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売上高2.5兆円家電量販連合の誕生 ヤマダ・エディオン統合と家電再編の狼煙

ヤマダホールディングス 山田昇会長(左)とエディオンの久保允誉会長(右)

ヤマダホールディングス(ヤマダHD)とエディオンの経営統合は、売上高で2兆4,855億円という巨大な家電量販店の誕生となる。2位から5位の家電各社と比べても、2.5倍から3倍という規模となり、頭ひとつ抜け出た格好だ。

まずは、今回の経営統合の概略をまとめておこう。

発表内容は、ヤマダHDとエディオンが、持株会社方式による経営統合に関して基本合意したというものだ。それによると、約1年3カ月後となる2027年10月1日に持株会社を設立し、その傘下で、ヤマダHDとエディオンを完全子会社化し、持株会社は東証プライム市場に上場する。

持株会社の本社は東京に置き、代表取締役会長には、ヤマダHDの山田昇会長兼CEOが就き、代表取締役社長には、エディオンの久保允誉会長CEOが就任する。

持株会社の社名は、SNSなどでは、「ヤマディオン」といった声もあがっているが、両社の社名とは異なる新たなものにすることを明らかにしている。

また、ニュースリリースや配布資料では、両社のブランドを維持し、併用する方向で検討していると記している。

だが、記者会見では、ヤマダHDの山田昇会長兼CEOが、この件に触れたとき、「当面」という言葉を用いていた。

山田会長がどういう意図を持って、「当面」という言葉を使ったのかは不明だが、将来的には、新たな商号などを使って、統一の店舗名とする可能性を感じさせるひとことだったのは確かだ。

「対等」を強調する経営統合

今回の発表で、両社のトップが強調していたのが、「対等」での経営統合という点だ。そして、両社の思惑が一致していることを、何度も示してみせた。

たとえば、山田会長の冒頭のコメントでも、「経営統合における思いは一致している。そのため、説明は一部重複する部分もある」と切り出した。このような両社の足並みが揃っていることを示す言葉は、会見のなかで何度も聞かれた。

ヤマダホールディングス 代表取締役会長兼CEOの山田昇氏

エディオンの久保允誉会長CEOも、「山田会長と複数回に渡り、面談し、協議をした。そこで再認識したのは、両社の事業展開の基本的な考え方には相違がないことであった」とし、「エディオンは、今後も、家電、リフォーム/住まい、環境の3本柱で事業拡大に努める。同じ考え方を持っている家電量販店は、ヤマダHDしかない。経営統合に関する協議を進めるなかで、同じ方向を目指し、最大化し、社会課題解決に貢献できるパートナーであると認識した」と述べた。

エディオン 代表取締役会長執行役員CEOの久保允誉氏

ヤマダHDが群馬県高崎市、エディオンが大阪市に本社を置いているが、持株会社の本社をどちらの本社とも異なる東京に置くというのも、「対等」での経営統合を示すものといえる。

群馬県高崎駅前のヤマダデンキ LABI1 LIFESELECT 高崎
エディオンの本拠地は大阪市

「対等」という点は経営体制にも及ぶ。取締役会および社外取締役は、両社から同数ずつ選出。選出人数などは今後協議することや、持株会社の出資比率は、第三者算定機関による統合比率算定の結果、市場株価などを踏まえて決定することが示された。

創業家同士、カリスマ同士の統合のゆくえ

会見では、お互いにエピソードを披露する一幕もあった。

山田会長は、日本ビクターに勤務していた時代に、テレビのトラブル処理のために、エディオンの母体の1社であり、久保会長の実父が経営していた第一産業に支援に出向いたことがあるとコメント。「そのときから、エディオンのお客様を大切にするという経営に憧れていた。ヤマダHDが持つサービスを中心とした強みは、エディオンの真似をした」と語る。

