小寺信良のくらしDX

第39回

「長持ち家電」は時代遅れ? 大事に使うほど大変になる社会のルール

2019年に故郷である宮崎県に転居し、都合7年間、地方暮らしを経験した。その間に子供たちの中高生時代が終了し、全員が首都圏の大学へ進学するというタイミングで、また首都圏へ転居することにした。

宮崎への転居時は、以前一軒家に住んでいたときの荷物をほぼそのまま持ってきているので、かなりの量がある。そこで引越し荷物を減らすべく、ある程度年数の経ったAV機器や家電などは宮崎で処分することにした。売れるものは売り、売れないものは廃棄である。

宮崎の住まい

近隣にはハードオフ、オフハウス、セカンドストリート、ブックオフがあり、それぞれ適材適所で処分できる。

まずは量と重さの両方が問題になる、本と音楽CD、DVD、Blu-rayディスクがある。こうしたものを大量にブックオフに持ち込んだ。

本は文庫本が大半だが、すでに絶版になっているものも多い。だがそうした希少本は、ブックオフでは買い取られなかった。存在としては希少だが、紙として日焼けや劣化があるものは値段が付かないということのようだ。意外だが月刊誌などは買い取りしてくれる。これまでは1年ぐらい溜まったら定期的に資源ごみに出していたが、売れることがわかったので、今後はブックオフへ持ち込むことにする。

音楽ライブもののDVDもかなりあったが、ほとんど引き取られなかった。これも今となっては希少盤が多いが、買取データベースに載っていないのだろう。またDVD-AudioやスーパーオーディオCD(編注:いずれもCDの後継を期待された高音質光ディスク)も買い取りしてくれなかった。これは再生機がほぼ絶滅してしまっているという問題が大きいのだろう。まさに時代に見捨てられたメディアのなれの果てである。

AV機器、例えばイヤフォンやヘッドフォン、電子楽器などは、ハードオフへ持ち込んだ。これらは10年以上経過しても、ビンテージものとして買い取ってくれることがわかった。

イメージ(今回利用したブックオフ店舗ではありません)

一つ誤解があったのが、ポータブルバッテリーだ。別の店舗でポータブルバッテリーの中古が置いてあるのを見かけたので、てっきり買取されるだろうと持ち込んだのだが、査定して金額まで付いたものの、PSEマークがないとして断られた。

だがこれは店側の誤解である。家に戻って調べてみると、平成31年2月1日以降、電気用品安全法、いわゆるPSE法の適用範囲となったのはモバイルバッテリーである。

AC出力が出せるポータブルバッテリーはPSE法における「蓄電池」には該当しないため、PSEマークは原則付けられていない。

経済産業省の電気用品安全法FAQには、

蓄電池の出力は原理上直流に限られており、交流100Vを出力できるポータブル電源は蓄電池に該当しないため、モバイルバッテリーとして扱わず、PSE法の対象外

とある。ただ店舗単位で独自に法をもとに判断しているという点では、好感が持てる。そうした事情を説明すると、では買い取りますということになったが、また重たいバッテリーを持ち込むのが面倒になったので、売却をやめてそのまま使い続けることにした。

自転車の売却で「ジモティー」の闇を見る

処分しなければならない大物としては、子供たちが通学に使っていた自転車がある。3年程度しか使っていないが、住まいが海から近かったこともあり、結構サビがある。コストをかけて埼玉まで持っていっても使わないというので、地元で処分することにした。

自転車の処分はなかなか面倒である。購入した自転車店では、新しいのに買い替えるのなら引き取るという対応で、単に処分は代行してくれない。ただ防犯登録の抹消手続きは依頼できる。防犯登録は都道府県ごとに管轄及び取扱い方法が違うので、都道府県をまたぐと抹消が困難である。よって住んでいるところで抹消するのが原則だ。

廃棄に関しては自治体ごとにルールが違う。宮崎市の場合は処分場へ直接持ち込めば無料、回収を依頼する場合は1台500円の粗大ゴミ処理券をコンビニで購入して、指定日に出すという段取りになる。ただ引越し日が迫っていたため、指定日に出すことは困難、かと言って自分の車には自転車は2台も乗らないので、処分場への持ち込みも難しい。よって「ジモティー」で1台1,000円で売ってみることにした。

ジモティーとは、地元の人を対象とした、不用品譲り合い掲示板運営サービスだ。不用品を0円で出すとあっという間に引き取られるとして、ゴミ問題の解決手段として人気がある。

ジモティーで自転車を売ってみた

今回初めて売る側としてジモティーを利用してみたのだが、決済方法は現金払いかオンライン決済が選択できる。現金だとトラブルがあるかと思いオンライン決済にしたのだが、トラブルのリスクはオンラインのほうが大きいことがわかった。買い手側がいきなり決済して、取引成立に近い状態まで進められてしまうからだ。

これは、かなりトラブルになる設計だ。この方法ではこちら側は信頼できる相手かどうか、買い手を選べない。2台それぞれに決済があったが、1人の方は先に売買交渉している方がいらっしゃいますのでと説明したところ、では数日後にキャンセルしますねとご快諾いただいた。

一方もう1人の方は、お金払ったのに売らないってどういうことですかと詰め寄ってきた。「運営に通報します」と脅し文句が書き込まれたが、結局数日後には先方からキャンセルの連絡がきた。これはジモティーではよくあるトラブルのようで、こうした仕組み上のトラブルを避けるため、ほとんどの人は現金手渡しを選択するようだ。

