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「住宅に100年に一度の変化」。トヨタとパナソニックが目指す“新しい街”

トヨタ自動車の白柳正義執行役員(左)、パナソニック 北野亮専務執行役員(右)

パナソニックとトヨタ自動車は、街づくり事業に関する合弁会社を、2020年1月7日に設立する。新会社の名称は「プライムライフテクノロジーズ」で、トヨタグループとパナソニックグループの住宅事業を統合する。

資本金は未定だが、トヨタ自動車とパナソニックが対等の持分とする。三井物産も出資する予定だという。社長には、パナソニックの北野亮専務執行役員が就任することになる。

新会社では、トヨタホーム、ミサワホーム、パナソニックホームズ、パナソニック建設エンジニアリング、松村組の5社の住宅事業を統合。これにより、戸建住宅供給戸数約17,000戸を誇る国内住宅業界でトップクラスの企業が誕生することになる。

両社では、パナソニックのくらしに対する知見やデジタルテクノロジーと、トヨタ自動車のモビリティに対する知見を活用しながら、より魅力ある街づくりの実現に取り組むとしている。

なお、今回の新会社設立に伴い、パナソニックの100%出資会社であるパナソニックホームズは、2019年度第4四半期から、パナソニックの連結子会社から外れ、ミサワホームは、トヨタホームの完全子会社となったのち、新会社がトヨタホームからミサワホームの株式を取得する。

新会社は、住宅、建設、街づくりの3つの事業を推進する。

住宅事業では、トヨタグループのトヨタホーム、ミサワホーム、パナソニックグループのパナソニックホームズという3つのハウスメーカーとしてのブランドを維持。それぞれの個性を継続させたビジネスを展開する一方で、調達、製造、物流、CS、施工、設計、営業支援といった領域では共通化を図り、戦闘力の強化により、業界トップクラスの競争力を実現するという。

また、建設事業においては、これまでに培ってきたノウハウを活用して、デジタルライスによる作業軽減による効率化、ロボティクスによる施工および検査の省人化や自動化によって、競争力の強化を図る。

そして、街づくり事業では、マネジメントサービスの高度化により、不動産価値の既成概念を超えた取り組みを開始することで、競争力の低い土地の高付加価値化を実現。さらに、将来は、海外にも街づくり事業を展開するという。

街づくりにおいては、他のデベロッパーとの連携も模索する考えであり、事業規模の拡大にあわせた提携拡大や、案件ごとに最適なパートナーとの連携を進めるなど、柔軟なエコシステムの構築にも乗り出す。

製造業日本代表トヨタとパナソニックが住宅事業を統合する理由

今回の動きは、2つの点で注目される。

ひとつは、製造業というカテゴリーに入る日本を代表する企業が、住宅事業を統合した点だ。

その背景には、家電や住宅設備などの急速な「IoT」化や、モビリティにおける「CASE」の進展、クルマや公共交通などの移動手段をITでつなぎサービスとして提供する「MaaS」といった動きが加速するなか、街づくり事業のそのものが変化してきた点が見逃せない。そのなかで、両社の取り組みが同じ方向を向き始めてきたといえる。

パナソニックの北野亮専務執行役員は、「トヨタとパナソニックは、同じ製造業であるが、違う経営スタイルを持っている」と前置きしながら、「だが、トヨタは新たなモビリティ社会を築き、パナソニックは、くらしアップデート業を目指す上で、家づくりや街づくりが、重要な要素になると考えている。経営の仕方が異なる企業だが、目指す立地は同じである」とコメント。トヨタ自動車の白柳正義執行役員は、「モノづくりの会社のなかに、住宅事業を持っている会社同士であり、同じ悩み、同じ方向性の事業戦略を持っている。今回の事業統合は、こうしたことを背景に、話し合いが進んだ」とする。

パナソニックは、街づくり事業において、神奈川県藤沢や綱島で、サスティナブルスマートタウンを展開。トヨタ自動車は、誰もが自由で、安心、快適なモビリティ社会を実現するために、クルマをコネクティッド化する「モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)」を構築。新たなモビリティサービスの創出に取り組んできた。

パナソニックの北野専務執行役員は、「新たなモビリティサービスカンパニーを目指すトヨタと、くらしアップデート業を目指すパナソニックのテクノロジーやノウハウを最大限に活用することで、他に類を見ない、街全体での新たな価値を創出できる」とし、「目指すべき街づくりはスマートライフタウンである。最先端の技術で、高度に最適化され、いつまでも安心、快適、便利なくらしを提供するとともに、日々、アップデートし、住む人に満足を提供し続けることができる街づくりを目指す」などと述べた。

また、トヨタ自動車の白柳執行役員は、「これからは人々のくらしを支えるすべてのモノやサービスが、情報でつながるコネクティッドシティの発想でビジネスを考えていくことになる。今回の新会社は、コネクテッドシティをパナソニックと共同で実現するためのものである」とした。

一方で、パナソニックの創業者である松下幸之助氏は、「家づくり、街づくりほど大事な仕事はない」として、パナソニックホームズを設立した経緯があり、トヨタ自動車の創業者である豊田喜一郎氏は、遺訓として、「日本の住まいをよくしたい」という言葉を残しており、これがトヨタグループにおける住宅事業の基本的な姿勢となっている。

製造業でありながら、住宅事業を展開している両社には、共通したDNAが流れているともいえる。こうした2人の創業者の考え方が、今回の新会社の設立の隠れた原動力になっているともいえそうだ。

鉄道軸ではなく、クルマの進化が土地の競争力を変える

もうひとつの注目点は、住宅の価値観を変える挑戦であるという点だ。

トヨタ自動車の白柳執行役員は、「自動運転と街づくりを連携することで、新たな価値を創出できる」とし、「自動運転などのテクノロジーの高度化により、人々の移動手段そのものにも大きな変化が訪れ、それによって、街そのものが変化しようとしている。これまでの住宅は、“駅や都市には近いが家が狭い”、あるいは“家は広いが駅から遠い”といったように、快適さと便利のどちらかを犠牲にしなくてはならなかった。だが、テクノロジーと高度化が、快適と便利の両立を可能にすることになる。通信の発達によって、オフィスに行く必要がなくなり、モビリティサービスの発達で移動が快適になる。さらに、近くに店がなくても買い物ができるようになる。このように住宅に、100年に一度の変革が訪れており、それによって、住宅の価値観を変えることができる」とする。

また、パナソニックの北野執行役員は、「これからの新たな街は、鉄道軸ではなく、クルマの進化に応じたものになり、これは世界中のどこの不動産会社にもないやり方である」とする。

トヨタ自動車は、2020年代前半に、特定地域において自動運転レベル4の実用化を視野に入れているほか、2020年代半ばまでに、移動、物流、物販などに利用できるモビリティサービス専用電気自動車「e-Palette」を活用したMaaS事業を開始する予定を明らかにしている。

こうした新たなテクノロジーやサービスを活用することで、これまでは、住宅用途には向かなかった「競争力の低い土地」に対して、高い付加価値を加える提案を可能にするという壮大な計画がベースにある。

新たな価値を持った街づくりには、テクノロジーや情報に支えられたサービスの充実が切り札になる。自動車メーカーと家電メーカーの組み合わせが、これまでの住宅メーカーにはできなかった街づくりの実現において、強力にタッグを組んで挑むことが、今回の提携の重要にポイントになりそうだ。