久保会長は、2013年に、ヤマダHDがベスト電器を傘下に収めたときに、ベスト電器の6店舗を、エディオンが譲り受けることになり、その交渉過程において、山田会長と意見交換を行なったことを振り返り、「経営観、商売、志などについて、お互いに話をした。家電、住まい、環境の3本柱で事業を拡大することを打ち出しており、とくに、住宅事業に力を注ぐ考えを示していたのが印象的だった。事業拡大の方向性が同じであることに驚いた」と語ってみせた。

2000年以降に、家電量販店の再編が進むなか、ヤマダHDとエディオンは、買収によって規模を拡大してきた。

ヤマダHDは、ベスト電器を子会社化したほか、マツヤデンキ、星電社、Project White(旧九十九電機)などを買収してきた経緯があり、2021年にはそれらの家電販売事業を統合。さらに、大塚家具やヒノキヤグループなども子会社化してきた。

一方、エディオンは、2002年に、中国・四国・九州地方を地盤とするデオデオと、中部地方を中心に展開するエイデンが共同で「エディオン」を設立。その後、石丸電気やミドリ電化、サンキュー(コンプ100満ボルト)などを加えて、エディオンへとストアブランドを統一し、事業展開を進めてきた。

今回、経営統合により、ヤマダHDの8,774店舗、エディオンの1,180店舗(いずれもフランチャイズを含む)をあわせて、全国9,954店舗の体制が構築されることになる。

また、両社は、会員獲得にも積極的で、ヤマダHDは、2001年からヤマダポイントカードを発行し、2010年にはヤマダケイタイアプリをリリース、2013年には公式ECサイトをオープンし、現在、ヤマダデジタルアプリ会員は3,100万人超となっている。

それに対して、エディオンでは、2008年から、EC事業を開始し、現在は、エディオンネットショップとして展開。エディオンカード会員は508万人超となっている。両社をあわせると、会員数は3,608万人超となる。

ヤマダHDとエディオンは、これまでの家電量販店において、再編の中心的役割を担ってきた。それだけに両社の経営統合は、業界関係者の間からも異例の経営判断として、驚きを持って捉えられている。

いずれも創業家が経営トップであり、カリスマ的存在である。経営統合に向けて、意見の擦り合わせの難しさなどを指摘する声があるのも確かだ。

だが、山田会長は、「私は創業者であり、久保会長は実質的な創業者である。私たちは、サラリーマン社長とは違う」としながら、「2人に迷いはない。文化の違いはあるが、それはお互いに尊重する。そのために持株会社方式を選んだ」と発言。さらに、「私は、これまでにいろいろと経験し、失敗もあった。だが、この歳になって、大人になっている。業界を発展させていくなかでの役割を考えたい。大局を見誤らないようにすることが大切だ」とも語った。

また、久保会長は、「2人でトラブルになるようなことはない。タッグを組んで、必ずやっていける」と断言。「物事を判断する際には、社員にとって良いことなのか、より幸せなことなのかという考え方がベースにある。そして、お客様にとっていいことなのか、業界にとっていいことなのかということを考えれば、自ずといい判断ができる。意見の相違があったとしても、ベースがしっかりしているので安心してほしい」と発言した。

83歳の山田会長と、76歳の久保会長が、しっかりとタッグを組み、経営統合に向けた議論が進み、2027年10月1日の持株会社設立につながることが期待される。

3つの「統合の狙い」 最大の注目は「PB商品の強化」

両社では、経営統合の狙いとして、「規模を活かしたスケールメリットの追求」、「くらしを軸にした事業領域の拡大」、「あらゆる面からの統合効果の追求」の3点をあげている。

具体的には、共同仕入などによる調達コストおよび物流コストの低減、全国配送網の強化、顧客接点を相互に活用した体制の構築およびサービス体制・機能の強化による効率化と顧客満足度の向上、データ基盤を活用した高精度な顧客ニーズの把握や情報収集能力の強化のほか、グループ経営機能の効率化、M&Aの推進、両社の店舗運営ノウハウを共有することで、店舗運営の効率化などを進めるという。

また、両社が注力しているリフォーム/住まいの領域においては、高齢化社会を対象に、家電量販店ならではのリフォームを提案する新たな商品パッケージの開発に取り組む考えも示している。

