスポーツからビデオゲームまで幅広く、東京特派員がいるので日本国内の大きな話題もタイムリーに掲載されます。
第二次トランプ政権が誕生した際には、アメリカ発の生の情報を知りたいと思い、アメリカの新聞社もチェックするようになりました。
これらを自由に読み、理解するのは、私の英語力では本来かなりハードルが高いのですが、生成AIにより正確で自然な翻訳を得られるようになり、臆せずに読めるようになりました。
Webサイト以外でも翻訳して読みたい
「日本語に翻訳して読みたい、理解したい」というケースのほとんどはWebブラウザ上のコンテンツなので、Webブラウザの拡張機能で対応できますが、そこから漏れるものもあります。私にとって代表的なのは、PC向けのゲームプラットフォーム「Steam」に掲載されるアップデート情報です。
SteamはWindowsアプリケーションでゲームを管理しますが、タイトルごとに、バグ修正やアップデートなど、開発者側からの各種の見逃せない情報が掲載されます。海外メーカーのタイトルは、ゲーム内では日本語をサポートしている場合であっても、Steam上を含めゲーム外の情報発信は英語がほとんどです。
ここで問題になるのは、SteamのアプリはWebブラウザではないということ。テキストの選択はできても、あの手軽なWebブラウザの拡張機能は使えません。テキストのコピー&ペーストで翻訳サイトに貼り付けたり、Steamの“Webサイト版”にアクセスして当該タイトルの情報ページを見たりする方法も試しましたが、手順の多さや導線の面で面倒くささが勝ってしまい、長続きしませんでした。
そこで、PLaMo翻訳に用意されているAPIを使って、「翻訳のミニアプリ」を作れないかと考えました。プログラミングのスキルは皆無なのですが、Geminiにお願いすればできるのでは? と。コーディングをGeminiに丸投げしつつ、なんとかPythonで動く翻訳ミニアプリを作ることができました。本筋とは少しずれる部分ですが、行頭や改行を綺麗に見せる日本語の禁則処理を機能させるのに苦労したものの、何度も何度もGeminiと試行錯誤を重ねて、見た目を含めて満足できるレベルにたどり着けました。
APIの利用は申込みが必要で、利用量(トークン≒文字数)に応じて料金が発生しますが、Steam上のアップデート情報を読むという程度の利用なら1日で数円程度で、月間でも大きな金額にはなっていませんでした。上限金額も設定できるので、青天井で不安ということもありません。
このミニアプリを作れたことで、翻訳が利用しづらかったSteamの英語情報がサクサクと読めるようになり、かなり便利で快適になりました。
翻訳の精度については、少し面白いことが分かりました。「PLaMo翻訳」本家の精度にはすでに信頼を置いていたわけですが、私が作ったミニアプリ(APIでPLaMo 2.2 Primeを使用)は、同じ文章を翻訳しても、かなり雰囲気の違う翻訳結果になったからです。
これは、プログラムの中に記述しておく、原文に添えて送信する「プロンプト」が生成AIの回答やその品質に大きく影響するためです。ちゃんと目的に合うように指示しないと、期待しているようなニュアンスでは返ってきません。翻って、「PLaMo翻訳」本家の翻訳は、かなり入念に調整されたプロンプトで動いているんだろうな、と想像できました。
ちなみに私は、ゲームのアップデート情報を翻訳する目的なので、核になるプロンプトとして「原文の雰囲気やニュアンスを忠実に再現」という指示に加えて、「珍しい固有名詞や造語は原文のままで」と追加しています。これで、ゲームの世界観が反映された固有名詞や造語が強引に日本語に翻訳されて混乱する、というケースをなるべく減らすようにしています。こうしたように、翻訳品質を目的に合わせてカスタマイズできたのは、APIを触ってみて分かった嬉しい誤算でした。
今回作ってみた自作の翻訳ミニアプリはWindows上のどこでも起動可能なので、例えば英語UIのアプリの何気ない説明テキストなども、テキストを選択できれば(クリップボードにコピーできれば)動かせます。Steam以外でも活躍する機会があり、作ってよかったなと思っています。
なお、3月24日から、PLaMo翻訳のデスクトップアプリの提供が開始されました。PC上のどこでも、テキストを選択できればポップアップ表示で訳文を表示できるので、これから使う人はこちらを試すのがよさそうです。
ただ、提供開始時点(v0.4.0)では、ショートカットキーで呼び出して使う場合、アプリをあらかじめ起動しておく必要があるようです。私の自作アプリはAutoHotKeyという常駐プログラム経由で呼び出すようにして、メインのPythonアプリはウィンドウを閉じるとプロセスも終了する設計にしたので、少し使い勝手が違います。プロンプトで翻訳品質を少しカスタマイズしているのも気に入っている部分ですし、しばらくは両方を使いながら様子を見ようと思います。
PLaMo翻訳のような、高品質で手軽な翻訳サービスの登場は、海外ニュースを臆せず読める“翼”をくれたと感じます。自作の翻訳ミニアプリもまた、生成AIの力を借りて実現できました。2つの翼、「両翼を得た」と言うと大げさかもしれませんが、自分にとって意味のある形で活用できているのではないかと思っています。






