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検索窓も25年ぶり刷新 Google検索トップに聞く「AIとエージェントと検索」の現在地
2026年5月22日 00:01
Googleの年次開発者会議「Google I/O 2026」では、エージェンティックAIからスマートグラスまで、様々なことが発表された。
筆者も現地取材したが、特に注目されたのは、Googleの祖業であり中核でもある「検索」の変化だ。
検索窓の仕様が25年ぶりに刷新され、AIでの「長文による検索」「画像を含めたマルチモーダルな検索」が基本となった。昨年導入されたAI検索はより主軸の機能となっていく。
現状、Googleの検索技術はどのような方針で変化しようとしているのだろうか?
昨年に引き続き、Googleで検索技術担当バイスプレジデントを務める、リズ・リード(Elizabeth Reid)氏に、単独インタビューした。
Googleは今年検索をどう変えるのか
今回発表された内容を簡単に整理しておこう。
実はGoogleが検索に関する新方針を90秒ほどの動画にまとめているので、そちらを見るのが近道かもしれない(英語だが、今は翻訳機能もあるので大きな問題はないだろう)。
Googleは昨年、AI(Gemini)とのチャットをベースに検索をする「AIモード」をスタートした。それ以前より、通常の検索の上部にAIによるまとめを表示する「AIによる概要(AI Overview)」が導入されており、2つの「AIで検索結果をまとめ直す」機能が併存している形だった。
まず、検索窓が「インテリジェントなAI検索ボックス(Intelligent Search box)」へと刷新され、「長文による検索」「画像を含めたマルチモーダルな検索」をベースとして使う形に変わる。そこから得られる検索結果は、AIモードによる回答に近いものになっていくわけだ。
AIモードの背後で動くAIモデルも、最新のGemini 3.5 Flashに変更され、精度と賢さの向上が期待できる。
また、検索にかかわる内容を監視し、内容が更新されたり利用者の要望に合う内容が見つかったりしたら、その内容をチェックする「エージェンティックAI」的機能が搭載された。GeminiのエージェンティックAIである「Gemini Spark」の検索への導入だ。
さらに、検索結果の中に文章や画像、動画を入れるだけでなく「インタラクティブな要素」も追加できる。説明図にスライダーやスイッチがつき、それらを操作すると説明が変化する。そのための画面はGeminiが背後で動いて自動生成する。こうした要素をGoogleは「ジェネレーティブ・ユーザーインターフェース」(生成UI)と呼んでいる
昨年AIモードで検索にAIを全面導入したが、今年はさらに大きな変更を加え、さまざまな形でAIを使うようになってきたわけだ。
もちろん導入自体は段階的に行なわれるし、新しい機能を使うかどうかは利用者の判断に委ねられる部分はある。
しかし、古典的な検索の機能からは少しずつ離れ、AIとの対話の中で情報を得ていく形に進んでいるのは間違いない……という印象を受ける。
検索窓が変化、AI検索で「探し方」も変わった
――まず、AIモードとAIによる概要(AI Overview)の現状についてお伺いします。昨年から現在にかけて、人々の検索行動やAI検索の利用において、どのような違いが見えてきていますか?
リード氏(以下敬称略):いくつかの傾向が見られます。
まず、人々が非常に素早くAIモードを取り入れ、熱心に利用しているのを見るのは非常にエキサイティングです。AIによる概要についても同様です。よりAIに特化した検索体験を求め、直接AIモードを選択するユーザー層も存在します。
しかし多くの人はそこまで意識しておらず、単に検索ボックスから素晴らしい回答を得たいと考えています。
そのため、AIモードを希望する場合は直接AIモードに移行できるようにしつつ、大部分の人には通常の検索ボックスを利用できるようにし、さらに検索ボックスが拡張されるようにしました。これにより、画像やPDFなど、必要なものを自由に追加できるようになります。
AIによる概要やAIモードへ簡単にアクセスできるようにし、人々がどんな質問でも気軽に尋ねられるようサポートすることで、利用を非常に簡単にしています。
人々はより長い質問をするようになり、マルチモーダルな質問も増えています。画像が添付された画像検索クエリはAIモードで非常に成長しており、見ていてとてもワクワクします。
――つまり、デフォルトの検索ボックスを、テキストだけでなく長い文脈や画像に対応できるように変更しているということですね。なぜそのような変更を加えることにしたのでしょうか? 現在AIベースの検索を利用しているユーザーもいれば、AI検索だと意識せずに利用しているユーザーもいるとおっしゃっていましたが、それらをどのように統合しているのですか?