だが、こうした取り組みのなかで、最も注目されるのがプライベートブランド(PB)商品の強化だろう。

ヤマダHDでは、PB商品やSPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)商品として、「YAMADA Products(ヤマダプロダクツ)」を展開。これらのもとで、冷蔵庫の「REFAGE」、洗濯機の「RORO」、エアコンの「RIAIR」、調理家電「COOFE」などのサブブランドを展開している。また、エディオンでは、PB商品「e angle(イー アングル)」を展開し、ラインアップを積極的に拡大しているところだ。

山田会長は、「目に見える効果としては、これが最大のものになる」と前置きし、「両社の販売量をあわせれば、お客様のニーズにあわせた商品の開発につなげることができる。SPA商品の開発能力の強化により、単独ではなしえない暮らしを支えるサービスレベルの実現、事業領域の拡大が可能になる」とする。

その上で、「PB商品の強化だけでなく、メーカーへの提案もできる。これをやらないと業界は衰退してしまう」とも語る。

また、久保会長は、「家電小売業の使命は、お客様の声を、メーカーにフィードバックし、良いものを作る努力をすることであり、これをベースに役目を考えている。私たちが、提案したものが商品になっているものは多い」とし、その一例として、かつて三洋電機(現パナソニック)に、タンクを取り外して灯油を注ぐことができる石油ストーブを提案したエピソードを紹介。それまでは、石油ストーブ本体を持ち運んだり、灯油が入った重たいタンクを持ち運んだりする必要があったが、小さなタンクを取り外すだけで、簡単に灯油を継ぎ足せるようにしたという。

「お客様の声をもとに、メーカーにフィードバックする仕組みを生かしながら、PB商品の拡大に力を入れ、良いものを、より安く提供できるようにしたい。経営統合によって、両社がそれぞれに取り組んできたPB商品の研究開発が一層進むことになる」と述べた。

なぜPB開発が必要なのか EC対応と「家電メーカーの衰退」

両社が、PB商品の開発に力を注ぐ背景には、大きく3つの理由があると考えられる。

ひとつめは、国内家電メーカーの衰退だ。周知のように、国内メーカーの家電事業は、相次いで海外資本に売却されており、市場構造は大きく変化している。

山田会長は、「日本経済を支えてきた国内メーカーは、グローバル化による激しい競争のなか、事業ポートフォリオの改善を行なうなど、大きな変革の時代を迎えている。一方で、海外メーカーは、世界市場を対象とした巨額の投資と、量産体制を背景とした圧倒的なスケールを武器に、日本国内での存在感を急速に高め、家電業界に歴史的構造変化をもたらしている。国内家電メーカーのシェアが高い時代は、それを売っていれば済んだが、もはや、そういう時代ではなくなっている」と指摘する。

久保会長も、「国内家電メーカーは、高価格商品にシフトし、中価格帯以下の商品の品揃えは減少傾向にある。エディオンは、この領域の商品調達を行なうために、海外メーカーと直接取引を開始したが、様々な要因があり、発注数は増えている状況ではない。経営統合によって、スケールのメリットを生かし、こうした領域の品揃えを増やすことができる」と語る。

年間売上高2兆5,000億円というスケールを生かして、日本のニーズに合致するモノづくりの領域に、PB商品で踏み出すことができるというわけだ。

2つめは、インターネットへの接続が前提となり、AIを活用した利便性向上が求められる次世代スマート家電において、主導権を握るためにも、PB商品を持つことが強みになる点だ。

ネットを接続した相互連携サービスやアプリ連携、AIの活用においては、「メーカーの壁」を超えられない状態が発生しているのも事実である。実際、メーカーごとにアプリが林立し、使い勝手の悪さが課題となっている。そこをPB商品によって、トータル提案ができることは大きな差別化になる。

エディオンでは、「エディオンスマートアプリ」を通じて、メーカー各社のネット家電との連携も行なえるようにしているが、PB商品でまとめれば、より連携提案がしやすくなる。

たとえば、エディオンは、2025年11月以降、e angleシリーズにおいて、「エディオンスマートアプリ」対応のスマート家電の品揃えを強化する姿勢を見せている。これは、アプリの利用が、新たな技術に敏感な若い世代を中心に広がっているにも関わらず、ネット家電の多くが高価格帯に集中しているという課題を打破する狙いがある。そして、単身世帯や一人暮らしの若年層、高齢者など、大型モデルやフラッグシップモデルを必要としない世帯に対しても、スマート家電を提供することにもつながる。

PBからの付加価値提案 家電再編にも繋がるか?

