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訪庁も印紙代も不要に? 東京都が進める契約・請求デジタル化の大きなメリット

企業内部や企業間のやり取りは電子化が進んで効率的になっているけれど、行政はまだまだアナログな手続きから脱却できていない。そんな印象が今も根強く残っているように思いますが、それはもう過去のことになりつつあるようです。

東京都では、電子入札に加え、2023年度より電子契約サービスを開始しています。

さらに翌2024年度からは最終的な請求の手続きも含めて電子化した「東京都契約請求システム」を一部の案件で稼働させており、両方を利用することで契約から請求までデジタルで完結することができるようになります。都の担当者は「一度試してメリットを感じてほしい」と語ります。今回はサービス利用の流れとメリットについてご紹介します。

「その2 電子契約サービス」と「その3 東京都契約請求システム」が今回フォーカスする内容(画像提供:東京都)

事業者が時間短縮とコスト減を図れる「電子契約サービス」

東京都が、契約から請求までデジタルで完結できるようにするのはなぜでしょうか?

行政から業務を受注した事業者にとって、契約手続きの煩雑さは負担となります。東京都では入札自体は電子化されているものの、契約手続きは長らく紙中心で、契約書の印刷・押印・持参や郵送、関連資料の製本などが必要なこともありました。内容確認や修正のために何度も来庁するケースもあり、時間と労力を要することとなってしまいます。

こうした事業者の負担を軽減するべく、東京都が2023年度に導入したのが「電子契約サービス」です。既存の電子調達システムと民間の電子契約サービスを連携し、東京都の入札に参加できる事業者ならシステムから担当者とメールアドレスを登録するだけで、新たに設備の導入やサービス料などかからず、すぐに使うことができます。

メリットは大きく3つあります。


    ・契約書の持ち込みや押印、郵送の手間の削減
    ・印紙税や交通費、管理スペースの確保などに要するコストの削減
    ・書類の破損・紛失防止及び検索性の向上などの契約管理の強化
     (電子で記録を残すことで)情報の検索性が上がる。保管スペースを節約できる

案件に応じて契約書作成に必要なデータを都へ提出し、都側での確認完了後、あらかじめ登録しておいた事業者側の契約担当者のメールアドレス宛に契約内容の確認依頼のメールが届くので、パソコン上(もしくはスマホ上)で契約書を確認し、同意ボタンを押すだけ。それを受けて東京都側でも確認同意が完了すれば、契約締結となります。

電子契約サービス導入前後のフロー比較

紙に印刷して受け渡しする必要もなければ、そこに押印する必要もありません。紙の契約では印紙税がかかる契約であっても電子では印紙が不要になるためコストダウンにもなります。

加えて、紙の書類を扱わないことで破損や紛失といったアクシデントを回避できます。持ち込むまでの間に紛失したとなれば情報漏洩にもつながりかねませんから、ガバナンスやセキュリティの面でも安全です。

契約書の控えはPDFで自社のファイルサーバーに保存でき、いつでも参照できる仕組みになっているので、自社内に控えを紙で保管しておく必要がなく、キャビネットや倉庫などの保管スペースを圧迫しないのも利点と言えます。

電子契約の対象となる案件は順次拡大しており、都が所有する建物の管理や受付、清掃、警備、設備保守、物品の購入(納入)など、東京都が行なう膨大な数の入札のほとんどで電子契約が選べるようになっています。

メリット多数の電子契約を試してほしい

印紙代が不要などのコスト面、来庁不要などの時間短縮などの多くのメリットがある電子契約。都では対象案件を拡大しているところです。担当者の方は「案件ごとに選択できるので電子を試してほしい」と話します。

利用件数は右肩上がりで伸びており、「利用いただいた事業者の方には継続して利用いただけていることが多いです。東京都では契約案件ごとに電子にするか紙にするかを選んでいただけますし、操作方法を質問できるヘルプデスクもご用意しております。いきなり全面移行する必要はないので、まずは次に受注いただく案件で電子を選択いただき、ぜひ電子契約のメリットを感じていただきたい」とも話します。

電子調達システムのプロジェクトを担当している東京都 財務局の鵜澤友行氏

「実際に電子契約を行なうにあたり、都では事業者向けに説明会も開催しており、その動画資料をホームページで公開しているため、いつでも確認することができます。そちらもぜひご利用ください」

