ミニレビュー
耳をふさがないのに雑音が静かに 「Shokz OpenFit Pro」で試す新感覚オープンイヤー
2026年6月6日 09:30
骨伝導イヤフォンやオープンイヤー型イヤフォンを展開するShokzから、フラッグシップモデル「Shokz OpenFit Pro」が発売されました。耳をふさがない開放感と、これまでにない音質や新機能を両立させたという本機。今回はShokzから実機提供を受けたので、日常使いから音楽鑑賞まで、じっくりと使い込んで見えてきたリアルな使用感をお届けします。価格は39,880円です。
メガネとも干渉しにくいスリム設計
Shokz OpenFit Proの本体重量は片耳で12.4g。数値だけで見ると、一般的なオープンイヤー型イヤフォン(特に耳の後ろから引っ掛けるイヤーフック型)の中では軽くないですが、イヤフォン自体がコンパクトに設計されていることもあり、装着時のバランスが絶妙です。耳に掛けるフック部分が細く、メガネのテンプルと干渉しにくいのは、メガネユーザーにとって大きなメリットでしょう。
長時間着けっぱなしにしていても耳が疲れにくく、オープンイヤーならではの開放感を味わえます。さらに、この手のタイプとしては珍しく「装着検知機能」を搭載。耳から外すと自動で再生が止まる仕様は、日常使いにおいて地味ながら非常にありがたいポイントです。
また、操作部がタッチセンサーではなく「物理ボタン」である点も好印象。耳の付け根にある赤印のボタンを押してコントロールします。イヤフォンの位置を微調整する際などに意図せず触れてしまう誤動作のストレスがありません。
バッテリー持ちも優秀で、イヤフォン単体で連続12時間、ケース併用で最大50時間の再生が可能。10分間の充電で最大4時間再生できる急速充電や、Qiワイヤレス充電にも対応します。
音質面は満足。低音に厚み
Shokz OpenFit Proは、音質面でもしっかりとした満足感があります。新搭載された低音増強技術「Shokz SuperBoost」と超大型のデュアル・ダイアフラム設計により、オープンイヤー型でありながら低音域にも厚みを感じられる仕上がりです。シティポップを聴いてみると、ベースラインのグルーブ感がしっかりと腰の据わった音で響きます。
それでいて低音ばかりが主張するわけではなく、高音域とのバランスも良好。非常に繊細な表現力を持っており、立体感と臨場感のあるサウンドを楽しめます。
Dolby Atmosとヘッドトラッキングにも対応しています。ヘッドトラッキングをONにすると自動的にDolby Atmosも有効になり、音源を選ぶことなく360度音に囲まれる感覚へと変化します。同様に音源を選ばずに360度ヘッドトラッキングに対応しているカナル型の「Bose QuietComfort Ultra Earbuds」などと比較すると、音場は近く、ボーカルがすぐそばで歌っているような距離感です。ライブ音源を再生すると、まさにライブ会場のど真ん中に立って音に包み込まれているかのような錯覚があります。
なお、専用アプリのイコライザーはプリセット5種+カスタマイズの計6通りから選択可能。個人的には低音強めが好みなのですが、プリセットの「低音強め」を選ぶとブーストされる代わりに輪郭が少しぼやける印象を受けました。むしろ「スタンダード」や「高音強め」に設定したほうが、低音の輪郭がクッキリと引き締まり、心地よく聴くことができました。
オープンイヤーなのにノイズがかき消される新感覚
Shokz OpenFit Proの目玉機能とも言えるのが、新しいリスニング体験を提供する「フォーカスモード」です。
これをONにすると周囲の雑音がすっと抑えられ、耳をふさいでないはずなのに、まるでインナーイヤー型イヤフォンで耳をふさいでいるかのような不思議な感覚に陥ります。AirPodsなどのアクティブノイズキャンセリング(ANC)とは異なりますが、「オープンイヤーの開放感」と「インナーイヤーの没入感」が融合した体験は非常に新鮮です。
カットされるのは主に低音域の環境ノイズ。カフェなどで試すと、食器がカチャカチャとぶつかるような高音域の音は耳に届きやすいですが、人の話し声は完全ではないにせよ意外と耳に届きづらくなり、音楽を流さず無音で使っていてもある程度集中して作業できます。また、実際に音楽を流してしまえばそれらの周囲の音も音楽にかき消されて目立たなくなるため、作業への集中力を高めるのに十分な効果を発揮してくれます。
気になる音漏れは?
音漏れを防ぐ技術として「DirectPitch 3.0」が搭載されていますが、構造がオープンイヤーである以上、音漏れを完全にゼロにすることはできません。
実際にどのくらい音が漏れているのか、電車の隣の席を想定し、耳から30cm離した位置にShokz OpenFit Proを置いて検証してみました。まず、非常に静かな環境で音量を30%程度にすると、かすかにドラムなどのリズム音が漏れ聞こえます。さらに音量を50%程度まで上げると、ボーカルの歌詞までハッキリと聞き取れるレベルになりました。
電車内であれば、走行音やエアコンなどの環境音があるため多少はかき消されますが、混雑した車内など、他人と密着する空間での利用はあまりおすすめできません。
ちなみに、周囲の音を遮断する「フォーカスモード」と、周囲の音を取り込む「オープンモード」を切り替えても、周囲への音漏れの音量自体は体感としてあまり変わりませんでした。そのため、モードの切り替えは「周囲への音漏れ対策」としてではなく、あくまで「自分が周囲の音をどのくらい聴きたいか(あるいは音楽に集中したいか)」という基準で選択するのが正解です。
騒音下でのマイク性能と、通話をアシストするフォーカスモード
数日間じっくりと使い込んでいく中で、前述の音漏れに加えてもう一つ検証したのが「騒音環境におけるマイクのノイズカット性能」です。
雑音が多い環境でマイクの録音テストを行なったところ、カフェ店内での話し声や食器がぶつかる音といった中高音域のノイズを完全に消し去ることは難しく、電話やオンライン会議で使用する際、相手側にはある程度「いま騒がしい場所にいるな」と伝わるレベルで環境音が残ります。
一方で、線路沿いの道路や交通量の多い場所で聞こえるような低音域のノイズに関しては、ある程度しっかりとカットしてくれる印象。さすがに爆音すぎる環境は厳しいものの、日常的な騒音下であれば十分に実用可能なレベルに仕上がっています。
また、マイクを使用している最中であっても、こちら側のリスニング設定(オープンモード/フォーカスモード)はそのまま機能します。そのため、ガヤガヤとした騒がしい環境で通話をする場合でも、こちら側を「フォーカスモード」に設定しておけば周囲の環境音がスッと抑えられ、相手の話にしっかり集中して耳を傾けることが可能です。
Shokz OpenFit Proは、「耳をふさがない手軽さ」というオープンイヤーの利点を活かしながら、これまでの常識を覆すほどの音響クオリティと没入感を実現しています。
特に、しっかりと響く深みのある重低音や、ヘッドトラッキングによる臨場感は、オープンイヤー型とは思えないほどの完成度だと感じました。さらに、耳を開放したまま雑音を抑え込む「フォーカスモード」が新鮮で、従来のイヤフォンでは味わえなかった新しいリスニング体験だといえます。
混雑した車内での音漏れや、騒がしい場所での中高音域のノイズカットなど、オープンイヤー特有の性質によるトレードオフはいくつか存在します。しかし、自宅でのリモートワークやリラックスタイム、あるいは周囲の安全に気を配りつつ音楽に没頭したいワークアウト時などには、強力な選択肢のひとつだと思います。









