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AIレコーダーのHiDock、日本本格参入 「文字起こしは無料であるべき」

HiDock P1(左と中央)、HiDock P1 mini(右)

香港発のオーディオハードウェア企業のHiDockは、日本市場への本格参入を発表した。11月6日から録音・文字起こし対応の専用デバイス「HiDock P1」および「HiDock P1 mini」を販売しており、価格はP1が26,800円、P1 miniが21,800円。公式通販サイトや、AmazonなどのEC系で販売している。

そのほか据え置き型でドック機能も備えたHiDock H1/H1Eシリーズも公式サイトにて39,800円~で販売している。

HiDockは、コロナ禍で顕在化した「長時間会議」「多言語環境」「議事録作成の負担」といった課題に対し、エンタープライズ偏重ではない“個人のための録音ツール”として創業された。ブランド名「Hi」は“コミュニケーションのはじまり”を意味し、日常的な情報の記録や共有を支援するプロダクトとして展開されている。

HiDock 共同創業者 兼 CEO Sean Song氏

同社が日本市場に参入・注力する理由に、日本特有のニーズがあるとしている。具体的には日本企業に根付く「記録を残す文化」、対面録音が中心でオンライン会議に対応できる録音ツールが少ないこと、日本ユーザーによる支持が大きいことを挙げた。同社では日本市場を米国、欧州に次ぐ3番目の市場規模として重要度が高いとしている。

発売したP1シリーズは、点や線、幾何形状の最小構成要素でデザインされた「Geometric Functionalism(幾何学的機能主義)」に基づく設計。P1は直感的な操作性とコンパクトさを両立し、赤いボタンはノイズキャンセリング、青はBlueCatch(Bluetooth連携機能)、四角は録音ボタンと、機能ごとに色分けされている。小型モデルのP1 miniは約12gと軽量ながら、最大2年分の録音データ保存に対応。競合製品と比べ、音声転送速度を最大50倍高速化しているという。

録音内容は専用アプリ「HiNotes」と連携し、リアルタイムでの文字起こしや要約に対応する。HiDockは、学生やフリーランス、ビジネス利用など幅広いシーンで求められる「記録の負担軽減」に着目し、コストを気にする層でも気兼ねなく利用できるよう、文字起こし機能を基本無料で提供する。「文字起こしは無料であるべき」との方針のもと、要約を含めた機能も月の制限なく利用できる。

また、業界用語への対応や日本語精度の継続改善も進行中。発話者識別やライブ翻訳などの上位機能は、有料プランとして別途提供される。

P1シリーズのみで利用できるライブ翻訳は有料プラン限定の機能。対面会話のほか、YouTubeなどで公開されている英語の基調講演などをリアルタイムで翻訳できる。同機能はクラウドを経由して翻訳~録音~要約をまとめて行なう。

ライブ翻訳機能(有料プラン限定)。タイムラグなく翻訳できた

P1シリーズ最大の特徴である「BlueCatch(ブルーキャッチ)」技術は、手持ちのBluetoothイヤフォンとスマートフォンやPCの間に本体をブリッジさせることで、通常の録音機では難しいスマホ通話やZoom 会議音声の録音を可能にする技術。これにより、オンライン・オフラインの両方の録音を1台でカバーできる。

P1はPC/タブレット/スマホなど幅広い機器に対応した汎用モデル。対面ミーティング、Web会議、通話、ボイスメモなどあらゆる録音シーンに使える。一方、P1 miniは、USB-C接続のスマートフォン/タブレット向けに設計された小型モデルで、通話やTeams/Zoom/YouTube動画などスマホで利用する音声を手軽に録音できるが、PCと接続しての録音には対応しない。

HiDock P1。スターホワイトとスペースグレー
HiDock P1 mini。スペースグレーのみ

セキュリティ面ではMicrosoft Azure上で運用し、OpenAI、Anthropic、Google AIの法人向けAPIを組み合わせることで、クラウド処理の信頼性と堅牢性を担保する。録音から記録、共有までの一連のワークフローをカバーする構成。無料版の文字起こしであっても学習を目的とした情報収集をしない。

日本市場責任者 Steve Pan氏

HiDock製品はこれまで、Makuakeで先行販売していたが、11月からAmazonといった大手ECサイトでの展開を開始。

国内での販売とサポートは、正規代理店のEZLIFE(イージーライフ)が担当。マニュアルのローカライズやFAQの整備、カスタマーサポートの多言語対応に加え、家電量販店や法人向け営業、教育機関への導入、イベント出展などを通じて認知拡大を図る。量販店での販売は交渉を進めており、2026年初頭の展開を目指すとしている。

今後は、新機能追加、発話者識別や翻訳機能の精度向上、多言語混在会議への対応(26年末目標)などを進め、日本市場における展開を本格化させる方針。

左から、CMO Linna Peng氏、HiDock 共同創業者 兼 CEO Sean Song氏、日本市場責任者 Steve Pan氏