リード:2つの理由があります。
1つ目は、ユーザーがメインの検索ボックスに非常に長いクエリを入力するようになっているにもかかわらず、検索ボックスが小さかったことです。非常に長いクエリを入力して枠を超えてしまうと、編集したり、入力内容を確認したりするのが非常に困難になります。そのため、私たちは明確にこの状況に適応し、拡張したいと考えました。
2つ目は、画像やPDFを追加する機能は以前からAIモードに存在していましたが、多くの人はAIモードに切り替える必要があるため、その機能の存在自体に気づいていなかったんです。
ユーザーは通常「AIによる概要」を通じてアクセスしてきます。
また、検索ボックスを使いたいけれど、画像のアップロード方法がわからないために、意図的にAI機能を使用しないユーザーもいました。
検索について考える際、私たちが全体として心がけているのは、いかに人々に簡単に使ってもらうかということです。
難しすぎると、人々は試そうとしません。可能であることすら知らないのです。
検索機能を使うために専門家になる必要はないはずです。人々にとって本当に使いやすいものにするべきだと考えています。
検索にも訪れる「AIエージェント」の波
――今回、検索にインフォメーション・エージェントの機能を導入されています。なぜこの機能を組み合わせることにしたのでしょうか? ほとんどのユーザーは検索とAIエージェントが関係してくるとは考えていない段階でしょう。
リード:私たちは、人々が何を必要としているのか、どのような問題を抱えているのか、というところから考え始めています。
インフォメーション・エージェントと、ジェネレーティブ・ユーザーインターフェースについてお話しします。
インフォメーション・エージェントについてですが、人々は質問をするために検索を利用しますが、時には「何かの最新情報を追い続けたい」と思うこともあります。
しかし、毎日や毎時間、何かについて質問するのは手間がかかりすぎます。そのため、人々はわざわざそんなことはせず、世の中の気になる情報を見逃してしまいます。
この展示会を見に行きたい、子供の学校の準備を手伝いたい、と思っても、何が起きているかを知らないからです。あるいは金融市場について、単なる全体的な株価ではなく、特定のパラメータについての非常に専門的な質問がある場合もあります。そういったことを毎回確認するのは手間がかかります。
検索にエージェントを導入するのは、単にエージェントを導入すること自体が目的ではなく、この問題を解決するためです。
人々は常に最新情報を把握する必要がありますが、情報が更新されたかどうかを毎回確認するのは負担が大きすぎます。
問題を解決できるエージェントという新しい技術があったので、検索にエージェントを導入しているのです。
ジェネレーティブ・ユーザーインターフェースについても同様です。
長年、検索機能の中に構築してきた便利なウィジェットは、人々にとって非常に役立ってきました。
しかし、それらのウィジェットを一つ作成するのにはエンジニアがコードを書く必要があり、複数のエンジニアが必要になることもありました。ユーザーが求めるすべてのウィジェットを作成する時間が足りません。もしかすると、インターネット上のどこにも、あなた専用のウィジェットを作った人はいないかもしれません。
そこで、エージェントの能力を使って、その場でウィジェットを構築できるようにしました。
私たちは技術や検索を、人々の問題を解決するための手段として捉えています。人々の問題は何かを考え、単なるバズワードとして行なうのではなく、人々の問題を解決し、それを非常にアクセスしやすいものにしたいと考えています。
AIによる検索精度上昇の現在地点とは
――AIモードやAIによる概要の精度についてお伺いします。現時点ではAIの回答は完璧ではなく、日々改善の途上にあると思いますが、精度についてどのようにお考えですか?
リード:いくつかの側面から考えています。まず、人々が長年Googleを使い続けているのは、私たちを信頼しているからであり、私たちはその信頼に応えたいと強く思っています。
「人々が現在期待している信頼の基準は何か?」を考えた時、「AIによる概要」を最初にローンチした際、私たちはこれを「強調スニペット」と同じ基準に設定しました。
強調スニペットは人々から好まれている既存のプロダクトですが、完璧なものでもありません。25年前の検索機能も完璧ではありませんでしたが、人々にとっては十分な価値があり、良いトレードオフだと感じられていました。
「AIによる概要」もその基準に設定し、最低限の水準に到達するまではローンチしませんでしたし、それ以降も改善を続けています。
第二に、Webの情報をプロダクトの情報基盤(グラウンディング)として取り入れることです。
AIモデルには、どれくらい創造性を発揮するかということや、どれくらいWeb上の事実情報に基づかせるかということを調整する機能があります。私たちはAIモデルを後者にチューニングし、Web上の情報に基づいて回答するようにしました。単なる情報ではなく、高品質な情報への理解に基づかせるようにしています。
そして、積極的にリンクを配置し、もしその情報がユーザーにとって本当に重要であれば、クリックしてソースを確認できるようにしています。
「パソコンの直し方」のような質問であれば、試してみてうまくいけばそれで終わりですが、ユーザーにとってより重大な問題であれば、直接ソースを確認し、自分で判断できるようにしています。
AI最適化より「読みたいコンテンツ」が重要
――AI時代における検索エンジン最適化(SEO)についてはどのようにお考えですか?