1台目の自転車を購入したAさんは、「防犯登録抹消証明書」が欲しいと言う。「中古自転車の売買には、防犯登録抹消証明書が必要」と「AIが言った」のだそうだ。

だが少なくとも宮崎県の案内では、「防犯登録抹消証明書」という名称の書類は見当たらない。「抹消届出書の写し(コピー)」がその代わりになるだけである。警察に電話して確認したところ、中古の売買で「抹消証明書」という名称の書類は必要なく、再度防犯登録する際に登録店の方で盗難照会をかけるので問題ないということだった。

県警の担当者の内線と名前も聞いておいたので、もしまだ疑問があるのなら直接警察に聞いてみたらいかがですか、とメッセージに添えたら、ご納得いただけたようだ。

実際に軽トラックに乗って取りに来たのは、ニット帽をかぶった50代ぐらいの長身の男性だった。防犯登録抹消証明書の話をしたら初めて聞いたような顔をしていたので、どうもやり取りした本人ではないようだ。転売業者なのかもしれない。

2台目の自転車を取りに来たBさんは、ジモティーのスクリーンネームで声をかけたら反応がなかった。やはりこれもやり取りした本人ではなく、転売業者グループの1人ということだろう。だがスクリーンネームぐらいは知っておかないと、現場でのやり取りに困るはずだ。もしかしたら回収だけのアルバイトが存在するのかもしれない。

いらない人・いる人をマッチングするサービスとしてスタートしたジモティーだが、すでに買い手側では転売事業者が組織化されているようだ。

10年目の洗濯乾燥機で地獄を見る

最後に処分しなければならないのが、ちょうど10年前に購入した横ドラム型の洗濯乾燥機だ。この10年、フィルター掃除さえ怠らなければ問題なく動いていたのだが、最近は乾燥機の乾きが悪くなってきた。購入は2016年だが、2015年モデルなので、今年で11年目ということになる。

これはもう廃棄して、新しいのを買おうということになった。同じ場所で入れ替えるなら、購入先の量販店で古いものを引き取ってくれる。これまで何度もそれで新しい洗濯機と入れ替えてきた。

しかし今回は、廃棄するのは宮崎、購入するのは埼玉である。購入の量販店はどちらにもある大手チェーンなので、宮崎での引き取りをお願いしてみたが、違う場所の引き取りはできないという。まあ持ってきたついでに引き取っていくわけだから、場所が違うならできないのだろう。

これはさすがに売れないだろうと思い、今度は「くらしのマーケット」で処分してくれる事業者を募集してみることにした。何件か連絡をいただいたが、製造から10年以上経過していることを知ると、うちでは扱えないという返事ばかりだった。10年以上が経過すると転売もできないので、関わりたくないようである。

それなら自分で指定引取場所まで持ち込むしかない。洗濯機は家電リサイクル法の対象品目なので、郵便局で家電リサイクル券を受け取って料金を支払い、粗大ごみとは別の指定引取場所へ持ち込まなければならないのだ。

寸法を測ったら、車の後部座席を折りたたむと、洗濯機を横倒しにすれば入るようだ。ただ重さがかなりあり、自分1人では横にずらすことすらままならない。よって3階から1階まで運んでほしいという依頼を「くらしのマーケット」に投げたところ、どの事業者も4万円〜5万円という見積が出てきた。処分までしてくれるならともかく、運ぶだけで5万円はあり得ない。

家電製品の運搬は引越し業者がやってくれるという話を聞いたことがあったので、転居の引越しをお願いしている「引越しのサカイ」の営業さんに、引越しとは別の話として相談してみたところ、引越し当日に現場担当者に言ってくれれば無料で降ろします、と言ってくれた。地上まで降ろしてくれるなら、あとは自分の車に乗せて指定引取場所まで運べばいい。結果的には自家用車への積み込みまで、「サカイ」の皆さんがやってくれた。

指定引取場所までは、車で18分程度である。4トントラックやフォークリフトがウロウロする事業者敷地内に普通自動車が入ってきて、後ろを開けたら大型洗濯乾燥機が出てきたので、事業者の人も「これは……」と息を飲んだ。

人力では高さがある処理施設のフロアには上げられないので、車の後ろにフォークリフトを横付けしてもらって、その上に押し出す格好で車から降ろした。家電リサイクル券を受け取った指定引取場所の人も、こんな大物を普通自動車で持ってきた人は初めてと言っていた。まあ普通は軽トラなどで持ち込むものだろう。

こうした大型家電は、普通は自分で運ぶものではない。買ったときに事業者が設置し、古い方は引き取られていくというサイクルだ。だがただ単に捨てるとなると、途端に手段がなくなることがわかった。特に10年以上経過してしまうと転売もままならないので、いわゆる不用品回収事業者にも断られる。回収とはいってもその実は、転売事業者だからだ。

大型家電を頻繁に買い替えるというご家庭は、それほど多くないだろう。故障しなければ、10年以上使うというケースも珍しくない。中東有事の影響でエネルギーだけでなく、物価上昇も待ったなしの昨今、大型の高額家電はますます買い替えづらくなってきている。同じ場所での買い替えなら家電量販店がどうにかしてくれる体制ができているが、引越しを機に単に捨てるだけとなると、途端に難易度が上がる。

国はリサイクルしろと言うが、小売店の引き取りに乗せられない場合は、どんなにデカかろうが重かろうが自分で持ち込むことが原則になり、運搬を手伝ってくれる事業者の整備は十分ではないのが現実だ。

よって将来の廃棄を考えると、回収業者が扱いやすい10年以内に手放すのは、一つのテクニックと言える。特にマンション住まいのように、外に出すだけでかなり距離があるような場合が深刻である。

今使っている家電の中で自分では運べなさそうなものは、これを機会に年式をチェックしてみてはいかがだろうか。

日本電機工業会の長期使用の家電製品のWebサイト。こちらは事故を防ぐための取り組みなどを紹介しています
小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。