トピック
G-SHOCK新型は衝撃・磁場から“自律的に復帰”グラビティマスターのこだわりを聞く
2026年7月1日 08:20
カシオ計算機は、MASTER OF Gシリーズのパイロットウォッチ「GRAVITYMASTER」(グラビティマスター)の新型「GWR-B3000」シリーズ3機種を7月10日に発売する。Bluetooth搭載の電波ソーラーの腕時計で、価格はGWR-B3000-1AJFが110,000円、GWR-B3000A-2AJFが126,500円、GWR-B3000B-8AJFが137,500円。
グラビティマスターの新型GWR-B3000は、G-SHOCKのパイロットウォッチの新たなハイエンドモデルとして登場する。デザインが大幅に刷新された本体や新機軸の機能を追加した新型ムーブメントについて、開発の背景や注力ポイントをカシオの担当者に聞いた。対応していただいたのは、カシオ計算機 時計事業部 商品企画部の小島一泰氏と黒羽晃洋氏だ。
コンピュータ解析で“肉抜き”
GWR-B3000は、航空機パイロットへのヒアリングを経て、各部の実用性を高めたのが特徴。特に本体サイズについては、“制服を着て式典に出席する”といったシチュエーションにも対応できるよう、より厚みを抑えたコンパクトなものを求める声が多かったという。
一方で、グラビティマスターシリーズの特徴でもある「トリプルGレジスト」は、衝撃力、遠心重力、振動という3つの重力加速度に耐えるタフネス構造。仮に本体をコンパクト化できても、こうした厳しい社内基準を満たす堅牢性を備えなければ“グラビティマスター”は名乗れない。
そこでカシオが着目したのが、トポロジー最適化と呼ばれるコンピュータ解析の手法だ。自動車の車体フレームなどほかの分野では活用されている実績のある技術だが、G-SHOCKのMASTER OF Gシリーズでは初めての採用で、強度を保ったまま肉抜きなどで無駄を省く“パーツ形状の最適化”が可能になり、本体のコンパクト化や軽量化につなげられる。
このトポロジー最適化解析で実現したのが、GWR-B3000の新たなタフネス構造である「デュアル中空構造」だ。左右に分割されたステンレススチール製ベゼルパーツと本体ケースの中間に配置される樹脂製のショックアブソーバーや、左右のベゼルをつなぐ先カンと呼ばれるパーツに、トポロジー解析を適用。耐久性を確保したまま、本体の厚みを抑えてケース径を小さくし、コンパクト化や軽量化に成功した。
歴代のグラビティマスターをみると、ケースの横幅と厚さは「GW-3000」が49.8mmで15.5mm、「GR-B300」が54.7mmで15.7mmと、世代が進むにつれて大型化していた。しかし新型のGWR-B3000は幅47.3mmで厚さ14.1mmと、小径化・薄型化に成功している。
重量はメタルパーツの採用などで従来の70g台から102gへと増加しているが、金属パーツのMIM(金属射出)成形なども貢献し、メタルパーツ採用モデルとしてはかなり軽量化できているという。
カシオはすでにAIとの共創という形で、コンピュータを活用した設計やデザインを一部モデルに取り入れているが、それらとトポロジー最適化の違いは何だろうか?