このように、PB商品は、家電メーカーにはない顧客起点でのモノづくりを、迅速に実現する狙いがあり、これはスマート家電で大いに効果が発揮される部分だ。

さらに、今後のスマート家電は、住宅やEV、さらには街との連携が前提となる。これは、両社が目指す事業の方向性とも一致する。スマートホームの実現においては、スマート家電化したPB商品の提案は差別化になりやすい。

実は、2025年10月に開催されたデジタル総合展「CEATEC 2025」では、家電量販店として出店したのは、ヤマダグループとエディオンの2社だけであり、両社は、それぞれにスマートホームに関わる展示を行なっていた。この分野に対して、積極的な姿勢を見せていることがわかる。

久保会長は、「郊外においては、家電量販店の店舗が、お客様の暮らしの重要な拠点になる。家電、住まい、環境の統合提案の取り組みを行なうことで、店舗が持続的な社会の実現に向けたインフラ基盤の役割を果たす」とする。そこにもPB商品は重要な役割を果たす商材となるだろう。

PB商品の拡大は、住まい/リフォーム、環境にも事業を拡大している両社にとって、次の成長に向けた重要なアイテムになるというわけだ。

そして、3つめは、PB商品が、家電量販店同士の競合を超え、ECサイトや通販会社との戦いに対しても効果を発揮するという点だ。

久保会長は、「店頭で商品を試して、ネットで購入するというケースが増え、それに対応する仕組みを構築する必要がある」と危機感を募らせる。

量販店とECサイト、通信販売が、同じ商品を扱っていた場合、価格が安い販路で購入するというケースが多い。しかも、容易に価格を比較できるECサイトは、こうしたユーザーを取り込みやすい。

しかし、PB商品であれば、同一の商品を価格だけで比べて購入するということが減り、付加価値をもとにした提案ができ、利益率の高いビジネスにつなげることができる。

ただ、PB商品の取り組みは、それぞれの企業が共通的に行なっているものであり、差別化の方向性を模索しているところだ。

ヤマダHDおよびエディオンと同じ家電量販店のノジマは、先ごろ、日立の家電事業の買収を発表。それに先んじて買収したPCメーカーのVAIOにおいて、バッテリー保証サービスをノジマ店舗で先行実施するなど、PB商品化までは踏み出してはいないものの、グループとしてのメリットを生かそうとしている。白物家電の領域で、日立の家電事業の強みをどう生かすかが今後注目される。

また、通販大手のジャパネットホールディングスは、家電メーカーであるツインバードに株式公開買い付け(TOB)を実施する考えを示しており、これも同様の動きと捉えることができる。

そして、ECサイト最大手のAmazonでもPB商品の品揃えを強化している。Fire TVのような製品は最たるものだといえるだろう。

山田会長が指摘したように、「今回の経営統合は、目に見える効果としては、PB商品での連携が最大のものになる」とすれば、それこそが、次の業界再編のトリガーになるともいえる。

大河原 克行

35年以上に渡り、ITおよびエレクトロニクス産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。 現在、ウェブ媒体やビジネス誌などで活躍中。PC WatchやクラウドWatch(以上、インプレス)、ASCII.jp (角川アスキー総合研究所)、マイナビニュース(マイナビ)、ITmedia PC USERなどで連載記事を執筆。著書に、「イラストでわかる最新IT用語集 厳選50」(日経BP社)、「究め極めた省・小・精が未来を拓く エプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)など