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「エージェントのインターネット」実現へ AAIFが描くAIの未来

Linux Foundation傘下のAgentic AI Foundation(AAIF)は、AIエージェントにおけるオープンスタンダードの取り組みや、「Model Context Protocol(MCP)」をはじめとする基盤技術の現状、日本での活動方針について説明した。

AAIFは、Anthropicが開発したMCP、BlockのAIエージェント「goose」、OpenAIの「AGENTS.md」を創設プロジェクトとして、2025年12月に設立された団体。AWS、Anthropic、Block、Bloomberg、Cloudflare、Google、Microsoft、OpenAIがプラチナメンバーとして参加する。

現在の参加組織は247に拡大しており、競合するAI企業のほか、クラウド、金融、セキュリティ、通信など幅広い業種の企業が加わっている。

同団体は、特定企業が所有する規格ではなく、異なるAIエージェントやツール、データ、サービスを安全かつシームレスに相互接続できるオープンな仕組みをLinux Foundationの中立的なガバナンスのもとで構築することを目指す。

Webのような共通仕様をAIにも

AAIFは、AIエージェントが外部ツールや他のエージェントと連携して動作する環境では、共通の接続仕様が重要になるとする。

AIエージェントは、外部APIの呼び出しやWeb検索、コード実行に加え、航空券の予約、メール送信、送金など、実際の操作を伴う可能性がある。また、単一のAIで処理を完結させず、別のエージェントに作業や権限を委譲しながら動くマルチエージェントシステムも想定される。

こうした環境では、AIモデルそのものの性能だけでなく、AIとツール、AIとAIをどのようにつなぎ、安全に制御するかが課題となる。

AAIFはこの状況を、1990年代以降に広がったWebになぞらえる。WebではTCP/IPやHTTP、HTMLなど、特定企業に所有されない共通仕様によって異なるシステムが接続された。同団体では、MCPや「Agent2Agent(A2A)」などのオープンプロトコルを、AIエージェント時代の共通仕様と位置づける。

たとえば、複数のAIエージェントがIDE、データベース、API、CI/CD、決済サービスなどへそれぞれ独自方式で接続すると、エージェントとサービスの組み合わせごとに個別の実装が必要になる。AAIFは、共通プロトコルによって接続方式を各レイヤーで標準化し、安全に拡張できる環境構築を目指す。

AAIF CTOのマニック・スルタニ(Manik Surtani)氏は、AIシステムがベンダーの境界を越えて連携する「Internet of Agents」が次の波になると説明。その実現には、オープンソースやオープンスタンダードが必要だとした。

MCPが支えるAIと外部データの接続

AAIFの中核プロジェクトの1つが、AIアプリと外部データソースを接続するためのModel Context Protocol(MCP)だ。MCPは、Anthropicが24年11月に公開した標準プロトコルで、その後、ChatGPTやMicrosoft Copilot、Geminiなどにも採用された。

MCPは、AAIF設立にあわせてLinux Foundation傘下へ移管され、特定企業ではなくオープンなガバナンスのもとで開発されている。

AAIFによると、26年7月時点でTier 1のMCP SDKの月間ダウンロード数は約5億に達しており、MCPサーバーも2万2,000を超えた。MCPは当初、AIがローカル環境のツールやデータを利用するための仕組みとして広がったが、現在は企業の本番環境での利用を見据えた機能強化が進んでいる。

7月28日に公開された「MCP 2026-07-28」では、プロトコルレベルのセッションと初期化ハンドシェイクを廃止。サーバーが状態を保持しない構造に変更し、水平スケールしやすくした。

一方で、MCPを使ったAIエージェントの利用が本番環境へ広がるには、接続方式の標準化だけでは不十分となる。同団体は、複数エージェント間の信頼境界や、承認プロセス、監査ログ、AIが出力した成果物の品質保証なども課題になるとしている。

AIエージェント同士をつなぐA2A

AAIFが注力するAgent2Agent(A2A)は、異なる企業やフレームワークで構築されたAIエージェント同士が、安全な環境で自律的にタスクを委譲し合い、実行結果を受け渡すためのオープンプロトコルだ。MCPが主にAIエージェントと外部ツール・データ間の接続を担うのに対し、A2Aは独立したエージェント同士の連携を担う。

AAIFは、1つのプロトコルですべてを処理するのではなく、役割の異なる標準を組み合わせる「オープンなエージェントエコシステム」を想定。MCPやA2Aのほか、gooseやAGENTS.md、「agentgateway」などのエージェントプラットフォームを重点領域に位置づける。

同団体は、AIモデルそのものを開発するのではなく、AIエージェントを開発・運用し、データやツールと接続しながら、本番運用に必要なガバナンスの維持、可観測性の確保、信頼性と安全性を確保する領域を主な対象としている。

AAIFは、中核プロジェクトの1つとして「Agent Router」を新たに追加した。同プラットフォームは、AIサービスをアプリケーションに統合する開発者向けにAPIインターフェースを提供し、組織の規模を問わずAIインフラを利用しやすくする。

今後の課題はIDと権限管理

AIエージェント同士が連携して動作するようになると、新たな課題も生まれる。特に重要になるのが、AIエージェント自身のIDと権限管理だ。

現在のMCPの認可は、人間がブラウザ上でアクセスを承認する使い方を基本としている。一方、今後は自律動作するAIエージェントが、人間がその場にいない状態でユーザーの代理として動いたり、さらに別のエージェントへ一部の権限を委譲したりするケースが想定される。

MCPでは今後、既存のアイデンティティ標準を利用しながら、AIエージェント自身のIDや権限委譲を標準的に扱う方法を検討する。従来のAIサービスでは、正しい回答を出せるかが論点だったが、AIエージェントでは、誰の権限で何を実行してよいのかも重要になる。

AI技術が共通化すれば、データが競争力に

AAIFは、AIの技術スタックやモデル、エージェント関連技術がオープンソースや標準プロトコルによって共通化すれば、企業の競争優位性は独自に保有するデータへ移っていくと見解を示した。

その際に重要になるのは、単に大量のデータを持つことではなく、データの質や利用環境を整え、AIエージェントを通じて複数のシステムを接続しながら、自社のデータからどれだけ価値を引き出せるかだという。

同団体は日本について、米国企業と比較するとAIインフラへの投資規模では差がある一方、製造業などを中心に、現場で蓄積された質の高いデータを持つ点を強みとして挙げる。

用途に応じた小型モデルなどを組み合わせ、こうしたデータを活用できれば、日本企業がグローバル市場で強みを発揮できる可能性があるとした。