「サイズを薄くしたり、小型化したりする目的でトポロジー解析を使いました。“形の自由度”よりも、“強度や剛性を最適化する技術”として採用しています。その意味では、MASTER OF Gシリーズに向いている技術かもしれませんね」(小島氏)。
“上下”が瞬時に把握できるデザイン
トポロジー解析で実現したデュアル中空構造による薄型・コンパクト化以外にも、GWR-B3000にはパイロットの意見を取り入れたディテールが盛り込まれている。
そのひとつが、傾きや(特にヘリコプターで顕著な)振動にさらされるパイロットが、腕時計の“上下”を瞬時に把握できるデザインだという。GWR-B3000はアラビア数字の「12」を大きく配置して“上”方向を瞬時に分かるようにしている。また3つのサブダイヤルも横三つ目(逆三角形)の配置で、上下が非対称のデザイン。この横三つ目は初代グラビティマスターのGW-3000と同じで、原点に戻るという意味も込められているという。
ダイヤルもパイロットの意見を取り入れ、低反射ダイヤルを成形で作り上げた。コックピット内は太陽光がさまざまな角度で入り込むため、視認性の観点から、腕時計も低反射なものが求められるという。
GWR-B3000に採用されている新開発のダイヤルは、微細なピラミッド形状を並べたもので、入射光を外に出にくくし低反射を実現している。つや消し塗装を用いれば比較的簡単に低反射を実現できるが、衝撃などで針がダイヤルに当たると塗装が剥がれる場合があるとのことで、成形による低反射ダイヤルはより耐久性に優れるという。
また、このマットダイヤルを技術的に下支えしているのが、ソーラー発電の技術。3つのサブダイヤル部分の受光面積だけで必要な電力を賄えるようになっており、ダイヤルのデザインの自由度を高めることに貢献している。
衝撃・磁場を検知して自ら復帰するムーブメント
GWR-B3000のもうひとつのハイライトは、時計の心臓部であるムーブメント「TOUGH MVT. 2」(タフムーブメント2)だ。MASTER OF Gシリーズで多くの機種に搭載されてきたソーラーアナログムーブメント「TOUGH MVT.」(タフムーブメント)は2008年に登場したもので、実に18年ぶりの大幅進化となる。
もっとも、一口に“タフムーブメント”と呼ばれていても、針位置自動補正やタフソーラー、電波受信のマルチバンド6を基本として、スマートフォンリンク機能を追加するなどモジュール(ムーブメント)自体は進化してきており、“厳しい環境に耐えるソーラーアナログムーブメント”に対しその名前が広く用いられてきた側面がある。
新型のタフムーブメント2は、“外乱に対する自律的制御”を初めて搭載し、新機軸の進化を遂げたのが特徴になる。具体的には「衝撃検知機能」「磁場検知機能」の2つだ。
ここでポイントになるのは「針位置自動補正機能」。これは、強い衝撃などで針の位置がずれてしまった場合、モジュール内部のLSIが歯車のずれを検知し、針を正しい位置に戻す機能。従来のタフムーブメントにも搭載されているが、課題となっていたのは「針のずれ」を検知するタイミングという。
これまでのタフムーブメントは、秒針が10分ごと、時分針は30分ごと(モデルによっては1時間ごと)といったように、ずれを“定期的にチェックする”仕組みだった。このため針ずれを起こしてしまっても、次のチェックのタイミングが来るまではずれたままという課題があった。
これに対しタフムーブメント2は、強い衝撃が加わると、その衝撃を検知して、すぐに針位置自動補正機能が働くようになっている。“定期的なチェック”を待つことなく自律的に補正することで、正しい時刻を常に把握できるようになる。
これは衝撃や振動にさらされるパイロットウォッチでは重視される要素で、GWR-B3000にぴったりの要素となっている。なお、この衝撃検知機能は既存のLSIやパーツの動きを応用したもので、新規のパーツやセンサーは追加されていないとのことだ。
一方、磁気センサーを追加して対応したのが「磁場検知機能」だ。基本的にクオーツムーブメントは磁場に強いが、“磁石に触れる”といったレベルの強い磁場にさらされると、内部のパーツの動きが一時的に阻害され、針の位置が正しい時刻からずれてしまうことがある。
タフムーブメント2の磁場検知機能は、磁気センサーで強い磁場を検知すると、“運針を自ら止める”という能動的な動きをするのが特徴で、強い磁場がなくなると、針が正しい位置に戻されるようになっている。
腕時計が“磁石に触れる”というシーンは、かつてはバッグの留め具などが代表的な例で、見過ごされがちなケースとしては、エレベーターの内部に貼られることがある保護幕の留め具(利用者から見えない)などもある。しかし現代では、AppleのMagSafeに代表されるように、スマートフォンやガジェットなどさまざまな製品で磁石が使用され、非常に強力なネオジム磁石なども活用されるようになっており、“気づかない間に磁石に触れている”というケースは十分に考えられる環境だ。
万が一にも備える形で、衝撃と磁場を検出して能動的に動作し、即座に正しい時刻を表示できるようにしたのが、タフムーブメント2の進化点となる。もちろんBluetooth連携、電波受信、ソーラー発電といったこれまでの機能も踏襲しており、MASTER OF GシリーズなどG-SHOCKの高性能モデルに最適なムーブメントに仕上がっている。「これを基盤にして、ほかのブランドへの展開も考えています」(黒羽氏)というように、G-SHOCKの高耐久ムーブメントの新たな定番になりそうだ。















