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左右分離キー配置で手首がラクなキーボード ロジクール「ERGO K860」

ロジクールの「ERGO K860」

PCを使う時間が長いと、キーボードの造りがどうしても気になってきます。小型のキーボードなら取り回しは便利ですが、1個1個のキー配置が窮屈になりがちで、姿勢などにも影響してきます。ノートPCであっても、大きめの外付けキーボードを接続している方は少なからずいらっしゃるでしょう。

今回ご紹介するのは、PC周辺機器メーカー大手のロジクールが2021年8月に発売した無線式キーボード「ERGO K860」。より自然な姿勢で使えるよう、キー配置が左右に分離しているのが特徴です。

ロジクールから左右分離キー配置のキーボード!

最初に説明しておきますが、K860はメーカー直販価格16,980円、大手通販サイトでも実売価格がおおむね16,000円という、少々お高めのキーボードです。とはいえキーボードは人とPCを媒介する上で非常に重要な製品。一度買えば3~5年はヘタりなく使えるはずですし、在宅勤務などでPCを使う時間が増えている方なら、購入を検討する余地は十分あると思います。

さてK860最大の特徴は、冒頭にも書きましたがそのキー配置です。QWERTY配列におけるTとY、GとH、BとNの間にガッツリと空間があります。それでいて1つ1つのキーの大きさはごく標準的。ですのでキーボード利用姿勢をとった場合、ESCキーはより左側に、Enterキーはより右側にオフセットすることになります。

GキーとHキーの間にこれだけの空間があります

しかしこのおかげで、Fキーに左人差し指、Jキーに右人差し指を置く「ホームポジション」状態の時、手首をあまり曲げることなく自然な姿勢をとれます。一般的なキーボードでホームポジションを取ると、左右の親指の付け根部分が触れるくらいになりますから、どれだけラクな姿勢か、ご想像いただけるでしょう。

ホームポジションに指を置いたところ。手首が曲がっていない点にご注目を

キー配置を左右分割した「エルゴノミクス(人間工学)」キーボードは、従来ならマイクロソフトの十八番だったのですが、最近はとんと新製品を出してくれません。これまで筆者が愛用していた「Sculpt Ergonomic Keyboard」はなんと2013年発売の製品。丸8年が経過したので、流石に買い替えたいなと思っていたところ、まさかまさか競合のロジクールが、ブランドとしては初となるエルゴノミクスキーボードを市場投入するとは……。

新旧の機種を比較。「Sculpt Ergonomic Keyboard」(下)は8年近く使い込んだものなので、リストレスト部分がかなり痛んでいるのはご容赦を

K860はキーの配置こそ独特ですが、文字配列などはごく標準的です。QWERTY配列、ひらがな刻印あり、そしてカーソルキーはノートPCのそれと比べて大きめです。HomeやEndキーも独立していて、Fnキーとの合わせ入力は不要。Print Screenのキーがちょっと大きめなのは、スマホなどでスクリーンショット撮影が多用されるようになった時代背景もあるかもしれません。

またK860はWindowsとMac両対応で、Chrome OSやLinuxでも使えます。マルチプラットフォーム製品ということもあってか、Windowsキー(MacにおけるOptionキー)に相当するキーには「スタート」と刻印されるのみで、Windowsロゴは入っていません。

特殊なキーなども、省略されたり小型化されることなくキッチリ搭載されています

利用感は上々、BluetoothでもUSBドングルでもイケる

肝心の利用感・キー入力の感覚については、ほぼ不満はありません。そもそもキー1つ1つがしっかりとした大きさですし、どこかのキーに指が届きづらい……なんてこともなし。ちなみにキー配列全体の中で一番左下にあるのは左Ctrlキーです(ノートPCのブランドによってはFnキーの場合もある)。

加えて、K860には手のひら・手首を置くためのリストレストがあります。表面はニット生地ですが、コーティングされているおかげで実際の触り心地はゴムに近い感じ。また中身はウレタンフォームなので、ゴツゴツ感はありません。奥行きもたっぷり。これがあるとないとではかなり勝手が違ってくるでしょう。

リストレストも、K860を語る上では外せません
リストレストの真裏部分には、角度調整用のスタンドを内蔵。別体品を使うことなく。合計3段階から角度を選べます

PCとの無線接続についてもかなり柔軟です。まずロジクール製マウス・キーボードで採用されている「Unifying」方式に対応しているので、付属のUSBドングルを使うのが最も簡単。そしてBluetoothでも接続できます。これらの接続方法を合計3つまで登録しておき、K860にある専用の切換キーで瞬間的に変更することができます。普段はPCとUnifyingで接続、たまにタブレットとBluetoothで接続、なんてことも可能です。

動作用の電源は単4電池2本。一応、本体裏面には電源スイッチ(スライド式)がありますが、持ち運びのタイミングなどを除けば、わざわざオフにしなくても大丈夫でしょう。少なくとも筆者が3カ月利用した限りは、一度も電池交換していません。

こちらが「Unifying」接続用のUSBドングル
裏面の電池蓋を開けると、Unifyingレシーバー収納用のスペースがあります
Insキーの上にある3つのキーを押すと、無線接続先が瞬時に切り替えられます。写真は「1」を選択し、白色LEDが点灯している状態

一度使えば快適さは分かるはず! 設置スペースに注意

高級キーボードというと、ボタン1個1個の押し心地(どんなスイッチを採用しているか等)にまず目がいくかもしれません。しかし、仕事や学業での使用を重視するなら、K860のようなエルゴノミクス製品を選ぶことが、快適さにより直結すると思います。

ただ、キーボードの善し悪しは個人の好みによっても変わります。仕事場で一般的なキー配置のキーボードを長時間使っている方だと、K860のようなキーボードを自宅で使っても、違いがありすぎて戸惑ったりするかもしれません。ただ筆者は、出先では一般的なノートPCのキーボードも使っています。個人的には、併用は十分可能だと思いますし、一度使ってさえ見れば、エルゴノミクスキーボードの快適さは感じていただける……はず。

一方、大きすぎて机に置くスペースがない、なんて心配はありそうです。K860は幅456mm、奥行き48mm、重量は1,160gあります。ノートPCと組み合わせようとすると、奥行きがちょっと足りないとか、未使用時にしまったり立て掛けたりするスペースを考慮しないといけないかもしれません。

「Logicool Options」アプリをPCにインストールすれば、各種カスタマイズもできます

そんなこんなでK860が「全てのPC利用者」にオススメの製品かと問われれば、ちょっと難しいかもしれません。とはいえ、ツボにはまる方は少なからずいるはず。是非、PC周りの環境を整備する際、比較候補に加えてみてはいかがでしょうか?

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのウェブニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。おもな取材分野は携帯電話、動画配信、デジタルマーケティング。「INTERNET Watch」「ケータイ Watch」「AV Watch」「Web担当者Forum」などで取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2021」(インプレス総合研究所)、「BtoB-EC市場の現状と販売チャネルEC化の手引2020」(共著、インプレス総合研究所)。