契約後の書類提出から請求までがデジタルで完結「東京都契約請求システム」

契約締結までを電子化した一方で、その後、業務を遂行していくにあたって東京都と事業者の間で必要になるやりとりも電子化するために構築したのが「東京都契約請求システム(以下、契約請求システム)」です。

「東京都契約請求システム」(画像提供:東京都)

契約後に発生する関連書類の提出から、業務の納品書や完了届等の提出、最終的な請求に至るまでの手続きをシステム化したものです。納品書や請求書を提出する際にも、それ以前に入力した情報が自動反映され、再利用されます、これら情報・データの管理を、バックグラウンドにある契約請求システムが担っているのです。

東京都契約請求システムが担っているプロセス

契約請求システムの主要なメリットは以下の4つです。


    ・場所や時間を選ばず手続可能に
    ・紙や印鑑が不要に
    ・入力の手間や記入ミスを削減
    ・複数案件も一括で管理可能に

一連のプロセスのなかで必要となる情報は一度だけ入力すれば、事業者はその後同じ情報を何度も入力せずに済みます。従来は書類提出のたびに何度も同じ情報を記入して紙面提出していましたが、契約請求システムによって最小限の手間に抑え、デジタルでスムーズに手続きができるようになったというわけです。

また、これまでは担当部署に直接電話しなければ分からなかった手続きの進捗状況が、契約請求システム上で簡単に確認することも可能になっています。たとえば提出した書類が都の担当者に本当に届いているのか、内容に間違いがないことが確認され、次の処理に進んでいるかどうか、といったこともほぼリアルタイムに把握できるので、事業者にとっては安心感にもつながるのではないでしょうか。

事業者の利便性向上を目的に2024年4月から開始した契約請求システムは、当初は物品購入・委託契約を対象として、デジタルサービス局が発注する契約からスモールスタートし、同年10月には財務局経理部総務課が発注する契約にも対象を広げました。

そしてまもなく2026年3月にはすべての知事部局等への利用を拡大します(公営企業局、東京消防庁、警視庁は除く)。東京都の多くの契約が対象となり、いよいよ本格的な稼働といえそうです。今後も、契約の範囲を工事契約まで拡大するなど、段階的に対象となる契約を増やしていく計画です。

契約請求システムを利用している事業者からは、書類提出で訪庁するのにかかる時間を省けるうえ、社内での押印申請も不要で、テレワークやペーパーレス化のような社内活動との相性もいい、といったフィードバックが得られているとのこと。

事業者の業種や庁舎への距離などによっても短縮される時間は異なりますが、「利用者のうちおよそ7割が、作業時間の短縮につながっている」との回答を受けているそうです。

確かに、「訪庁の手間が無くなる」「社内の押印申請の手間や待ち時間が無くなる」というのは「働き方」の改善にも役に立つでしょう。企業におけるペーパーレス化を進める上でも、重要な取り組みとなりそうです。

東京都契約請求システムのプロジェクトを担当する東京都 デジタルサービス局の伊藤学氏

具体的な成果も見え始めているなかでも、「利用者の意見をしっかり拾って活かしていくことが大事」として機能やUI/UXの改善も随時行なっており、「できるだけ多くの方に便利に、メリットを感じながら使ってもらえるようこれからも進化させていく」と意気込みます。

業務の効率化を支援するデジタル活用

電子契約サービスや契約請求システムの利用は拡大を続けています。一方で、新たな仕組みを導入する場合に、「仕事のやり方を変える」抵抗感や「紙の安心感」から、電子化に不安を持つ企業もあるでしょう。

東京都でもその点を課題と捉え、ヒアリングの機会を作ることなどにより普及促進につなげていきたいとしています。また、事前の疑問や利用時の使い方なども含め、電話相談できるヘルプデスクを設けるなど支援体制を構築しています。利用に不安がある事業者は、それらを積極的に活用するのも良いでしょう。

実際には「難しそうに思ったけれど、一度使ってみたら意外と簡単に使えた、想像より便利に感じた、という声はかなり多い」とのことです。

紙からデジタルに変わっても、書式等が大きく変わるわけではありません。追加で費用がかかることはなく、パソコン以外の特別なツールも不要です。

企業における業務の効率化や働き方改革への対応は、今後も求められていくはず。契約から請求までデジタルで完結できる東京都の「電子契約サービス」「東京都契約請求システム」の活用は、業務の効率化につながり、事業成長の一助となるでしょう。まずはこれらのシステムに触れてみてはいかがでしょうか?