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ゴールドウイン、衣服内の空気量で保温性を変える技術

ゴールドウインは、衣服内に空気を取り込み、その空気量を調整することで保温性を大きく可変できるテクノロジーを開発した。

研究開発施設「ゴールドウイン テック・ラボ」が開発した、特許出願中のテクノロジー。衣服内部に空気層を重ねる構造を有することで、これまで叶わなかった保温性の可変幅が大きい衣服を実現した。

今回開発した調整機能は、1日の中で寒暖差が大きくなる登山やトレイルランニングといったアクティビティにおいて、さまざまなシーンに対応可能な保温力を提供。また、気温変化の激しい都市生活でも有効で、スポーツから日常まで幅広いシーンにおいて頻繁な着替えを不要とし、さまざまな気候や状況に柔軟に対応できるとしている。

開発のヒントとなったのは、住宅に使用される断熱性の高い「三重窓」。三重窓は3枚のガラスで空気層を重ねることによって断熱性を高めているが、同じように衣服でも空気層を重ねることで保温性が高くなり、保温性の可変幅を拡大できるのではないかとの考えからスタートした。

ただし空気層は、一定の厚みまでは保温性が向上するが、それ以上の厚みでは空気が対流してしまい保温性が向上しない。そのため、衣服において効果的な厚みを特定するために研究を重ねた。

積層ありとなしのそれぞれの構造における保温性を比較し、積層を重ねれば重ねるほど保温性が向上するという研究結果を導き出し、これを衣服で具現化するため、約2年間何度も試作を繰り返した。その結果、幾何学的に間隔を空けた接着パターンによって、一定の厚みの空気層を何層も重ねられる構造にたどり着いた。

積層構造による保温性の研究
今回開発した、空気層を重ねた積層構造

このテクノロジーを搭載することで、薄手のジャケットから厚手のダウンジャケットまで保温性が大きく異なる複数の衣服を、1着で代用可能となる。

気候変動により激しい寒暖差に対応できる製品が求められる中、保温性を変えられるテクノロジーを活用した環境に順応できる製品の提案を進める。また、衣服内に羽毛や化繊などの中わた素材を使用しないため、衣服の製造工程における材料の削減など環境負荷軽減にも寄与するとしている。

気温の寒暖差が激しく過酷な状況にある長距離トレイルランニングの装備品を変える可能性があることから、プロトタイプの開発に着手。1着の製品の中で保温性の可変を必要とする部位として、前側はより保温性の可変幅を広げる積層3層構造、後側やそで上面は積層2層構造、動きやすさを重視する部位として脇パネルやそで下部は1枚仕様とした。

外気温や着用者の体温状態によって衣服の保温性を調整できる同製品は、アウトドアアクティビティの装備品を変えうるとしている。

ゴールドウインはプロトタイプを、フランスの東南部にあるシャモニーで毎年8月末に開催されるトレイルランニング大会のブース「ウルトラトレイル ビレッジ」にて展示する。