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GMO、AIロボットが人間のように自然な展示案内 お台場の未来館
2025年8月26日 09:00
GMO インターネットグループでAIやロボットを手がけるGMO AI&ロボティクス商事(GMO AIR)は、東京・お台場にある日本科学未来館にて「GMO AIR・日本科学未来館 AI対話型ロボット実証実験」を行なう。期間は8月25日から31日。
実証実験では、AI対話型ロボットが展示エリア内を自律移動しながら、来館者に多言語での展示解説や案内を行なう。このロボットのアプリケーションの約80%は対話内容から動作プログラムにいたるまでAIが自動生成しており、開発プロセスの効率化も目指している。GMO AIRによればAIが生成したプログラムによる対話型ロボットの実証は、国内初の取り組みだという。
実証実験は11時〜13時と、15時〜17時の1日2回行なわれる。参加費用は入館料のみ。申込等は必要ない。
4カ国語に対応、曖昧な質問にも応答
実証実験の会場は日本科学未来館 5階にある、環境問題に関する常設展示「プラネタリー・クライシス-これからもこの地球でくらすために」。この展示の中をAIロボットが移動している。ロボットに声をかけると、展示の解説や質問に答える。ロボットは頭部に指向性マイクが設置されていて、主に正面の声にフォーカスするように設定されている。
大規模言語モデルの回答精度を上げるためにRAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)を用いており、タイムラグはあるものの、従来の定型文を読み上げていたような案内ロボットとは違い、かなり雑な聞き方をしても答えてくれる。
それだけではなく、ロボット自身の位置情報を活用することで「(特定のパネル近くに設置されている)この球はなに?」といった曖昧な質問にも、うまく答える。また、基本的には「プラネタリー・クライシス」エリアの質問に応えるよう設計されているが、「お腹が減った」というとレストランの場所を教えてくれたり、「ブラックホールについて教えて」といった担当エリア外の質問にも答えることができる。いっぽう、問題のある質問に対しては答えないようガードレールが設定されている。
言語は日本語・英語・中国語・韓国語の4カ国語に対応する。ユーザーが切り替える必要はなく、自動で対応する。ロボットのハードウェアはOrionStar Robotics社製の「GreetingBot Nova」。開発にはロボット開発で標準化しているミドルウェアの「ROS」が用いられている。もともとのアプリケーションはほぼ使わずGMOで開発したという。ただし、生成AIを活用することで「コードはほぼ書いていない」(GMOインターネットグループ 特命担当 技術分析官 新里祐教氏)とのこと。
全体の構想は人間が行なったものの、詳細なコード書きにはAIを活用し、人間はもっぱらチェックに徹することで高速開発を実現した。「8割のコードを自動生成した」としているが、その数字自体もAIにコードレビューをさせた結果であり、体感ではもっとAIが出力したコードを採用しているという。
AIとロボットによる新たなサービスを模索
GMO AI&ロボティクス商事 代表取締役社長の内田朋宏氏は「我々はAIとロボットの縁結び役になりたいと考えて昨年から活動を開始した。さまざまな商材やノウハウをロボットに組み合わせたいと考えて『商事』と名乗っている」と挨拶した。
そして「今回の取り組みは当初からやりたいと考えていたもの。AIをロボットにくっつけることでよりリアルに感じてもらえるようになったと思う。未来に対する想像力を膨らませてもらいたい」と述べた。
そして「今回はサービスロボットにAIをくっつけているが、ヒューマノイドにくっつけると身振り手振りも使える。人の案内作業を代替できる。労働力不足を補う一助となると考えている」と語った。実際にサービス提供するとなった場合は、おそらくサブスク形式となるだろうとのことだった。
生成AIを使って開発を高速化
実験の概要は今回の実証実験担当者であるGMO AIR 金明源氏が紹介した。ロボットは1日2回、インタラクティブなコミュニケーションを行ないながら案内をする。目的は二つ。一つ目はAIロボットを使ったコミュニケーションの実用可能性の検証。二つ目は実際にAIロボットにふれてもらい、新しい価値を見出してもらうこと。案内だけではなくコミュニケーションができるので「インタラクティブに会話しながら案内ができる点が特徴だ」と語った。
今後は車輪移動型だけではなくヒューマノイドへの適用や、他の施設での展開も視野に入れている。金氏は「商業施設や小売にも導入していきたいが、まずはユースケースやニーズを探索し、課題を精査したい。今後の実証実験でも詰めていきたい」と語った。
GMO AIR システム本部 DX推進開発部 部長の李奨培氏によれば、使用されている大規模言語モデルは、Microsoft Azure上でGPT4.1を使っているとのこと。ハルシネーションリスクについてはAzure上で設定されているガードレールに加えて、GMO側のガードレールも使っており、二重とすることで「極めて低いと思っている」と語った。また、RAGを構築するための情報の構造化には苦労があったという。