リード:基本的に「人々が読みたいと思うコンテンツは何か」を考えることが有用だと思います。
人々が読みたいと思うのは、内容が非常に興味深く、深く掘り下げられているからであり、かつ「誰が発信しているか」が重要だからです。
もしパブリッシャーが、Web上にとにかく数を追いかけ、何百万もの、すでによくあるコンテンツを作成しているなら、それはあまり興味深くなく、有用でもありません。専門外のことや経験のないことについてのコンテンツを作成していくことも同様です。
しかし、自分の専門知識を活かし、友人に読ませたくなるようなコンテンツを作成できれば、それは素晴らしいコンテンツです。
そうしたコンテンツを、私たちは今後も新しい方法で強調し続けるつもりです。
人々はAIかWebのどちらか一方だけを求めているわけではなく、両方を求めています。きっかけとしてAIを利用しつつ、さらに詳しく知りたいと考えています。今日の発表内容を知りたいだけでなく、それに対する「あなたの見解」を聞きたいのです。AIが何と言ったかではなく、あなたが何と言ったかを知りたいのです。
AIにファッションの質問をする場合、すべての決定をAIに委ねたいわけではありません。AIで概要を掴んだ後は、クリエイターやインフルエンサーの意見を読みたいはずです。
私たちは常に実験を行ない、何が素晴らしいコンテンツであり、それをAIによる概要やAIモードでどのように引き立てるかを理解しようと努めています。人々をWebや人間の視点に結びつけるための取り組みを続けています。AIの力には強力なものがありますが、同時に他の人から話を聞くというつながりにも強力なものがあります。それは人間性の本質的な部分であり、現代の世界でもそれが繁栄することを望んでいます。
この点については先日、Googleが文書を公開している。
巷では「AI時代に向け、検索への最適化が必要。過去のSEOではいけない」という説を唱える人もいて、そういう「AI Engine Optimization(AEO)」をビジネスとする動きもある。
だが、リード氏の意見も、そしてGoogleが公開した文書も、特別な最適化よりも「過去と方法論が変わるわけではなく、より価値ある情報が重要になる」ということが軸だ。
つまり「AIに選ばれる」のではなく、「情報として紹介したい内容である」ことが重要なのだ。Googleは明確に「AEOとは従来通りのSEOである」と述べ、AIに特化した文章の作り方やコンテンツ最適化が不要である、としている。
Optimizing your website for generative AI features on Google Search
AI検索のエネルギー問題とは
――最後の質問になります。AIを利用した検索のエネルギー消費についてどうお考えですか? AIエージェントを使用すると、計算リソースの消費量が増加します。
リード:検索において、私たちは技術を非常に効率的に活用してきた長い歴史があります。
検索では、質問に応じて異なるサイズのモデルを使用しています。質問が簡単な場合は小さなモデルを使用します。これは計算リソースの節約になるだけでなく、計算量が少ない方が処理速度が速くなるからです。ユーザーは回答を素早く求めています。
また、世代を重ねるごとに、1つ下のサイズのモデルが、以前の大きなサイズのモデルと同等のことができるようになっています。例えば、(軽量であるはずの)Gemini 3.5 FlashがGemini 3.1 Proを性能的に上回るといったことです。そのため、より小さなモデルを継続して使用することが可能になっています。
Googleのインフラストラクチャは何十年にもわたって最適化されてきました。もちろん急速なイノベーションは必要ですが、大規模かつ効率的、そして迅速にユーザーへより良い回答を提供し続けることができると考えています。
――しかし、エージェントベースの検索では同時に複数の推論が必要になると思います。これはAIと検索テクノロジーの素晴らしい例ですが、多くの計算リソースと電力を消費します。この多段的推論の影響についてどうお考えですか?
リード:確かに、エージェントはより難しいタスクをこなすため、より多くのリソースを使用する可能性があります。
しかし、現在の状況は、大規模言語モデルが基本的な用途で使われ始めた3年前と同じように、まだ初期段階にあります。
インフォメーション・エージェントの場合、リアルタイムの情報に注目しています。毎秒クエリを再発行し続ける必要はなく、「この情報が変更されたら教えてください」と指示を出しておくことができます。
最初に計画を立てる作業があり、何かが変更されたときに少しの作業が発生しますが、変更があるかどうかを常に確認し続けるような膨大な作業は必要ありません。
例えば新しい金融データが入ってきた際に、「誰かこれに関心があるか?」を確認し、関心がある人がいれば処理を行なうといった形です。このように、私たちは思慮深いアプローチで処理を行なうことができます。
もちろん、新しいニーズに対応するためには多くのイノベーションが必要になります。













